青森
青森観光
自然景勝地を多く有する、日本一のりんご生産地

死者への想いを預けに行く・霊場恐山と宿坊吉祥閣

取材・写真・文:

東京在住
訪問エリア:43都道府県

2019年6月6日更新

4,187view

お気に入り

写真:熊猫

「人は死ねばお山さ行ぐ」と言い伝えられる青森県下北郡にある恐山。社会がいかに発展しようとも、恐山に足を運ぶ人は決して少なくありません。何故、人は恐山を目指すのか。恐山と宿坊吉祥閣をご紹介します。

この記事の目次表示

霊場恐山とは

  • 写真:熊猫恐山菩提寺の遠景。

青森県下北半島にある霊場恐山の歴史は古く、9世紀頃に天台宗の慈覚大師円仁が開基したといわれています。恐山はカルデラ湖の宇曽利山湖を中心に火山性ガスがあちこちから噴出するとともに、奇岩が立ち並ぶなど、死後の世界に擬して、地元の信仰を集めるようになりました。「人は死ねばお山さ行ぐ」と言い伝えられ、死者供養の場とされてきた恐山は、今では全国に知れ渡っています。開山期間は、毎年5月1日から10月31日までの半年間。この間に約20万人の人がこの恐山を訪れます。

何故、人は恐山に向かうのか

  • 写真:熊猫荒涼とした恐山の風景。

恐山について、多くの人が持っている印象は、「幽霊が出る」、「荒涼とした死後の世界」という、文字通り恐ろしい山というイメージが圧倒的に多いのではないでしょうか。あるいは、近年注目を集めるパワースポットとしても、恐山は有名になりつつあります。いずれにしても人知を超えた「あなたの知らない世界」的なイメージを多くの人が、恐山に対して持っているのではないかと思われます。しかし、何故そのような地に年間20万人もの人が集まるのでしょうか。

恐山院代、南直哉師の言葉

  • 写真:熊猫恐山菩提寺の山門。

恐山の菩提寺は仏教の曹洞宗に属する禅寺です。その菩提寺の院代(住職代理)を務められているのが、南直哉師です。多くの著書を上梓し、語る禅僧としても知られています。恐らく、恐山という場所が持つ意味を最もよく理解されているお一人と言っても過言ではないでしょう。

南師は、ご自身の著書『恐山ー死者のいる場所(新潮新書)』の中で、恐山を死者との想い出・関係性を「預かってもらう場所」であると以下のように表現しています。

大事に育てた一人息子が不幸な事故で亡くなったとしましょう。それでも、父親は父親なのです。(中略)それは息子が死んでも変わりません。(中略)私たちの想い出す、懐かしむ行為によって、死者は現前し続けます。不在のまま、我々に意味を与え続ける。だけど、生者はその意味を(中略)抱えきれない。(中略)相手が生きていれば、その関係性や意味を互いに持ちあうことができます。(中略)生者は、死者という『不在の関係性』を持ちきれません。その代わり、死者にその『不在の意味』を担保してもらうほかないのです。(中略)そのための場所が、ここ霊場・恐山なのです。

思い出すことが最高の供養

逝ってしまった人との関係性は、人それぞれあることでしょう。それは必ずしもかけがえのない関係であった人ばかりではありません。近しい関係だけに複雑な思いを抱き続ける関係性もあるはずです。そうしたあらゆる思いを預け、おろすことができる場所が恐山なのかもしれません。

南師のもとへは様々な相談が持ちかけられてくるといいます。中には、故人をどのように供養すればいいかと率直に尋ねる人もいるようです。南師はその問いに対して「思い出してあげることが、最大の供養です」と語っています。そこには、仏教を超越した死者供養が厳然と存在します。

筆者はこれまで恐山に三度足を運びました。そのうちの二度は故人に会うために訪ねたものです。死後の世界があるかは分かりませんが、逝ってしまった人への思いを預けに、人は恐山へ向かうのかもしれません。

イタコの口寄せ

  • 写真:熊猫イタコの口寄せを行う小屋は恐山の総門をくぐった左側に点在しています。

恐山といえば、死者と交信することができるイタコさんの存在を思い出す人も少なくないでしょう。イタコさんは恐山に所属しているわけではありませんので常駐はしていません。主に夏と秋の祭典時に来られるということですが、筆者の場合運がよかったのか、祭典期間ではないもののイタコさんがいらっしゃいました。

境内に小さな小屋があり、口寄せと呼ばれる死者との交信を行います。筆者の場合、10分間で5,000円のお金をお支払いしました。イタコさんを介して発せられる故人の言葉は嘘か真(まこと)か、それは我々が知る由もありません。

しかしながら、南部訛りの言葉で発せられる温かみのあるイタコさんの言葉。それを聞くことに大きな意味があるのだと思うのです。

霊場恐山
青森 / 自然・景勝地 / 観光名所 / 紅葉 / パワースポット / インスタ映え / ツーリング
住所:青森県むつ市田名部宇曽利山地図で見る
電話:0175-22-3825

次のページを読む

青森の旅行予約はこちら


青森のパッケージツアー(新幹線・飛行機付宿泊プラン)を探す

青森のホテルを探す

青森の航空券を探す

(青森空港)

(三沢空港)

青森の現地アクティビティを探す

青森のレンタカーを探す

青森の高速バスを探す

この記事で紹介されたスポットの地図

関連するキーワード

※記事内容については、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。

あなたにオススメの記事

同じテーマの記事


日本の最強パワースポット24選!神社やゼロ磁場、自然のパワースポットも

日本の総氏神のように信仰される天照大御神をお祀りする伊勢神宮や、”願いが叶うパワースポット”として有名な来宮神社、全体が最強パワースポットと言われる皇居など、日...


三途の川の先の世界を疑似体験!?青森の霊場「恐山」

本州北の果て、青森県下北半島にある霊場・恐山。“三途の川”や“地獄”、“極楽”を彷彿とさせる風景が広がり、まるで死後の世界を疑似体験するようです。この記事では、...

【日本】大自然に癒される!自然のおすすめパワースポット22選

幻想的な光景がジブリの世界のようだと話題の「亀岩の洞窟」や、東洋のナイアガラと言われる「吹割の滝」、大地のパワーを感じる「大観峰」など、大自然に癒される、日本全...

十和田湖を訪れるなら十和田神社で「おより紙」に願掛けしてみよう!

青森県と秋田県にまたがる位置にある十和田湖。三湖伝説の一つにもあげられる十和田湖は、秋田県にある田沢湖と同じような伝説を持っている神秘的な場所でもあります。そん...

広さ約22万坪!古牧温泉「星野リゾート青森屋」で過ごす贅沢な時間

青森県三沢市にある古牧温泉「星野リゾート 青森屋」は、この地を代表する一大リゾート施設。広大な敷地にはオリジナリティ溢れる温泉をはじめ、有形文化財の「旧渋沢邸」...

この記事を書いたトラベルライター

さすらいびと
「いつか、ある人にこんなことを聞かれたことがあるんだ。たとえば、こんな星空や泣けてくるような夕日を一人で見ていたとするだろ。もし愛する人がいたら、その美しさやその時の気持ちをどんなふうにつたえるかって?」
「写真を撮るか、もし絵がうまかったらキャンバスに描いてみせるか、いややっぱり言葉で伝えたらいいのかな」
「その人はこう言ったんだ。自分が変わってゆくことだって…。その夕日を見て、感動して、自分が変わってゆくことだと思うって」 星野 道夫「旅をする木」(文春文庫)より
https://blog.goo.ne.jp/kumaneko71

140円の鉄道旅「大回り乗車」で楽しむ首都圏1都3県のグルメ旅

JR各社の大都市近郊区間内の特例として、遠回りしながら目的地に行く「大回り乗車」というものがあります。初乗り料金のたった140円でぐるりと関東地方を一周すること...


140円の鉄道旅・大回り乗車で楽しむ東京〜千葉・絶品の駅そば巡り

大回り乗車をご存じでしょうか。JR各社の大都市近郊区間内の特例として、運賃上正式な乗車ルートではない路線を利用し、遠回りして目的地に行く乗車方法のことです。この...


うどんだけじゃない。高松名物「骨付鳥」は、CAも通う「蘭丸」がおすすめ

高松といえば、讃岐うどん。でも、もうひとつの名物「骨付鳥」はあまり知られていません。文字通り、鳥の骨付きもも肉を焼いたもので、スパイシーな味付けが特徴です。近年...

【福井】永平寺の修行体験 1泊2日の参籠で心を整える

旅行ガイド『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』において二つ星がつけられるなど、国内外から注目を集める永平寺。でも観光で訪れるだけとは、なんとももったいない。...

階段降りたら2秒でアジア。アジア食材・調味料が揃う「アメ横センタービル・地下食品街」

今、東京でも屈指の多国籍タウンになりつつある「アメ横」。今回は、色々な国の様々なエッセンスが薫る商店街の中でも、とりわけホットなスポットとして注目を集めている「...

トラベルライターインタビュー Vol.3 Emmyさん

【トラベルライターインタビューVol.3】一人旅を応援する記事を多数執筆!Emmyさんならではの人気記事執筆のコツやその原動力に迫ります