福井県小浜市にある国宝建造物「明通寺(みょうつうじ)」。山の中に静かに佇むこのお寺は、その古色蒼然とした迫力に圧倒されます。本堂の中にはちょっと珍しい仏さまたちが。澄んだ空気と静寂に包まれた真言寺院の魅力をご紹介します。
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806年創建の古刹「明通寺」
福井県の小浜市は、京都や奈良に匹敵する何百年の歴史を持つ古刹が点在している所です。その中の一つが「明通寺」。創建したのは、平安時代の武将で初代征夷大将軍「坂上田村麻呂」です。
坂上田村麻呂は国司として若狭に赴任した折、以前戦った蝦夷の地で命を落とした人たちの冥福を祈るために、この寺を建てました。霊夢に導かれ、自ら仏像を彫り安置したと言われています。
国宝建造物の本堂と三重の塔
拝観料500円を納めて境内へ。巨木に囲まれた境内は、静謐で澄んだ空気に包まれてとても気持ちいい場所です。その中に溶け込むように佇んでいる古色蒼然とした本堂と三重の塔が国宝です。現在の建造物は一度焼失し、鎌倉時代(1200年代)にそれぞれ再建されたものです。
均整のとれた美しい造形美の三重の塔です。梁の部分がかなり長く立派で、先端に彫刻を施しているものはとても珍しいものだとか。
本堂の中に安置されている仏像
本堂に入ると、僧侶の方が寺や仏像に関して詳しく説明してくれます。撮影は禁止ですが、中に安置されている仏像は三体あり、すべて重要文化財に指定されています。ご本尊は「薬師如来坐像」。そしてその両脇に立っているのが、なかなか珍しい仏像なのです。
降三世明王立像と深沙大将立像
「降三世明王立像」は、明王によくある形として邪気などを踏みつけています。しかしこの方が踏みつけているのは、なんとシバ神とその奥さん。異教とはいえ神さまを踏んづけているのは珍しいと思うのですが、これがこの「降三世明王」の特徴なのだそうです。
欲望と破壊の神とも言われ、現在と過去と未来の三世を牛耳っていると言われるシバ神。その神をも組み伏せる力を持っているということを表している姿なのだとか。
反対側にいるのが「深沙大将立像」という仏教の守護神です。魔を遠ざける力を持つと言われています。
その昔、旅の途中の砂漠で苦しんでいる「三蔵法師」を助けたという伝説を持つことから、「西遊記」の沙悟浄のモデルになったと言われています。片手にヘビをつかみ、お腹のあたりになぜか人の顔が。お寺の説明では、この顔は退治した鬼の顔だと言われているとおっしゃっていました。しかし別の説もあって、「深沙大将」は別の姿が子供であるということから、それが現れているのではないかというもの。とにかくよくわからないみたいです。
なかなか謎の多い神様で、ほとんどの像や絵はかなりの異形で恐ろしい形相です。こちらの像にはありませんが、首から髑髏の飾りを下げている場合もあるようです。明通寺の沙悟浄は、どちらかというとまだ穏やかな方なのかもしれません。深沙大将の像というのは、日本ではあまり作例がなくとても珍しいのだそうです。
不動明王立像
本堂を出て、いったん参道にもどり順路を進んでいくと、別棟にいるのが四人目の重要文化財「不動明王立像」です。明通寺に本来いらしたお不動さんは焼失してしまったそうで、別のお寺から譲りうけたものだとか。
かわいいおみくじと巨木
参道の木の柵の中と灯篭に小さなダルマがたくさんいます。実はこれは明通寺のおみくじで、ダルマの中におみくじが入っているのです。表情も数種類あって、かわいいので持って帰る人がとても多いみたいですね。
境内にある名物「カヤの巨木」です。こちらは指定文化財ですが、これ以外にもあたりは巨木がいっぱい。筆者が訪れた際には、梅の花もつぼみをつけていました。四季を通じていろいろな植物の美しさを楽しめるのではないかと思います。
幽谷という言葉がぴったりの寺
「幽谷」とは山深く静かな谷という意味ですが、明通寺はまさにその言葉にぴったりの場所です。創建当時は巨木もまだ少なく、開かれた場所の華やかなお寺であったようです。今は幽谷に佇む寺として、その歳月の重みをずっしりと感じさせてくれる「日本の美」と言えるでしょう。
- 明通寺
- 福井 / 寺 / 紅葉 / 穴場観光スポット
- 住所:福井県小浜市門前5-22地図で見る
- 電話:0770-57-1355
- Web:http://myotsuji.jimdo.com/