大回り乗車をご存じでしょうか。JR各社の大都市近郊区間内の特例として、運賃上正式な乗車ルートではない路線を利用し、遠回りして目的地に行く乗車方法のことです。この乗車方法はJRの規則によって許容されており、不正乗車ではありません。今回は、この大回り乗車を利用し、東京都心から千葉県を回り、再び東京に戻る鉄道旅を初乗り料金140円で楽しみながら、駅内にある人気のそば屋3店舗を巡る旅をご紹介します。
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大回り乗車ってなに?
大回り乗車とは、JR各社(北海道、四国、東海は除く)の決められた区間内において、運賃上正式な乗車ルートではない路線を利用し、遠回りして目的の駅に行く乗車方法をいいます。
例えば、山手線でひとつ隣の駅へ行く際に、あえて逆回りの路線で行くという乗り方が、最も分かりやすい例として挙げられます。以下の4つのルールさえ守れば、初乗りの140円で、旅情あふれる鉄道旅ができるのです。
・途中下車は無効
・有効期限は当日のみ(始発から終電まで)
・同じ路線の往復や同一駅を交差する乗り方(一筆書きのルート)
東京圏であれば、先述した山手線のルートから、一都六県をぐるりと回る長距離まで様々なルートがあり、鉄道ファンの間で人気の鉄道旅になっています。
食べ鉄、呑み鉄、撮り鉄、いろんな楽しみ方がある鉄道旅
鉄道の旅には様々な楽しみがあります。流れゆく車窓。その風景を眺めながら食べる駅弁。珍しい電車や駅の風景の撮影など。近年は、駅の大型化が進み、駅ナカグルメの幅が広くなりました。駅によっては、カフェやラーメン屋さん、さらにはカレー屋さんや居酒屋までテナントする駅もあります。しかし、一方では元祖駅ナカグルメ、駅のそば屋さん、いわゆる「駅そば」の人気も根強いものがあります。近年、安くて、早くて、おいしい駅そばが見直されつつあり、ファンも増えています。
東京と千葉の人気の駅そばを巡る大回り乗車
例えば、JR常磐線とJR成田線のターミナル駅の我孫子駅にある「弥生軒」の「唐揚げそば」は、B級グルメのブームと共に大人気になり、わざわざ遠方から食べに訪れる人が後を絶ちません。
また、JR秋葉原駅の「新田毎(しんたごと)」は、つゆのバランスがよく、メニューも豊富なことから、大人気の駅そばです。
もう一店、おすすめの駅そばは、上野駅内にある「二八蕎香」です。本格的なそばが楽しめる、駅そばでも稀有な店舗です。他にも、関東圏内には、様々なおすすめの駅そばがありますが、今回は比較的、コンパクトな大回り乗車で、駅そばを語るには外せない上記の3店舗を巡ります。
ICカードはNG。切符を買って、さぁスタート
大回り乗車は原則的に、交通系のICカードは使用できません。したがって、券売機にて切符を購入する必要があります。出発地とゴール駅の都合を考えて、スタート地点とゴールの駅、それに合わせた金額の切符をご購入ください。筆者の場合、JR御徒町駅からスタートしました。まずは山手線に乗り、JR秋葉原駅に向かいます。
区内では珍しい独立系のJR秋葉原駅「新田毎」
JR秋葉原駅の総武線下りホームから通路に面して店舗を構える「新田毎」は、近年JR系の外食企業の出店が著しい駅そばにあって、珍しい独立系の店舗です。オーダーから丼の返却まで、お客自身が行うセルフシステムです。
まず、入口手前左手にある券売機で、食券を購入し、入口正面の窓口に食券を差し出して注文します。空いていれば、待つこと数十秒でオーダーしたものが目の前に供されます。その手際のよさも、駅そばの見所の一つといえます。
出来上がった丼を持って、食べるポジションを探します。店内は座席と立ち食いの、両方のスペースがあります。もちろん、どちらで食べても構いません。おいしくいただいたら、お店の奥にあるスペースに丼を返却します。
「新田毎」のおすすめは「春菊天そば」
メニューの多い「新田毎」のおすすめは、「春菊天そば」。一杯420円です。この、春菊天の大きさといったら、もう丼から、はみ出すほど。やや濃くて、きりっとした汁に春菊の苦味が融合して、独特の味がしみわたります。汁とそばの相性は抜群。そばを手繰る度に、独特の旨味が、口いっぱいに広がります。
総武線の車窓から
秋葉原から、我孫子へと向かいます。総武線の下り千葉方面の各駅停車に乗車します。JR秋葉原駅の次の駅、JR浅草橋駅を出ると隅田川の絶景が現れます。更に川を渡ると国技館。その向こうにはスカイツリー。この辺りの風景は総武線の車窓からも見え、それは抜群のロケーションです。
各駅停車でJR千葉駅まで行くのも風情はありますが、JR錦糸町駅で総武快速線に乗り換えれば、JR千葉駅まで、たったの30分。特急料金はかかりませんので、乗り換えるという手もあります。
千葉駅にて乗り換え
さて、総武線の終点、JR千葉駅に到着したら、成田行きの電車に乗り換えます。電車の本数が少ないので、待ち時間が発生する場合がありますが、JR千葉駅の駅ビルにはたくさんのお店がテナントしていて、買い物することもできます。いろいろ見て回るだけでも楽しいですよ。
JR千葉駅を出発した電車は千葉市内を北東に向け、四街道市、佐倉市を走行します。都内から僅か1時間余り、佐倉市まで来ると、車窓は田園風景。自然豊かな車窓の風景にきっと癒やされることでしょう。
成田から我孫子へ
JR千葉駅から発車した電車の多くは、JR成田駅で終点となります。ここで、JR我孫子駅行きの電車に乗り換えます。成田・我孫子間の路線は成田線のうちのひとつで、我孫子支線とも呼ばれています。単線のため、上下線がすれ違う際は、駅にて反対の電車を待つなど、ゆっくりとした時間が流れています。
気分はもうローカル線です。JR成田駅からJR我孫子駅までは約40分で到着します。