京都市のJR京都駅から徒歩約10分の場所に、渉成園という庭園があります。池や築山からなる美しい園内では、春の桜や秋の紅葉など、四季折々の風景が楽しめます。市街地にありながら、静かで落ち着ける庭園を散策してみてくださいね。
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渉成園(しょうせいえん)とは
渉成園は、京都市のJR京都駅からほど近い場所にある庭園です。東側にある真宗大谷派の寺院「東本願寺」の飛び地境内地であり、寛永18年(1641年)に三代将軍・徳川家光からこの土地の寄進を受けて作られました。枳殻邸(きこくてい)とも呼ばれていますが、これは、庭園の周囲に枳殻(からたち)という柑橘の生け垣が植えられているため、このように名付けられたそうです。
庭園は、大きな池に築山や島を配した「池泉回遊式」となっており、季節によって変化する景観を楽しみながら散策できます。多くの人が行き交う京都駅からほど近い場所にありながら、静かで落ち着いた雰囲気があり、外国人観光客や団体客が観光している姿も見られます。
庭園を散策しよう
渉成園を散策してみましょう。広い庭園内には、茶室や書院といった建造物が点在しており、美しい景観が楽しめるスポットも多いです。こちらでは、その一部を紹介します。
臨池亭・滴翠軒(りんちてい・てきすいけん)
庭園に入って少し歩くと、小さな池に面して2棟の建物が建っているのが見えてきます。これは、臨池亭と滴翠軒という建物です。臨池亭は、池に臨んで建っているため、このような名前が付いたそうです。主室は八畳二間で、池に張り出すように縁側があり、池との一体感を表しています。
滴翠軒は、臨池亭と廊下でつながっている建物です。池に落ちる滝から名付けられた建物は、池の中まで張り出した縁側が特徴的で、内部には寺院建築で見られる花頭窓(かとうまど)を持つ座敷があります。
代笠席(たいりつせき)
代笠席は、庭園の北側にある建物です。1888年(明治21)に再建され、表側に土間、小縁が、内部には四畳半の部屋が二間続きとなっています。こちらの建物は、煎茶三席(茶店・飯店・酒店)の茶店に相当するもので、旅人が「笠代わり」に雨宿りをする場所であると考えられています。
傍花閣(ぼうかかく)
傍花閣は、庭園のほぼ中央にある建物です。楼門造りで、左右には山廊と呼ばれる階段の入口を持つ、独特の形となっています。建物の名前の通り、春には周囲に桜が多数咲くそうです。
建物の二階部分には、四畳半の部屋が設けられています。この部屋の天井中央には、磁石板に十二支を配した珍しい模様が描かれているそうです。
印月池(いんげつち)
印月池は、渉成園の中心となる大きな池です。東山から上る月が水面に映り、美しいことから、このように名付けられたそうです。面積は約1,700坪もあり、庭園の6分の1を占めているそうです。印月池には、北大島、南大島の二つの島が浮かんでいます。
丹楓渓(たんぷうけい)
印月池の北岸には、丹楓渓という場所があります。渓谷を模した地形に、多数のカエデが植えられており、秋には素晴らしい紅葉が楽しめます。
回棹廊(かいとうろう)
回棹廊は、北大島と北岸を結ぶ木製の橋です。現在は、檜皮葺の屋根を持ち、中央部に唐派風屋根(からはふやね)を備えていますが、安政の大火の前には、朱色の欄干を持つ反橋(そりはし)だったそうです。
数段の階段を登ると、周囲の池が見渡せます。橋は少し高さがあり、欄干も低いので、少々怖いと感じる方もおられるかもしれません。
縮遠亭(しゅくえんてい)
縮遠亭は、印月池に浮かぶ北大島にある茶室です。西側の土間から入ると抹茶席があり、四畳の間が付随しています。
また、斜めに伸びた板間の先には、上段の間が設けられています。こちらは、床を高くした「舞台造り」となっているのが特徴です。
かつては、上段の間から、東山三十六峰の一つ「阿弥陀ヶ峰」が縮図のごとく見晴らせたことから、このように名付けられたそうです。
侵雪橋(しんせつきょう)
侵雪橋は、印月池の西北の岸と北大島を結んでいる橋です。少し古びた木造の反橋は、落ち着いた庭園の景観に溶け込んでおり、外国人観光客が記念撮影をしている姿も見かけます。橋の上からは、庭園内を一望できるほか、京都駅前にある京都タワーも見ることができます。
閬風亭(ろうふうてい)
閬風亭は、印月池の西側にある書院造の大広間です。慶応1年(1865年)に再建された建物の内部からは、東山の阿弥陀ヶ峰を借景とする庭園の景色が眺められます。こちらの大広間には、北西に八畳の「喜楽」という部屋が付随しており、明治13年(1880年)7月14日、明治天皇が御休息に使われたそうです。
漱枕居(そうちんきょ)
印月池の北西の隅には、漱枕居という小さな建物が建っています。池にせり出すように建てられており、内部は、四畳半と三畳が続く座敷、土間からなります。茶店の代笠席、飯店の縮遠亭とともに、煎茶三席の一つとされており、漱枕居は酒店に相当するそうです。
売店と休憩所
庭園の出口付近には、売店とお休み処が設けられています。こちらでは、お香やオリジナルグッズなどが販売されています。
甘味やペットボトル入りのお茶なども販売されており、小さな座敷でいただくこともできます。庭園の散策後にひと息つくのに良いでしょう。夏には、宇治抹茶を使ったアイスクリームもありますよ。
ちょっと珍しい「れんこん餅」という和菓子もあります。葛餅のようなお菓子に、きな粉をかけて味わうと、つるっとした食感とやさしい甘さで、意外と食べやすいものです。