近年密かなブームとなっている「宿坊」体験。お寺に宿泊し、お坊さんの修行を体験することができます。非日常的な体験をしたい人や、日常生活に疲れてしまった人、自分を見つめ直したい人等が訪れるようです。今回は、埼玉県飯能市の正覚寺で宿坊体験を行うプランをご紹介します!
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「宿坊」とは?
「宿坊」とは、お寺の参拝者のための宿泊施設です。山寺や有名なお寺には、泊まりがけで参拝しに来る人もいるのです。現代の一般市民にはあまり縁がなさそうな宿坊ですが、気軽に宿坊での宿泊を体験できるお寺もあります。
宿坊に宿泊してお坊さんの修行を体験できるプランを用意しているお寺は全国に複数ありますが、今回筆者は埼玉県飯能市にある正覚寺にて、一泊二日でお世話になってきました。
埼玉県飯能市の正覚寺とは?
正覚寺は曹洞宗認可の参禅道場。文明15年(1483年)、本室鳳根大和尚を開山として創設された由緒正しいお寺です。山寺というほど山奥に位置するお寺ではありませんが、夏でも涼しく、鳥のさえずりを聞いたり、夜空の星を眺めることができるような環境にあります。
ちなみに、正覚寺は日本だけでなく海外の人にも人気で、お寺内に貼られている世界地図には、宿泊に来たお客さんの出身地を表すシールが、たくさん貼られていました。海外の人が日本の禅の文化を体験しに、遠路遥々来てくれるのは嬉しいですね!
最初の挨拶
宿坊の宿泊者が正覚寺に到着すると、まず「宿泊参禅の為ご指導どうぞよろしゅう」と大声で言わなければなりません。ちょっとしたイニシエーションですね。
やや恥ずかしいかもしれませんが、奥の方にも聞こえるよう、「大声」で言いましょう・・!
座禅
優しいご指導で安心
正覚寺には15〜16時には到着するようにしましょう。チェックインの後、16時すぎくらいから座禅(坐禅)と、ご住職の法話があります。
座禅が初めてでも大丈夫! 礼儀作法は、ご住職が優しく教えてくれます。禅寺の座禅というと、厳しいイメージがあり、筆者は少々身構えて参加しましたが、杞憂に終わりました・・!
曹洞宗の座禅の特徴は「只管打座」
座禅は1回40分で、夕方と早朝に行います。忙しい現代人には、少しでも暇があればスマホをいじってしまう人も多く、40分も目を瞑って(正確には半開きして)ひたすら座っているのは苦痛かもしれません。
筆者も最初は苦痛に感じましたが、静かなお寺で自然の音を聞きながら座禅を組むのは、非常に良い経験となりました。黙って座っている時は色々な考え事が頭をよぎりますが、できるだけ考え事をやめて、自然と一体になるような感覚を味わえるといいですね。
座禅では、雑念を捨ててただひたすら座禅をすることで、心と体が一つになることを目指します。この「只管打座(しかんだざ)」の修行が、曹洞宗の座禅の特徴です。
早朝の座禅は夕方の座禅と一味違うかも
また、早朝の座禅では、夕方より頭がクリアなため、また違った感覚が味わえると思います。早朝に座禅をすると睡魔が襲ってくるのでは?と心配しましたが、逆に、異様に頭がスッキリしているような感覚を味わうことができました・・!
典座料理(精進料理)
夕食は18時頃、朝食は8時頃となります。正覚寺での食事は全て典座料理(精進料理)です。ちなみに「典座」とは本来、禅寺で僧侶たちの食事をつかさどる役のことです。
五観の偈を唱える
食事の前には、「五観の偈(げ)」を唱えます。「偈」とは仏の教えをほめたたえた韻文のことです。禅寺では食事も修行の一部と考えており、五観の偈を唱えて、食事をいただくことのありがたさを毎食前に確認します。
五観の偈は箸袋に書いてあります。この箸袋と箸は朝食時にも使うため、夕食後にしっかり保管しておきましょう!
ちなみに、正覚寺の箸はお土産にいただけます。
典座料理(精進料理)の内容
典座料理(精進料理)というと、すごく質素な料理を想像するかもしれませんが、食べ応えはそれなりにありました。野菜ばかりではなく、揚げ物や豆腐などもあり、バラエティ豊かで美味しい食事です。毎食典座料理(精進料理)を食べて生活すると、とても健康的な生活が送れそうです。
また、昼食等で典座料理(精進料理)のみを楽しむことも可能です。「宿坊には宿泊できないけど典座料理(精進料理)だけは是非味わいたい」という人は、正覚寺に予約してみましょう。
食事の後片付け
食前に、「食事の際には沢庵を一枚残してください」と指示がありました。沢庵一枚を残して食事を終えたら、お茶碗と汁椀を沢庵とお湯で掃除することになります。
お茶碗と汁椀にお湯をそぞぎ、沢庵で汚れを拭います。汚れを一通り拭ったら、その沢庵を食べ、そのお湯を飲み干すことで、食事は終了となります。そして全ての器を重ねて、食事を受け取った場所まで持って行きます。ここまでが正覚寺での食事の一連の流れです。