出雲そばは、島根県の郷土料理で、地元民も日常的によく食べるソウルフードです。今回は、島根県民がおすすめする一押しの出雲そば店の中から厳選して10店舗、ご紹介します。
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出雲そばとは?
出雲そばは、島根県東部・出雲地方発祥の郷土料理で、他県の蕎麦と比べて、黒っぽい麺が特徴です。その黒さには、挽き方に秘密があります。そば粉をつくるときに、通常は丁寧にそばの実の殻を取って何度も挽くのに対して、出雲そばは殻のついたそばの実をそのまま挽く製法のため、色は黒っぽく、食べごたえがあるのです。
そば屋に行くと、天ぷらや岩のりなど様々な種類のそばを楽しむことができますが、特にこの出雲地方で名物となっているのが割子そば(冷)と釜揚げそば(温)です。どちらも食べる時にそばつゆをかけていただきます。
割子そばの「割子(わりご)」は朱塗りの丸い器のことです。起源は江戸時代に松江のお殿様がお弁当として持ち運んだのが始まりとされています。そば屋では1枚から注文できますが、1人前が3枚が目安です。刻み海苔やかつおぶし、もみじおろしといった薬味とおつゆを適量かけて、一番上の段から器を重ねたままの状態で食べます。
- 出典:www.flickr.com朱塗りの器でいただく出雲そば(割子そば)(Photo by Ryohei Noda)
また、温かいそばの釜あげそばは、出雲大社周辺の神社が発祥とされています。通常そばは、茹でたら一度水で締めますが、釜揚げそばの場合は水に話さず茹で汁とともに器に入れます。トロッととろみのあるそば湯に入ったそばといったようなもので、そばつゆをかけていただきます。そば湯に含まれる栄養素も同時にとれるということで健康食としても注目されています。
今回は、出雲地方(島根県東部)を中心に、そば好きの地元民がおすすめするそば屋を厳選して10店舗ご紹介します。
1.絶品!江戸末期創業の献上そば「羽根屋」
江戸時代末期に創業し、出雲市内に3店舗を構える老舗出雲そば処の「羽根屋」。大正天皇をはじめ皇室も御用達で代々受け継がれる伝統を大切にしながら、現代の人たちにも受け入れられるそばを提供する人気店です。
そばの実から使用する野菜に至るまで地産地消をモットーとし、挽きたて・打ち立て・作りたてを味わうことができます。
メニューは、割子3段(840円)、釜あげそば(800円)といったそば(冷・温)はもちろんのこと、炊き込みごはんつきの定食(例:三色割子定食(1,300円)、天ぷら割子定食(2,000円))やうどんも提供しています。
細麺の中には、そばの実の殻が微細に見え、口当たりもまろやか。そばの香りがふわっと口の中に広がります。だしのきいたつゆを適度にかけていただくと、ツルンといくらでも食べられる気がしてきます。
また、そばを注文したら必ずついてくるとろんとしたそば湯は、必ず味わいたいもの。極上のそばを茹でたときのそば湯は、やはり一味違います。
- 羽根屋 本店
- 島根 / そば / ご当地グルメ・名物料理
- 住所:島根県出雲市今市町本町549地図で見る
- Web:https://kenjosoba-haneya.com/shop
2.松江の一等地・塩見縄手の風情ある「八雲庵」
城下町・松江は開城400年以上の歴史のある松江城を擁する古都で、小京都やお堀が街を張り巡らされている情景から「リトル・ベネチア」とも称されています。松江城は、国宝にも登録され、ますます話題沸騰の古城ですが、そのお堀端に塩見縄手という武士の住んだ館が続く道があります。
そんな一等地にそば屋を構えているのが八雲庵です。武家屋敷跡を改装した趣のある店内で、中心にある庭園の池を取り囲むように数棟の屋敷がたっており、とても風情のあるお店です。
八雲庵の名物は、「鴨南蛮そば」(920円)。鴨南蛮は臭みのない鴨肉と相性の良いねぎの組み合わせで、こくのある旨味がスープに出ており、絶品です。お好みで粉山椒を振っていただくのもよいでしょう。
そもそも鴨南蛮そばの「南蛮(なんばん)」の語源は江戸時代に来日した南蛮人がネギを好み健康保持のために食べていた事と言われています。今では、すっかり地元の人々にも愛される八雲庵の味ともなっています。
その他には、出雲地方の定番の割子そば(810円/1人前3段)もぜひ試したい1品で、真っ黒で濃厚なそばたれを少量かけてお召し上がりください。また、ツルンと食べやすいうどんメニューもあり、鴨南蛮うどんやざるうどんなど、そばアレルギーやそばが苦手な人もお楽しみいただけるようなメニューとなっています。
3.NHK朝ドラ舞台のそば屋から復活したお店「松本蕎麦屋」
NHK朝のテレビ小説『だんだん』(2008-2009)は松江と京都を舞台に、三倉茉奈さん・佳奈さんが演じる双子が生まれて以降別々の人生を送りながらも18歳で再会する物語を描いた作品です。
松江のロケには過去200年前に存在した老舗そば屋の名前を冠したそば屋が登場し、話題となりました。それが「松本蕎麦屋」です。
もともと松本蕎麦屋は、松江七代藩士の不昧公のお抱えそば屋で人気を博していましたが、その後一旦閉店してしまいました。そこで、朝ドラをきっかけに復活の声があがり、創業当時の正統派出雲そばの伝統を受け継ぐために店舗として復活したのです。
松江市民活動センター(STICK)ビルの1階に入居する松本蕎麦屋は、小上がりの囲炉裏のあるその雰囲気からドラマのロケセットのような古き良き内装が作り上げられています。
メニューも豊富で、定番の3色割子そば(780円)やざる蕎麦(760円)の他、鳥そぼろそば(夏季限定:890円)、味噌風味のぶっかけそば(750円)などオリジナルメニューもあり、打ち立てそばの風味香る鮮度の良いそばをいただくことができます。
また、デザートには、そばがきを使用したそばがきぜんざい(数量限定:310円)をぜひ食べて締めたいですね。松本蕎麦屋は、松江大橋や宍道湖といったスポットに近いので食後の散歩にも理想的なロケーションですよ。