横手市

神秘のベールを脱いだ「内蔵」のあるレトロ町【秋田県増田】【前編】

取材・写真・文:

福島在住
訪問エリア:30都道府県

2023年7月14日更新

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写真:Olive

かつて東北経済の要衝として栄えた増田には、蔵を主屋で覆う独特の建築様式があります。近年まで密やかに守られてきた内蔵の中は、想像を超えた世界が広がっていました。そんな横手市増田で町歩きと美味しいランチを楽しんでみませんか?

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秋田県の増田町とは?

  • 写真:Olive

秋田県の南東部に位置する横手市増田町は、江戸時代から養蚕や葉タバコ、生糸などの物資が行き交う拠点として栄え、明治から大正にかけては、銀行や電気会社などが設立され、県内有数の商業地となりました。商業規模の拡大によって、商人たちは、競うように蔵を建て、主屋を拡大し、大型の店舗を構えるようになります。

  • 写真:Olive山吉肥料店奥行き

現在商店街となっている中七日町通りは、直線で400mほどの通りに商家が並び、間口は4間から5間(7.24m~9.05m)前後ですが、奥行きは50間から70間(90.5m~126.7m)という短冊形の地割で、裏通りまで接する長さです。

こうした歴史的建造物が多く残る町並みは、秋田県では仙北市の角館に次いで、2013年、国の重要伝統的建造物群保存地区に選定されました。現存している内蔵の一部は見学ができるようになっています。

横手市増田伝統的建造物群保存地区
横手市 / 町・ストリート / 女子旅 / 穴場観光スポット / 一人旅 / 穴場デートスポット / 観光名所 / 重要伝統的建造物群保存地区
住所:秋田県増田町中七日町通地図で見る

蔵を鞘(サヤ)で覆うって、どういうこと?!

保存地区の建物の特徴が、「蔵を鞘で覆っている」こと。そう聞いて、ピンとくる方は少ないかと思います。通常、蔵は敷地内に母屋とは別棟にあるのが一般的ですよね?しかし増田の蔵は、家の中にあるのです。下の写真の2階部分をご覧いただくと家の中にすっぽりと、蔵がおさまっているのがおわかりいただけると思います。

  • 写真:Olive内蔵の特徴がわかりやすい佐藤又六家の住宅

増田町では、細長い奥行きのある土地を生かし、店舗や主屋の背後に内蔵を建て、それらをすべて覆う家を建てているのです。屈指の豪雪地帯といわれるこの地で、蔵や主屋を豪雪から守るために、さらに大きな家で囲う形です。

  • 写真:Olive佐藤養助漆資料館

内部は、主屋や内蔵が連なり、通り土間(土間の廊下)でつながっています。内蔵は一見すると、その存在に気付きにくいため、2008年に調査が行われるまで、秘密のベールに包まれていました。2017年にはテレビCM『大人の休日俱楽部』でも、増田町が紹介され、吉永小百合さんが撮影で訪れています。

内蔵の中はどうなっているの?

  • 写真:Olive佐藤又六家
  • 写真:Olive旧杏華堂石田医院座敷蔵

内蔵は、その商家によって使い方が様々ですが、大きく分けると、大切な家財道具や衣類などを収納した文庫蔵と居住空間とした座敷蔵の2種類が最も多いようです。

  • 写真:Olive日の丸醸造 酒蔵の慶事に使われていた内蔵。現在は客間

長い間、増田町の内蔵は家族限定の空間として、大切にされてきました。ある家では、通常の居住空間や収納場所として、現在も使用されています。一方ある家では、客人を迎えるために贅をつくした客間として使うこともあるようです。

冠婚葬祭を行う場として、今でも内蔵内部の公開を控えているお宅もあります。ここでは、産婆さんを呼んでの出産も、入棺前の仏事も、内蔵の中で行う神聖な場所として代々守られているそうです。町内や隣近所でも、蔵を見せる習慣がなかったことから、内蔵の所在さえ隣家に知られない場合もあったというのです。

ランチにお勧め「羽場こうじ茶屋くらを」  

  • 写真:Olive羽場こうじ茶屋くらを

「羽場こうじ茶屋くらを」は、以前はお酒の仕込み蔵だった躯体部分の見学と共に、美味しい麹料理が頂けるお店で、2003年(平成15年)に廃業した勇駒酒造の酒蔵を改装しています。

  • 写真:Olive
  • 写真:Olive

ランチ(¥1,650)は、メインをお肉かお魚から選べます。味付けには麹や味噌をたっぷりと使い、体に優しいランチです。食後には、くらを自慢の甘酒もいただけますし、別注の味噌キャラメルソフト(¥330)もお勧めです。

地元の家庭で昔から食べられてきた麹を使い、料理に使用している野菜や山菜は、増田の朝市で購入した特産品だそうです。お食事の際にだされる麹茶の量り売りもしています。

旬菜みそ茶屋くらを
横手市 / 和食 / ランチ / 女子旅
住所:横手市増田町増田中町64地図で見る
電話:0182-45-3710

稲庭うどんの老舗「佐藤養助漆蔵史料館 養心庵」も要チェック

  • 写真:Olive佐藤養助漆蔵史料館

秋田を代表する稲庭うどん・佐藤養助商店のお店が増田町にもあり、豪華絢爛な漆蔵を資料館として無料開放されています。太い梁や柱などすべての木材が、最高級のもので造られている蔵は圧巻です。

  • 写真:Olive養心庵

その内蔵の中に併設されているのが、養心庵という名のうどん店。目を見張る漆塗りの内蔵に感動したあとは、老舗のうどんを頂くのもよいですし、お土産を購入することもできます。※現在は、うどん販売のみとなっています。

佐藤養助漆蔵史料館 養心庵
横手市 / うどん / ご当地グルメ・名物料理 / 郷土料理 / ランチ / 稲庭うどん
住所:秋田県横手市増田町増田字本町5地図で見る
電話:0182-45-5430
Web:https://www.sato-yoske.co.jp/shop/urushigura/

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この記事を書いたトラベルライター

お出かけ、食べることが大好き!
日帰りドライブから、国内、海外を問わずお出かけするのが大好きです。ずっとタウン重視でお買い物に夢中の旅でしたが、10年ほど前にアメリカ・サンフランシスコに在住。国立公園めぐりをしたことをきっかけに、自然も大好きになりました。少し歴史を知ってから出かけると楽しいこと、美味しい食べ物や綺麗な風景に出会えると幸せなこと。小さな情報が、誰かの楽しい!や嬉しい!につながったらいいなと思っています。これからも、いろんなところへ出かけて、たくさんの情報を発信してゆきたいと思っています。少しでも参考になれますように!

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