写真：トラベルライター明治の建物であるTACHIKAWA CAFÉ RESTAURANT MAISON（タチカワ カフェ レストラン メゾン）は住宅兼レストランとなっており、国指定重要文化財にもかかわらず、気軽に立ち寄ることのできる本格フレンチのお店です。歴史ある建物をリノベーションした、趣きのあるレストランでいただく至福のお料理をご紹介いたします。
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函館の歴史的建造物について
函館は、安政6（1859）年に横浜・長崎と共に日本で最初に国際貿易港として開港した街で、開港を契機に諸外国との交流を通して様々な異文化を取り入れました。また、北海道経済の中心地だったことから、多くの商いが隆盛を極め、多種多様な商店や豪商の邸宅等が建ちました。そして多くの大火があったにもかかわらず、明治・大正・昭和初期の建物が多数現存している街として有名です。
防火対策と優美さを兼ね備えた、国指定重要文化財 太刀川家住宅店舗とは？
越後国（現 新潟県）長岡出身の初代太刀川善吉氏が、明治34（1901）年、西部地区ベイエリアである弁天町に米穀、海産、漁業を営む太刀川商店として2階建土蔵造りの店舗を建てました。隣の緑色の洋館は、大正4 (1915) 年に増設したものです。
TACHIKAWA CAFÉ RESTAURANT MAISON（タチカワ カフェ レストラン メゾン）の外観
函館は大火が多いことから、太刀川商店の壁は煉瓦造りのうえに漆喰で塗り込めた不燃質和風建築物という実用的な建物であることに加え、商店の内外には多くの和洋の意匠を凝らし、美しさを兼ね備えた関西風商家の建物となっています。明治の商家建築として昭和46（1971）年に国の重要文化財に指定されました。
- 写真：トラベルライター
- 写真：トラベルライター
この太刀川商店を営んだ太刀川家は、初代善吉氏・二代目善吉氏の頃、戦争や大火などの荒波にもまれながら函館でも指折りの実業家として活躍しました。特に税制面の知識が豊富だったことから組合や銀行等に多大な貢献をし、また大正時代に米価が高騰した際には、卓越した実行力で市民生活の安定に尽力するなど、函館経済・市民生活の発展・安寧に寄与した歴史があります。
タチカワ カフェ レストラン メゾン（TACHIKAWA CAFÉ RESTAURANT MAISON）
この国指定重要文化財である太刀川家の建物は、現在六代目当主の住宅となっており、1階の米穀店だった部分を改装し、タチカワ カフェ レストラン メゾン（TACHIKAWA CAFÉ RESTAURANT MAISON）として一般公開されています。
- 写真：トラベルライター
洋風アーチが美しいレストラン入口は、夏場など暖かい日は、オープンカフェにもなるそうです。
- 写真：トラベルライター重厚で素敵な内装とキッチンカウンター
上質なカツラの角材やケヤキの一枚板をふんだんに使用し、床や壁、天井、カウンターに至るまで、建築当時のものが活かされているレストラン内部は、シックな色合いに統一されたインテリアで、ゆったりしたソファーが置かれるなど、とてもリラックスできる空間となっています。
- 写真：トラベルライター
レストランは、太刀川家六代目当主夫人が切り盛りしています。夫人をはじめ、スタッフ、シェフ全ての方々が、気さくで細やかな配慮をしてくださるのも、ゆったりできる要因の1つだと思います。
地元食材にこだわった豊富なメニュー
とにかく海の幸・山の幸が豊富に揃っている函館と近隣市町村。このレストランでも、その季節に採れる食材をメインにメニューを組み立て提供してくれる、こだわりのお店です。
- 写真：トラベルライター黒板に書かれたメニュー
今回はランチとして「知床鶏のソテー（1,600円・税込）」と「エゾ鹿の網焼きステーキ（1,700円・税込）」（どちらもサラダとパン付き）と、ドリンク（700円）を注文しました。
- 写真：トラベルライター色彩豊かなサラダと全粒粉のパン
サラダは別々に丁寧に味付けされた品々が所狭しと盛り付けられ、しかも写真のとおり野菜の種類が多く、かなりの満足感があります。
さらに特筆すべきは、全粒粉で作ったパンです。香ばしく風味豊か、しかも滑らかな口当たりで、とにかく美味しいの一言！
知床鶏のソテー
さて、お待ちかねのメインディッシュです。下の写真は「知床鶏のソテー」です。名前のとおり世界自然遺産である知床の近隣で飼育されているブランド鶏で、北海道産小麦・海藻粉末を配合した植物性飼料で育てた鶏のお肉は、臭みが少ないのが特徴です。
- 写真：トラベルライター知床鶏のソテー
外側はパリッと香ばしく、中はジューシーで、絶妙な焼き加減です。知床鶏のソテーには、マスタードやレモンが付いていますが、他に「Harissa」という唐辛子から作られる辛口調味料を付けてくれます。初めて食べてみる味でしたが、この辛さがクセになりそうです。
- 写真：トラベルライター知床鶏のソテーにお好みで使える、辛口調味料「Harissa」
エゾ鹿の網焼きステーキ
さて次は、注目の「エゾ鹿の網焼きステーキ」です。このレストランシェフのお料理の美味しさは既に述べたとおりですが、こちらのジビエ料理も素晴らしいの一言！。
- 写真：トラベルライターエゾ鹿の網焼きステーキ
ステーキの断面はこのような感じで、まったく臭みがなくサッパリしています。まさに目からウロコの美味しさでした！
- 写真：トラベルライターステーキの断面
お料理をいただいてみた感想は、フレンチといってもクドさがないため食べやすく、こってり系が苦手な方にもお勧めできるお店だと思います。
自家製ケーキも見逃せない！
美味しいお料理だけでなく自家製スイーツも充実しており、ショーケースにはカラフルなケーキが並んでいます。ケースの下のワインボトルと比較すると、結構大きめのケーキだということが分かります。
- 写真：トラベルライター自家製ケーキ
その他の見どころ
ノスタルジーを感じる駐車場から店舗までの通路
レストランの裏側に住宅部分があり、その横に駐車スペースがあります。
- 写真：トラベルライター駐車スペースの様子
白い壁のレストランのほうに歩いて行く通路が、和風で素敵です。
- 写真：トラベルライター駐車場からレストラン入口に向かう通路
レストランが混雑したときに公開するお部屋も素敵！
キッチンカウンターに隣接する重厚な扉は住居部分に繋がっており、お客さんが少ないときは閉めているそうですが、この日は運良く扉が開いており、中を見せてくださいました。（お客さんが多くなり、座れる場所が少なくなると扉を開けるそうです。）
中を見せていただくと、そこはどこかの博物館のような佇まいです！金屏風の前には立派な鎧・兜が飾られております。
- 写真：トラベルライター歴史ある鎧・兜
さらに見事な彫刻が施された階段や、階段下の引き出し、美しいふすまなどがあり、オシャレなレストランの扉の向こう側がこのような純和風の空間になっていたことに驚きです。
- 写真：トラベルライター
どこも輝くほど綺麗に手入れされており、この建物を大切になさっている六代目当主と夫人の想いが感じ取れる気がしました。
おわりに
レストランの公式サイトのコンセプトでは、重要文化財という側面よりも、文化や人との交流に価値を置いていると紹介されています。
- 写真：トラベルライター
ともすると国指定重要文化財のフレンチレストランとなると、敷居の高い場所に感じられそうですが、コンセプトのような想いがあるからこそ、テーブルやレジでお店の方とお客さんの間にはたくさんの談笑があり、多くの方が気軽に訪れることができるレストランになっていると思いました。
- 写真：トラベルライター商店時代に使用されていた荷札（写真左）と、現在のレストランのショップカード（写真右）
長い時間をかけて、この地に根ざしてきた歴史的文化や価値観と、現代の文化や価値観が無理なく調和し、1つ1つの食材にこだわったフレンチレストラン。是非訪れてみてくださいね。
