廃止された鉄道の痕跡が残る廃線跡は、どこかの地方の事だと思っていませんか。東京都北区には今も住宅街に廃線が残っています。2014年7月に廃止された北王子線です。その痕跡を辿りながら過去と今を巡る小さな旅をご紹介します。
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洋紙製造を支えた北王子線
北王子線は東京都北区の田端信号場駅と北王子駅の僅か4kmを結ぶJR貨物の路線です。洋紙発祥の地として発展を遂げてきた東京都北区。
明治期より製紙会社の専用鉄道として使われていた北王子線は、戦前、戦後はもとより、平成に入ってからも利用されてきましたが、2014年3月14日の運行を最後に同年7月1日、廃止となりました。ちなみに田端信号場駅はJR貨物の路線駅。
田端信号場駅からJR王子駅までは、一部を除き、線路を肉眼で確認することが困難です。このため、廃線を辿る旅は、JR王子駅から北王子駅跡地(旧北王子駅)の区間をご紹介します。
多様な路線が交差するJR王子駅からスタート
JR王子駅は鉄道ファンならずとも、たくさんの鉄道路線が交差する注目のスポットとして知られています。
JR京浜東北線や東北本線系の各路線をはじめ、東北・上越新幹線、そして路面電車として知られるさくらトラム(都電荒川線)に加え、地下には東京メトロ南北線が走ります。これだけ多様な路線が交差するスポットは都内でも珍しいといえるでしょう。
歩道橋にて線路を確認
まず、JR王子駅の中央口か北口改札を出て右手ロータリー側へ進み、青い歩道橋を昇ります。そこから王子駅プラットフォームを見渡すと、京浜東北線の上り線を手前に見ることができます。
でも、実は京浜東北線上り線手前にもうひとつ線路があるのはお分かりになるでしょうか。それが北王子線の廃線です。その廃線を辿ってみましょう。
歩道橋を降り、北に進路を取ります。この時点ではJRの線路はJR王子駅の向こう側にあるので見えません。しかも、しばらく行くと道はすぐさま行き止まりになってしまいました。
北区のシンボル、北とぴあ
道路の関係上、行き止まりになりましたが、すぐ右側にある信号を渡り、迂回します。信号を渡ると、目の前には、北区の産業発展と区民の文化を高める目的で作られた北区のシンボル、北とぴあがそびえています。地上18階の高層ビルです。
実はビルの17階には展望台があり、無料で眺望を眺めることができます。廃線跡を辿る旅はスタートしたばかりですが、ちょっと立ち止まって展望台の眺めを楽しんでみてはいかがですか。眼下に飛鳥山、目の前に東京スカイツリー、天気がよければ富士山を見渡すこともできますよ。
- 北とぴあ
- 赤羽・王子 / その他スポット / 展望・景観 / 展望台
- 住所:東京都北区王子1-11-1地図で見る
- Web:https://www.hokutopia.jp/
住宅地へ向かう単線の廃線
北とぴあから、再び線路沿いに歩みを進めると北区の駐輪場となります。この駐輪場は利用者でなくとも、通り抜けることが可能です。その駐輪場を北に歩くと、左側の高台が少しずつ低くなるにつれ、廃線が姿を現してきます。
駐輪場を抜け、一般道に出て、しばらく道沿いを歩くと、建物などにより、廃線は見えたり、隠れたりを繰り返します。
しかし、やがて建物が終わり、視界が広がっていくにつれ、廃線は再び手前に近づいてきます。
更に進むと、廃線は東北・上越新幹線を離れ、やがて弧を描きながら、1本の単線が住宅地へ向かいます。
住宅地を横切る廃線
住宅地に入ると、いよいよ廃線は異様な姿を浮き彫りにしていきます。線路には草が生い茂り、そこだけ時間が止まってしまったような不思議な光景が広がっていきます。更に歩いていくと、見えてくる4箇所の踏切跡は、どこかもの悲しくもあり、オブジェのような非日常性を感じさせてくれます。
踏切跡の名称は南側から順に第一宮江踏切、第二宮江踏切、第一北王子踏切、第二北王子踏切です。宮江踏切の第一と第二には未だ警報機の残骸が残っています。もちろん、もう稼働することはないでしょう。そしていつか、この踏切や線路は撤去され、かつてここに鉄道が走っていたという痕跡は消えていくのかもしれません。