アメリカの首都、ワシントンD.C.にふさわしい国立美術館といえば、スミソニアン博物館&美術館が立ち並ぶモールにある【ナショナル・ギャラリー National Gallery of Art】。とにかく広い!その中でも押さえるべき美術品をご紹介します。
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ナショナルギャラリーはスミソニアンにあるのに “スミソニアン” じゃない?!
「ワシントンD.C.の観光地と言ったらスミソニアン!」と言われますが、正確に言うと、「スミソニアン Smithsonian」とは、場所の名前でもなければ、1つの美術館のことを指しているのでもありません。
特定の美術館や博物館、動物園など複数のミュージアムをアメリカが国として管理しており、その機関の名前が「Smithsonian Institution スミソニアン協会」。その中でも世界的に人気のあるミュージアムが集まっているのが、ワシントンD.C.きっての観光地「モール」にあります。(モール以外にも点在しています)
でも「モール」と一言で言ってもとても広大で、ワシントン記念塔、リンカーン記念館、国会議事堂、様々な戦争慰霊碑など、様々な見所があることから、ミュージアムが集合しているエリアの代名詞が「スミソニアン」なのです。
今回ご紹介する【ナショナル・ギャラリー National Gallery of Art】も、そんなスミソニアンに鎮座する、人気NO.3に入るメインの美術館なのですが、実は…
ナショナル・ギャラリーはスミソニアン協会に属していないんです!
「ナショナル・ギャラリー」すなわち「国立美術館」として由緒あるものの、スミソニアン協会とは異なる組織運営だからなんだそう。でも他のミュージアムと同じように入館料は「無料」!
素晴らしいコレクションがありながら「無料」
国立美術館として維持費は国から出ていますが、なんと!11万6,000点以上 あるコレクション全ては、アメリカ富豪者からの寄贈、もしくは寄付金で購入したものなんだそう!
収蔵品は13世紀から現代までの ヨーロッパの絵画や彫刻がメイン で、その質の高さは ルーブル美術館にも匹敵 すると言われるほど。
そんな素晴らしい作品がたくさん観賞できる美術館に、他のスミソニアン博物館や美術館と同じく、無料 で入れるなんて驚きです!
(寄贈によるナショナル・ギャラリーの誕生についてもっと詳しく知りたい方は記事末の「ナショナル・ギャラリーを産んだのは「メロン」さん」の段をご覧ください♪)
とにかく広いナショナル・ギャラリー!一番の見所は「西館」
ナショナル・ギャラリーには、西館・東館・彫刻庭園の3つのエリアがあります。
本館でもある 西館 は、ジェファーソン記念館もデザインしたホープさんによる建物で古典的。主に13〜19世紀のコレクションを観ることができます。
コレクションが本館に収容しきれなくなったことから、1978年に新しく建てられたのが 東館。ここでは、20世紀以降の現代美術や特別展示が観られます。建物自体も、西館のデザインとは異なり近代的。西館とは、地下コンコースで繋がっています。
彫刻庭園はその名の通り、モールの木々の合間に造られた “青空” 美術館です。小道を散歩しながら大きな彫刻を楽しめます。
もちろん東館も彫刻庭園も素晴らしいので、時間がた〜っぷりある方は2〜3日かけてじっくり周ると良いと思いますが、スミソニアンには他にも魅力的なミュージアムがいっぱい!旅行中に短時間でナショナル・ギャラリーの素晴らしさを感じたいのであれば、やっぱり 西館がオススメ!
今回は、その中でも見るべき作品のご紹介だけではなく、その作品の背景、画家の人生なども合わせてご紹介します。こういった事前知識が少しでもあると、絵画を見るのもより楽しくなると思います。
西館で押さえるべきフロアは【イタリア美術】
さすがアメリカ規模、西館だけでもかなり広いです。その中で一番人気があるのが【イタリア美術】。「イタリア国外であれば、最高のクオリティ」とまで言われるほどです。
レオナルド・ダ・ビンチの『Ginevra de' Bemch(ジネブラ・デ・ビンチの肖像)』
その中でも、上の写真、『モナ・リザ』で超有名な レオナルド・ダ・ビンチ の『Ginevra de' Bemch(ジネブラ・デ・ビンチの肖像)』は必見!
実は、レオナルドの作品はヨーロッパ以外には、この1点以外、無いんです。と言うのも、『モナ・リザ』で有名になりましたが、レオナルドの完成作品自体は20点ほどしかありません(素描はたくさんあるそうですが)。
この肖像のモデルであるジネブラは、レオナルドと家族ぐるみで仲が良かったそう。彼女には相思相愛の相手がいたそうですが、認めてもらえず、別の男性と結婚させられることに…この絵は、その結婚直前の姿なのだそう。なんとも言えない哀愁が漂っていますね…。
フェッティの『The Veil of Veronica(ベロニカのベール)』
イタリアでは、16世紀に入ると、宗教画や肖像画のほかにも新しい描写が流行ってきました。その中の作品でぜひ観ていただきたいのが、フェッティの『The Veil of Veronica(ベロニカのベール)』。(上写真の右にある小さな作品)
キリストが十字架を背負って処刑に向かう時、憐れんだベロニカという女性が自分のベールでキリストの汗を拭ったら、キリストの顔がベールに浮かんだ…と言う逸話の作品です。
エル・グレコの『Virgen con el Nino y las santas Martina e Ines(聖母子と聖マルティーナ、聖アグネス)』
この独特な構図と、イラストのような描写が特徴的な絵を描いた エル・グレコ は、ギリシャで生まれ、イタリアとスペインで活躍した画家。「エル・グレコ」は本名ではなく、イタリア語でギリシャ人という意味の「グレコ」に、スペイン語の男性冠詞「el エル」が付いた、いわば芸名です。
イタリア美術はこの他にも、レオナルド・ダ・ビンチと並んで “最期ルネサンス(15世紀ごろ)の三大巨匠” と呼ばれる ラファエロ や ミケランジェロ 、また『ヴィーナス誕生』で有名な ボッティチェリ の作品もあり、どれも見応えがあります。