地上40階を超える超高層ビル、ランチで行列ができるレストラン、 ユニークな建築デザインが目を引く各国の大使館。東京都港区の神谷町エリアには、こういった景色が広がります。周辺には首相官邸がある赤坂や、行政機関の庁舎が立ち並ぶ霞ヶ関があり、神谷町は首都・東京の役割を改めて実感するエリアでもあると言えます。ところが、そんな場所に天然の山があることを、皆さんはご存知でしょうか?愛宕山と呼ばれるその山は、緑豊かな姿を残し、江戸時代から多くの人に親しまれてきました。今回は、その山の魅力と見所を紹介します。
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愛宕山(あたごやま)は、どんなところ?
愛宕山は、東京23区内にある天然の山
東京都港区にある愛宕山は、東京タワーの近くにあり、神谷町駅から徒歩5分、虎ノ門駅から徒歩8分、御成門駅から徒歩10分の場所にあります。同区愛宕には1丁目と2丁目があり、愛宕山は町域内の広範囲を占めるように位置しています。
東京、特に23区内は高層ビルが立ち並ぶコンクリートジャングルのイメージが強くありますが、一方で「山」と名のつく名所がたくさんあることは、意外と知られていません。その中には、かつての山を切り崩してできた丘や、人工的に作られた築山、古墳などが含まれますが、愛宕山は天然の山であることが特徴です。
天然の山としては、東京23区内で最高峰を誇る愛宕山
愛宕山の標高は25.69mあり、天然の山としては東京23区内で最高峰を誇ります。新宿区の戸山公園には高さ44.6mの箱根山がありますが、こちらは築山でできた人工の山です。
江戸のころから、信仰と眺望スポットに!
今でこそ、近くにそびえ立つ地上40階超の高層ビルに見下ろされているような愛宕山ですが、かつては芝浦の海岸や海、深川(現在の江東区)、洲崎(現在の東陽町)まで広がる江戸の街や、海の上を行き来する小舟の姿を眺望することができる、人気の眺望スポットでもありました。
1603年、徳川家康が征夷大将軍に任命され、徳川時代とも呼ばれる江戸時代に。江戸に幕府を築く家康の命により、当時は桜田山と呼ばれていた愛宕山に愛宕神社が創建され、江戸の防火の神様が祀られました。それ以来、愛宕神社は、防火や防災、また勝利の神としても知られるようになったのです。
愛宕山の見所と魅力
山頂から見える素晴らしい景色や信仰で、多くの人に愛されてきた愛宕山。今では高層ビルが立ち、周辺では再開発も盛んに行われていますが、現在の愛宕山はどのような姿をしているのでしょうか?そして、どのような魅力が人々を引きつけているのでしょうか?
それでは、愛宕山の見所とその魅力をご紹介します。
愛宕隧道
隧道(ずいどう)とは、山をくりぬいて通した山岳トンネルのこと。愛宕山を掘り抜いて通されたこちらのトンネルは「愛宕隧道」と呼ばれており、東京23区内で唯一の山岳トンネルです。1930年に完成し、全長76.6m、幅9m、車道の幅は4mで、両脇には2.5mの歩道が通っています。
愛宕神社
1603年、徳川家康の命で建てられた愛宕神社。徳川家康は、信仰していた勝軍地蔵菩薩を勧請するとともに、江戸の防火の神様を祀りました。これが、後に防火や防災の他に、勝利の神としても知られるようになった所以です。
1,750坪の境内には神様を祀る社殿や末社があり、茶屋や池、木々がたたずむ、静かで緑豊かな場所です。
神社の入り口には大鳥居がありますが、これは世俗と神域の結界を意味しています。大鳥居の先には、傾斜40度で86段ある急な石段の「男坂」があり、社殿へと続いています。「出世の石段」とも呼ばれる有名なこの男坂ですが、その呼び名には江戸時代のある逸話が関係しています。
ある日、愛宕山の上に咲く梅を見た徳川家光が、この急な石段の男坂を馬で駆け上がり、梅の枝を取って来ることができる者がいるかどうかをたずねます。それを聞いた曲垣平九郎という家臣が見事に成し遂げ、彼の名は馬術の名人として広く知られるようになりました。この故事によって、男坂は「出世の階段」とも呼ばれるようになったのです。
男坂を間近に見ると、「馬に乗ってここを上り下りしたの?!」と信じがたい気持ちになりますが、現在までに3例の成功例が記録されています。
そのうち2例目となったのは、1925年11月8日、大日本帝国陸軍・参謀本部の馬丁であった岩木利夫が、廃馬が決まっていた愛馬・平形とともに挑戦してこれを達成。愛馬の引退の花道を飾ったのでした。
- 愛宕神社
- 浜松町・田町 / 神社 / パワースポット / 穴場観光スポット / 縁結びスポット
- 住所:東京都港区 愛宕1丁目5-3地図で見る
- 電話:03-3431-0327
- Web:http://www.atago-jinja.com/
萬年山 青松寺
青松寺(せいしょうじ)と呼ばれるこのお寺は、元々は麹町貝塚と呼ばれる、現在の国立劇場の辺りにありました。それが1600年、徳川家康によって外堀が作られる際に、現在の場所へ移されました。
山内には獅子窟という僧堂があり、そこでは多くの僧侶が修行を行いました。1875年には曹洞宗専門学本校が開校し、現在は僧侶の修行道場だけでなく、宗派を超えた勉強会を積極的に開催しています。定期的に行われている参禅会では、一般の方が坐禅や写経などに参加する場も提供しています。
- 萬年山 青松寺
- 浜松町・田町 / 寺
- 住所:東京都港区愛宕2丁目4番7号地図で見る
- 電話:03-3431-3514
- Web:http://seisyouji.p1.weblife.me/
NHK放送博物館
元々は、NHKの前身の1つである社団法人東京放送局(JOAK)として建てられたもので、1956年に放送博物館として開館しました。当時、建物内には展示室とNHK放送文化研究所がありましたが、2003年に展示室を全フロアに拡張してリニューアル。放送開始90周年を迎えた2016年には、記念事業としての展示リニューアルも行われました。
放送の歴史に関する資料は約27,000件あり、約8,000点の図書が所蔵されています。また、約10,000件の番組を視聴することができ、期間限定で行われる特別展も開催されています。
1925年に放送された日本初のラジオ放送は、この放送局から発信されました。そして、驚くことに、前項でご紹介した「馬丁・岩木利夫が、廃馬になる愛馬・平形とともに男坂を駆け上がることに成功し、引退の花道を飾った」という様子を中継したのも、この放送局。これが、日本で初めての生中継となりました。
- NHK放送博物館
- 浜松町・田町 / 雨の日観光 / 博物館
- 住所:東京都港区愛宕2丁目1−1地図で見る
- 電話:03-5400-6900
- Web:http://www.nhk.or.jp/museum/
おまけ - 自家製アイスクリーム・ソフトクリーム専門店「SOWA」
愛宕山を散策した後は、自家製の美味しいアイスクリームとコーヒーで休憩をとってはいかがでしょうか。
1955年に創業したアイスクリーム専門店「SOWA」は、自家製のアイスクリームを作る工場を併設し、今も創業当時の趣が残る店内でアイスクリームやソフトクリームをいただくことができるお店です。
冷凍庫の中に並ぶアイスクリームの中から、好きな味を選ぶことができます。季節限定メニューもありますので、是非こちらもチェックしてくださいね。
- アイスクリーム SOWA
- 浜松町・田町 / スイーツ / 食べ歩き / ソフトクリーム
- 住所:東京都港区虎ノ門3-19-9地図で見る
- 電話:03‐3434-5425
- Web:http://sowaice.jp/