ペルーのクスコはインカ帝国時代からの首都。だから、その周辺にはとてもたくさんの「インカ遺跡」があります。日本では「マチュピチュ」が有名ですが、クスコからもっと気軽に行ける【聖なる谷 Valle Sagrado】の遺跡にも行ってみませんか?
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インカ遺跡はとってもミステリー
ペルーを中心にたくさん見られる インカ遺跡 とは、【インカ帝国】時代の建造物などのことを言います。いつからインカ帝国が始まったのかという定義はありませんが、12世紀ごろに クスコ を中心とした小さな都市国家が興ったのが始まりで、やがて周囲の王国を領地に取り込み、インカ帝国となったとされています。
スペイン人に滅ぼされたのは16世紀なので、ざっくり計算しても約300年は続いた帝国なのですが、インカ遺跡には、とにかく謎が多い!
例えば、ほんの一例ですが、聖なる場所に多く見られる 3段の岩(写真左)、この3段は何を意味しているのか? また「剃刀一枚通らない造り」で有名なインカの 石組み(写真右)は、どのようにして組み上げられたのか?
現地ガイドさんに聞いても、人によって言うことがまちまち。諸説あっても、どれも結局は謎にぶつかってしまうんです。
なぜ謎ばかり?? その2つの理由
なぜ謎が多いのか?その理由の1つが、インカ帝国は 文字を持たないアンデス文明 だったこと。壁画や岩に絵が彫ってあるということもありません。(ところが2017年、紐に結び目をつけた キープ と呼ばれるものが文字の代わりになっていたことが分かり、多くの考古学者が解読に挑んでいます。)
2つ目の理由は、侵略してきたスペイン人。神殿や宮殿を徹底的に破壊し、金銀財宝を略奪、インカの人たちが築いてきた “礎石” の上に、新しい建物を建てていきました。
特にインカ帝国時代からの首都であったクスコには、もっとインカを知る何かが、スペイン人の建造物の地下に眠っているかもしれない!と考えられているそうですが、今やクスコ市街地は世界遺産。まさか、その建造物を壊して地下を探るわけにはいきません。
だから【インカ帝国】はいまだに分からないことがいっぱい!謎に包まれているから、様々な人を魅了するのですね。
今回ご紹介する【聖なる谷】にも多くの謎を残す、立派な遺跡がたくさんあります。
自然と遺跡の融合!美しい景観を抱く【聖なる谷】
クスコの北には【ウルバンバ川 Río Urubamba】が流れている谷があり、ここにはたくさんのインカ遺跡が点在していることから【聖なる谷 Valle Sagrado】と呼ばれています。また、クスコ周辺では “最も素晴らしいアンデス山脈の景色を見ることができる谷” としても有名で、遺跡観光はもちろん様々なレクリエーションもあります。
この川の下流へ行くと、かの有名な マチュピチュ があるわけですが、クスコからマチュピチュに行くには列車で4時間。でも【聖なる谷】であれば、車やバスでクスコから1時間〜2時間で行くことができます。
その中でも「聖なる谷を代表する3遺跡」と言われる3つの遺跡【オリャンタイタンボ】【ピサック】【チンチェロ】をご紹介します。
1. 要塞の役割を果たした【オリャンタイタンボ Ollantaytambo】
聖なる谷にあるたくさんの遺跡の中でも、最も物々しい雰囲気のあるインカ遺跡が【オリャンタイタンボ Ollantaytambo】。スペインの侵略に追われたインカ帝国の人たちが築いた “要塞” と言われています。クスコから車やマチュピチュ列車で2時間ほどで行くことができます。
遺跡に到着するとまず目の当たりにするのは、相当の高さのある段々畑。下から見上げるだけではもったいない!ぜひ登ってみましょう。
頂上には 防御壁 と思われる巨大な壁が鎮座!大きさは 高さ10m × 横5m × 奥行き1m と圧巻です。しかもこの壁、石を積み上げたのではなく、高さ10mの1枚の岩が インカの石組み の技術によって見事に横に繋ぎ合わされているのです。
筆者のカメラでは4枚しか写らなかったのですが、実際は 6枚! こんな高所で、こんな巨大な岩をどうやって切り出し運んだのか、どうやって組んだのか…未だに謎のままです。
また、この岩壁の奥には、聖なる場所には必ずある泉 が今でも湧き出ており、ここには「太陽神殿」があったと言われています。しかし、スペイン人に全て略奪されたため、太陽神殿は原形を留めていません。
難しい話はさておき、頂上はかなりの高さがあるので、オリャンタイタンボ村が見下ろせるだけではなく、アンデス山脈のど真ん中【聖なる谷】の素晴らしい光景を目にすることもできますヨ!
ただし、標高3,400mのクスコほどではありませんが、ここでも標高2,700mはありますので、高山病にならないよう休みながら登ってくださいね。
- オリャンタイタンボ遺跡
- ペルー / 遺跡・史跡
- 住所:Sitio Arqueológico de Ollantaytambo地図で見る
2. インカ帝国時代から続く市場も楽しもう!【ピサック Pisac】
【聖なる谷】の見どころ2つ目は 【ピサック Pisac】です。クスコからとてもアクセスが良く、車で1時間ほどです。
クスコからまっすぐ行く場合、道中のちょっとした高台から【ピサック】を眺めることができます。平地に集落があり、そのすぐ裏には山がそびえ立つ、なんともアンデス山脈の田舎らしい光景です。
マチュピチュに勝るとも劣らない【ピサック遺跡】
山の中腹に見える横の縞模様は 段々畑 。遠目からもこんなに綺麗に見えるのは驚きです。この段々畑は「ピサック遺跡」の1つで、山頂には「マチュピチュに勝るとも劣らない」とか「ミニ・マチュピチュだ」と言われる遺跡があります。
それが、この 日時計 のある 「インティ・ワタナ Inti Watana」。確かにどことなく マチュピチュ に似ています。ここには 太陽神殿 の他に 天体観測所 もあります。
【ピサック市場】は大賑わい!
さて、【ピサック】では遺跡観光はもちろんですが、この村でぜひとも楽しんでいただきたいのが、ピサック市場 !!火曜、木曜、日曜に開かれています。
なんとこの市場、インカ帝国の時代から続いているんだとか! 当時は農作物などを物々交換して賑わっていたそうですが、今では観光客も多く訪れるので民芸品も豊富にあります。
見たこともないような野菜や果物がずらり!お肉をその場で捌いて売っている屋台もあり、散策するだけでも楽しめます。
特に、トウモロコシの種類は豊富!インカ帝国時代では、あの段々畑で良質なトウモロコシを栽培していたんだとか。
市場を歩いていると、あちこちでジャイアントコーンが蒸されているのを見かけます。このトウモロコシは「Choclo チョクロ」と言い、3ソル(約100円)ほどで買ってすぐに食べることができます。添えてくれる チーズ の塩気と、チョクロの甘みが絶妙!市場散策のお供にぜひ♪
3. 王室農園のあったのどかな山村【チンチェーロ Chinchero】
【聖なる谷】の3つの見どころとして最後にご紹介するのは【チンチェーロ Chinchero】。クスコからは車で40分ほどで、ここもアクセス便利!
先にご紹介した【オリャンタイタンボ】や【ピサック】に近いのですが、【チンチェーロ】はちょっと雰囲気が異なります。
まずは、この白い建物。明らかに村の民家や周囲の遺跡とは異なるので「スペイン人が立てたのだな」と、すぐに分かります。
ここには【オリャンタイタンボ】や【ピサック】にもあった「太陽神殿」が建てられていたそうですが、スペイン人により破壊され、その礎石の上にキリスト教会を建てたんだそう。
もう1つ雰囲気が違うと感じるのは「インカの石組み」。なんとなく野暮ったい…確かにびっちり組まれていることには変わりないのですが、表面の磨きなど含めて洗練されていないような仕上がりです。
それが何故なのかは謎ですが、【チンチェーロ】はインカ帝国の 王室農園 があったことに関係があるかもしれません。今でも周囲にはのどかな田園風景が見られます。
上記の遺跡の目の前には、何かの催し物をしていたのだろうと言われるとても広大な広場があるのですが、そこからのアンデス山脈の眺めがまた素晴らしい!空に手が届きそうな感じです。
というのも、ここはクスコの標高3,400mに対し、さらに高い 標高3,700m !富士山の頂上に匹敵します。高山病にならないよう、クスコで少し体を慣らしてから訪れるのをオススメします。