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木桶仕込で発酵にこだわる蔵元ヤマロク醤油【香川】

取材・写真・文:

福島在住
訪問エリア:30都道府県

2025年9月22日更新

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写真:Olive

ヤマロク醤油は小豆島の東側で古くから醤油の蔵元を営んでいます。現在では、全国でも少なくなってきた全樽木桶仕込みにこだわった醤油造りをしています。こだわるあまりに、木桶造りにまで手を染めたヤマロク醤油をご紹介します。

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ヤマロク醤油の歴史

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ヤマロク醤油があるのは小豆島の東側、内海湾から寒霞渓(かんかけい)に向かう山の麓に位置しています。車1台がやっと通れる細い路地を進んだ町の奥にあります。小豆島の気候は地中海性気候に似た、温暖小雨の瀬戸内海式気候。

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そんな醤油造りに適した気候からか、明治の最盛期には、小豆島内だけで400軒もの醤油メーカーがありましたが、今では20軒ほどになりました。ヤマロク醤油の創業は、はっきりとした記録は残っていないそうですが、始まりは塩造り、その後、醤油を絞る前のもろみ屋を営み、昭和24年からは正式に醤油店となり、現在では5代目が当主となっています。

発酵調味料の美味しさの秘密

  • 写真:Olive

ヤマロク醤油で作られる醤油は、すべて木桶仕込みです。約3,000~6,000リットル(16~32石)の杉の木で作られた木桶を使用しています。木桶での醤油造りは温度管理が難しく、手間と時間がかかると言われています。加えて新しい木桶を造るのに1樽およそ500万円、その樽を保管する蔵の土壁の補修費や機械の修繕費と莫大な費用もかかるのです。それでも木桶仕込みにこだわる訳は、木桶仕込みの本物の醤油を未来に残し伝えたいという、醤油の美味しさを追求するが故なのでした。

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醤油は、大豆を蒸し、発酵熟成させて作る発酵調味料です。その他、みりんや酢、味噌などの発酵調味料は、乳酸菌や酵母菌などの微生物によって成長し生きている調味料。安価で汎用性の高いプラスチックのタンクに微生物はほとんど育たないそうです。微生物の成長と美味しさを追求するためには、木桶が重要な働きをするのです。

  • 写真:Olive

ヤマロク醤油のもろみ蔵は、木造平屋で床は土間、壁は土壁、中に入るとひんやりとした空気の中で醤油の香りに包まれます。蔵は100年以上前(明治初期)に建てられ、国の登録有形文化財に指定されている貴重な建物です。蔵いっぱいに並んだ樽の製造年数は100年前のものから10年前のものまでと様々ですが、ひときわ目を引くのが、今にも崩れそうなくらいボロボロに見える杉桶です。腐っているわけではなく、この中にも大切な菌たちが暮らしているのだそうです。樽にはもちろん、梁や土壁など、土間の中には100種類という酵母菌や乳酸菌たちが暮らしているのだそうです。

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この菌たちは、お金では決して買うことのできない貴重なものだから、風化して崩れた土壁を補修するときには、新しい土壁と練り直して元の場所に戻されるのだそう。蔵の中を見渡すと、樽を補修し、土壁や階段を大事に補修しながら、100年以上続いている環境をさらに生き続けさせようとする思いが伝わってきます。

木桶仕込みへの熱いこだわり

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現在、木桶を使った天然醸造による醤油や味噌の生産量は、全体の1%以下となっているのだそうです。需要と供給のバランスもあるのでしょう。醸造用の木桶を製造する桶屋さんも、2009年当時で1社のみだったそうです。

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一般的に木桶の寿命は100~150年くらいですから、木桶の寿命と共に廃業したり、プラスチック製のタンクに移行したりという時代の流れもあります。そこでヤマロク醬油の5代目は、2011年の秋に「木桶職人復活プロジェクト」を発足し、小豆島の同級生の大工さんたちと共に、最後の桶屋さんに弟子入りしたと言うのですから驚きです。

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試行錯誤しながら2年後には、新しい樽が完成します。その後、毎年1月には小豆島のヤマロク醤油で新桶づくりが行われています。そこには、全国の木桶仕込みの商品に携わるメーカーや飲食店、流通関係者が集まるそうです。このままでは、日本で受け継がれてきた技術が失われてしまう。発酵文化や本物の日本食の基礎調味料が衰退してしまう。ならば自分たちで造ろうじゃないか。そんな熱い情熱と行動力、蔵元としての使命感が伝わってきて感動してしまいます。

予約なし・案内無料の見学体験

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ヤマロク醬油では、案内無料で天然もろみ蔵の見学体験ができます。予約も不要なので、気軽に訪れることができます。ゆっくりと育まれる昔ながらの醤油造りの様子や、自然の力がつくり出す醤油の仕組みを肌で感じ取ることができます。

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ヤマロクさんのお醤油は鶴醤(つるびしお)と呼ばれる再仕込み醤油が有名です。2年仕込んだお醤油を絞った後、醤油麹を混ぜてさらに2年熟成させ、4年もの歳月をかけたお醤油です。見学後は、様々な醤油を味見させていただき、購入もできます。

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軒先には、「やまろく茶屋」があり、一休みすることも可能です。こちらでは、しょうゆプリン(週末限定)や焼き餅(期間限定)なども頂けます。

蔵元見学時の注意点

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ヤマロク醬油に限らずのお話ですが、蔵元を見学する際には一つお約束があります。蔵に住んでいる酵母菌や乳酸菌たちが納豆菌に負けてしまうので、見学前には納豆は食べないこと。元々、もろみを育てる酵母菌や乳酸菌は、熱や乾燥、塩分に強く、他の菌が死滅する環境の中でも生き抜いてきた、とても強い菌たちですが、納豆菌にだけは負けてしまうのだそう。納豆菌おそるべしですね。

ヤマロク醬油
小豆島
住所:香川県小豆郡小豆島町安田甲1607地図で見る
電話:0879-82-0666
Web:https://yama-roku.net/

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日帰りドライブから、国内、海外を問わずお出かけするのが大好きです。ずっとタウン重視でお買い物に夢中の旅でしたが、10年ほど前にアメリカ・サンフランシスコに在住。国立公園めぐりをしたことをきっかけに、自然も大好きになりました。少し歴史を知ってから出かけると楽しいこと、美味しい食べ物や綺麗な風景に出会えると幸せなこと。小さな情報が、誰かの楽しい!や嬉しい!につながったらいいなと思っています。これからも、いろんなところへ出かけて、たくさんの情報を発信してゆきたいと思っています。少しでも参考になれますように!

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