欧州有数の美しい湖や高原のあるスロベニアですが、ネイチャーを楽しみたいツーリストにとって、更に外すことができないスポットは鍾乳洞でしょう。スロベニアは、欧州いちといって良い鍾乳洞大国。確認されているだけでも大小1万以上の洞窟があるといいます。その数の多さは、ドライブ中あまりに頻繁に鍾乳洞のマークが出てくるので驚かされるほど。今回紹介するのは、数ある中で最も観光客を惹きつけている、ポストイナ鍾乳洞。同じくスロベニアで有名な「シュコツィアン洞窟群」との違いもご紹介していきます。
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スロベニアに鍾乳洞が多い理由
鍾乳洞の元は石灰岩。これが何万年もの歳月のうちに地下水などによってゆっくりと溶かされ、洞窟になります。
スロベニアは、「カルスト台地」といって、国土のゆうに半分が石灰岩で覆われていました。
写真はポストイナ鍾乳洞付近にあるお城ですが、周囲にはこのような洞窟が散見されます。
ポストイナ鍾乳洞って?
1万をくだらないと言われるスロベニアの鍾乳洞の中で、最も有名なのがポストイナ鍾乳洞です。約24キロの長さは、欧州では他にほぼ類を見ません。現在、観光客に開放されているのはそのうち約5キロです。
スロベニアの首都・リュブリャナから南西の方角に50キロほどの場所にあり、1時間ほど高速道路をドライブすると簡単に到着してしまうので、旅程に組み込むのにも便利。
有数の観光名所ですので、バスまたは電車での足もあります。
新しい経験。トロッコ列車で鍾乳洞内を走ろう!
観光は、なんと、トロッコ列車に乗って3キロあまりを走るところから始まります。
- 出典:commons.wikimedia.orgDonald Judge (Creative Commons Attribution 2.0)
列車の起源は1872年に遡るといいます。実はスロベニアは、おそらく世界で初めて鍾乳洞を観光資源として活用した国。
1819年にハプスブルク家の当時の皇帝を案内したのを皮切りに、ポストイナは150年に渡る観光史上の中で、既に4千万人近くの観光客を迎えて来ました。
- 出典:commons.wikimedia.orgCristian Raifura (Creative Commons CC-BY-SA-3.0)
列車に乗車する5分間はあっという間。
屋根がついておらず、速度が肌で感じられます。その上、鍾乳洞との天井ぎりぎりの空間を走ったり時々ヒヤッとさせられるので、ちょっとした遊園地のアトラクションのようです。
同乗している世界各国から集まってきた子供たちの、歓声といったらありません!
名前のある鍾乳洞も。形も色も楽しみたい
列車を降りたら、ガイドさんの説明を聞いた後、徒歩で2キロ弱の道のりを歩きます。簡単なハイキングコースは、小学生なら簡単に歩けてしまいそう。
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鍾乳洞のなかでも特徴的なものや珍しいものには、その形状などにちなんで「スパゲッティ」、「カーテン」、「ザ・ジャイアント」など名前がつけられているので、ゆっくり観察してみて。
中には写真のように立派なものもあります。
1センチを形作るのに、何十年という時間が必要という鍾乳洞。みなさんもきっとこれを目の当たりにすれば、これまで地球が歩んできた悠久の歳月に思いをはせずにいられないでしょう。
- 出典:maxpixel.freegreatpicture.com(Creative Commons Zero)
高さ40メートル、その広々とした形から「コンサート・ホール」と名付けられた空間も。ここは音響効果も抜群で、約千人の観客を収容し、実際にコンサートとして使用されることもあるそう。
- 出典:commons.wikimedia.orgJános Korom Dr. (Creative Commons Attribution-Share Alike 2.0)
洞窟出口には、トイレや売店もあります。グッズがたくさん売られているのは、洞窟のマスコットとして子供たちのアイドルになっている、ピンク色のドラゴンの赤ちゃん。
実は洞窟内に棲息している、珍種のイモリの一種をモデルにしたものだそう。目が無く、何も食べずに1年近くも生きられるといいます。
- 出典:pl.m.wikipedia.orgLander z słoweńskiej Wikipedii (Creative Commons BY-SA 3.0)
このイモリに限らず、一見生物にとって不毛な場所にみえる洞窟内に、実は数多くの動物が棲息しているとのこと。生物多様性の観点からも非常に興味深いと思いませんか。
シュコツィアン洞窟群との比較
スロベニアには、ポストイナ鍾乳洞と並び称される「シュコツィアン」という非常に素晴らしい洞窟もあります。
UNESCOの世界遺産としても登録されているシュコツィアンは、写真のとおり入口から人を寄せ付けない厳かな雰囲気がただよいます。
- 出典:upload.wikimedia.orgTiia Monto (Creative Commons BY-SA 3.0)
地底から高さ45メートルのところにかけられた吊り橋を渡れば、足元からは、地底渓谷を切り裂いて川が流れる音が響き渡ります。
- 出典:commons.wikimedia.orgTravelingOtter (Creative Commons Attribution-Share Alike 2.0)
自然の神秘とダイナミズムを感じたいなら、ポストイナよりむしろシュコツィアンのほうがお勧めかもしれません。人を寄せ付けんがばかりのその雰囲気に、自然に対する畏敬を感じずに去ることは難しいでしょう。
確かに、ポストイナは観光地化が行き過ぎており、世界遺産に登録されなかったのもそのせいだ、と酷評されることもあります。
- 出典:commons.wikimedia.orgPeretz Partensky (Creative Commons Attribution-Share Alike 2.0)
一方で、ポストイナの魅力は、老若男女があくまで手軽に自然の芸術作品を楽しめるというところ。例えば、シュコツィアン鍾乳洞内は、前述の吊り橋などもあるほか、必ずしも道が平坦とは言えません。
メインの観光場所まで誰でも心配なくいけるポストイナは、家族連れやお年寄りにはありがたいはずです。
- 出典:commons.wikimedia.orgJabbi (Public Domain)
注意事項~楽しい旅のために~
1.ツアーに申し込もう
洞窟内の個人観光は禁止されており、集団ツアーに参加することが義務付けられています。ツアーは時間指定があり、例えばポストイナでは春夏のオンシーズンは9時から18時まで毎正時、オフシーズンは2時間に一度となっています。
シュコツィアンでも同様の制限があり、更に観光コースによってはオフシーズンはツアーが一切開催されない場合もありますので、旅行を計画する際には、最新の情報をお目当ての鍾乳洞のウェブサイトなどで確認しておきましょう。
ツアーは言語別になっていますが、日本語がありません。その代わり、オーディオガイドでは日本語もある場合があるので、必要ならチケット売り場で聞いてみて。
また、オンシーズンはチケット売り場で行列ができることも。ツアーに遅れないよう、余裕を持ってでかけるといいでしょう。
2.上着は必需品
洞窟内の平均気温は、ポストイナが8~10度、シュコツィアンが12~14度。夏に訪れた場合には、だいぶひんやりと感じるでしょう。
内部は風がなく湿度も高いので、気温から想像するより実際には温かく感じられるかもしれませんが、上着は必需品です。ポストイナでは上着のレンタルもしているようでした。
夏に訪れた筆者の場合は、ウィンドブレーカーやパーカーを着用して十分でした。
3.写真撮影は禁止
洞窟内の写真撮影は、例外もありますが原則として禁止されています。薄暗い洞窟内ではフラッシュを使うことになりますが、それが鍾乳洞を傷つけてしまうからです。
筆者が観光した際には、国籍を問わず多くの観光客が規則を守っていなかったので、個人的にとても悲しい思いをしました。
鍾乳洞は、何万年、何十万年もの歳月をかけてつくられた、まさに地球による芸術作品。壊さないよう細心の注意をしながら、皆さんが楽しく観光されることを祈っています!
- ポストイナ鍾乳洞
- スロベニア / 自然・景勝地
- 住所:amska cesta 28, 6230 Postojna,slovenia地図で見る
- 電話:+386 5 700 01 00
- Web:http://www.postojnska-jama.eu/en/home/
- シュコツィアン洞窟群
- スロベニア / 自然・景勝地 / 観光名所
- 住所:Matavun 12, Divača,Slovenia地図で見る