イギリスの人々に避暑地として大人気の英国王室属領マン島。自治権を持つ英国本土周辺に浮かぶ島の一つで、英国貴族スタンリー家を中心に複数の国の統治下で揺れつつ、独特の文化を築いてきました。世界一危険なオートバイ競技「TTレース」開催地であり、きかんしゃトーマスの舞台であるソドー島のモデルとしても知られ、今でも蒸気機関車をはじめとする保存鉄道の旅を楽しめます。今回は美しい沿岸線を誇る首都ダグラスを中心に、古城・水平線が見事な港・巨大水車がある炭鉱跡など、マン島の見どころを鉄道でめぐる旅をご紹介します。
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TTレースだけじゃない! マン島に秘められた魅力
マン島は人口約9万人、面積572.39平方キロ(淡路島くらい)の小さな島。租税回避地としても有名で、観光と金融を主な産業として景気拡大が比較的長く続いており、旅行者だけでなく世界中の企業からも注目を集めています。
夏以外も美しいですが、寒くて日が短いので、サマータイムで日が長く暖かい6月~8月頃に行くのがベスト。
また非常に美しい風景を活かし、映画産業にも力を入れています。イギリスの詩人ジョン・ウィルモット伯爵の映画(ジョニー・デップ主演)『リバティーン』や、ピーターラビットの作者ビアトリクス・ポターの映画『ミス・ポター』など、さまざまな映画やドラマの撮影地にもなっています。
マンクス猫(マン島発祥の尻尾のない猫)の故郷でもあり、猫の聖域であるアニマルシェルター(サントン)があることでも有名です。
- マン・キャット・サンクチュアリ
- イギリス / その他スポット
- 住所:Main Road Santon Isle of Man IM4 1EE地図で見る
- 電話:01624 824195
- Web:http://manncat.com/
赤薔薇ランカスターの港からフェリーでマン島へ!
マン島へはロンドンから飛行機に乗って1時間半で行けますが、ランカスターの近くにあるヘイシャムの港からマン島の首都ダグラスへ、きれいな海を眺めながらのフェリー旅もお得でおすすめです。
車・モーターサイクル・自転車で島を訪れる人も多く、TTレースの時期は特に、フェリー内はレースに参加するライダー達であふれます。彼らに話を聞くのも旅の楽しみの一つ。
ヘイシャム⇒ダグラスのフェリーは基本的に午前と午後の二便。所要時間は3時間半。午後出発なら、時間まで歴史あるランカスターの城下町を観光するのも面白いです。チケットは日本語での予約も可能。
- ヘイシャム・ハーバー
- イギリス
- 住所:North Quay, Heysham Harbour地図で見る
着くまでの景色も美しい! 海上の世界最大風力発電所とアイリッシュ海
フェリーでヘイシャムを出発し見えてくるのは、世界最大規模の洋上風力発電施設「ウォルニー・ウインド・ファーム」。
2012年2月より稼働を始めた海上の風力発電所で、同じ地域に多数の風力発電機を設置することにより、インフラ整備と建設コストダウンはもちろんのこと、バラつきのある風を面で受けることで、安定した発電量を確保しています。
現在は更なる規模拡大を目指す新プロジェクトを展開中。2015年に三菱重工系の合弁会社MHIヴェスタスが、世界最大出力の風力発電設備を受注し、話題になりました。
2017年増設開始予定で、完成後の規模は今の三倍になる予定。人口物と雄大な自然が合わさり、延々と連なる不思議な景色は見応えがあります。
ウィンド・ファームを過ぎると、一面に広がるのは広大なアイリッシュ海の水平線。気持ちの良い海風と日の光を全身に浴びながら、なにひとつ隔てるものなくどこまでも真っ青な海と空を眺めるのは、とても贅沢な時間です。
ダイナミックな海岸線が魅力的! 観光者用ホテル郡と交通の要の首都「ダグラス」
ダグラスの港(シー・ターミナル)では、セント・メアリーズ・アイルのリヒュージ塔が出迎えてくれます。
かわいらしい塔は、王立救命艇協会の創設者ウィリアム・ヒラリー卿がコニスター岩に座礁したセント・ジョージ号を救出した経験を元に、難破した船の乗組員に避難所を提供する目的で1832年に建てられました。満潮で岩が隠れる時も、海上に出た塔が岩の位置を知らせてくれる歴史的建造物です。
シー・ターミナルや空港などの観光案内所では、ほとんどのバスや保存鉄道で使えるゴー・カードを売っているので、持っておくと便利です。観光者用のGo exploreを滞在日数に合わせて買えば、その間はチャージも必要なく乗り放題でとってもお得。*冬は保存鉄道が運行していないのでご注意ください。
- マン島・シーターミナル
- イギリス / 駅・空港・ターミナル
- 住所:Douglas IM1 2BY地図で見る
馬車鉄道がお出迎え! シー・ターミナル⇔マンクス電気鉄道の駅を繋ぐ海岸線のプロムナード
シー・ターミナルを出るとすぐに、馬車鉄道の停留所があります。運行間隔は15分~30分。始点終点以外の停留所では、手を挙げてサインを送ることで乗れます。
1876年から運行が始まり、2016年現在で140年続いてきましたが、慢性的な赤字でついに一部の客車もオークションにかけられ、2018年以降の運行が継続されるのか現時点では定かではありません。乗るなら今のうち!
ダグラスの海岸線は2マイル(3.2km)の美しいビーチで、遊歩道沿いにはホテル・カフェレストラン・パブなどがずらりと並んでいます。この中のどのホテルに泊まっても海岸までは歩いて1分です。
軽快な蹄の音と開放的な景色を楽しみながら35分、山道へと続くマンクス電気鉄道の始点があるダービー・キャッスル駅に到着します。
まずは北部の港町ラムジーまで 綺麗な海と山を存分に堪能できる愛らしいマンクス電気鉄道で!
ダグラス⇔ラムジーの北部17.5マイル(28.1km)を1時間15分で繋ぐマンクス電気鉄道は、1893年に開業し、同年より使われている車両は世界最古の現役列車として有名です。
レーン・コーンから岬のシーライオン・ロックスまでを走るグラウドル・グレン鉄道の駅も、巨大水車で有名な炭鉱跡のラクシーも、ラクシー内にあるマン島最高所行きスネーフェル登山鉄道の駅も道中にあります。
趣のある美しい車両内から海沿いを眺め、いざ次の目的地ラクシーへ。
マン島の文化遺産! 世界最大の水車がある炭鉱跡「ラクシー」で途中下車
ラクシー駅から町を通り、少し坂を登って徒歩7分。赤・黒・白のコントラストとマン島の三脚巴が象徴的な巨大水車「ラクシー・ホイール」が見えてきます。
鉱山で採掘された鉱石を水力で運搬するため、1854年に造られたラクシーの巨大水車。
1929年に鉱山が閉鎖された後、政府によって買い上げられました。1989年に産業遺産に定められてから修復作業が行われ、現在も動いています。直径72フィート(22m)、円周227フィート(69m)で、1分間に250英ガロン(1,136L)の水を供給します。
当時の副総督であったチャールズ・ホープ氏の妻イザベラ夫人の名をとって、レディ・イザベラという愛称で親しまれています。水車の上部に登ると、上から水車の動きを観察したり、マン島の景色を眺めることもできます。
周辺地域からの水は車輪上部の上にある水槽に集められ、水はパイプからバケットに落ち、車輪を回転させます。
水車の横には炭鉱跡が保存されており、中に入って見学することができます。夏の暑い時期でも中は薄暗くひんやりと肌寒くて、当時の労働環境の厳しさがうかがえます。
穏やかな沿岸の町と海岸を散歩しながらリフレッシュ! 印象的なボート公園のある終点「ラムジー」
マンクス電気鉄道の北端である港町ラムジーは、ダグラスの次に大きい町。毎年TTレースが開催されるほか、スネーフェルマウンテンコースの入口でもあります。
山道に続くラムジー・ヘアピンや、コーナーにパブがあるパーラメント・スクエアはTTレースの人気観戦スポット。そんな熱気と相反して、散歩に最適なビーチには穏やかで美しい景色が広がっています。
ラムジーには、有名なボート湖を有する19世紀の公園「ムーア・パーク」があります。元々は塩沼の一部でしたが、旅行者を積極的に呼び込もうという試みから、町が購入し、開発が行われました。
小さなウォーターパークや、湖の風景を眺めながらゆっくりできるカフェ、子供の遊び場などがあり、幅広い層が訪れる施設となっています。
他にも、1847年9月20日アルバート王子の訪問を記念して建立されたアルバート・タワーや、1886年に建設された鉄製の桟橋であるクイーンズ・ピア、ヴィクトリア朝時代の夏の静養所を保存したグローブ博物館ヴィクトリアン・ライフなどを訪れるのもおすすめです。