今から1,200年以上も前に、弘法大師空海が修禅道場として開いた日本仏教の聖地、高野山。緑深い山々を越えていくと、標高約800mの平坦な地に突如して町が現れ、まさに俗界から切り離された宗教都市にやってきたのだと神聖な心持ちになります。世界遺産としても知られ、海外からの観光客も多くたくさんの見どころがありますが、ここでは聖地にふさわしい「身も心も清め、元気がもらえる」スポットと過ごし方をご紹介します。
この記事の目次表示
修行僧の気分で、宿坊に泊まってみる
宿坊とは、いわば「宿泊施設を整えたお寺」。かつては高野山を訪れる修行僧や信者など利用者が限定されていましたが、現在はお参りする人や観光客に広く開かれています。高野山にはこうした宿坊が現在52ケ寺あり、庭園や客室、お風呂、精進料理などそれぞれに特色を備えています。
一般の旅館と大きく違うのは、作務衣を着た修行僧がおもてなしをしてくれるところ。せっかくなら、仏さまの世界を身近に感じられる宿坊に泊まって、非日常体験をしてみましょう。
静かに自分と向き合う写経に挑戦
宿坊に泊まったなら、ぜひ挑戦してみて欲しいのが写経。読んで字のごとく、写経とはお経を書き写すこと。お釈迦様の教えであるお経は、古くは口伝えで広められていましたが、後世の人に正しく伝えるために写経が広まり、次第に修行の方法としても一般化していったのだそうです。
難しい漢字が並んだ般若心経を丁寧に書き写すとなると、普段書道に慣れていない私たちには1〜2時間はかかりますが、ひたすら書き写しているうちに、いつの間にか無の境地になっているから不思議。
筆などの道具は各宿坊で準備され、半紙の下にお手本を置いて写すのが一般的なので取り組みやすく、気軽に体験してみることができます(多くの宿坊は事前予約が必要)。完成した書は仏前に奉納していただけますが、記念に持ち帰ってもOK。
筆をとるのは小学校以来?という人も、墨の匂いに身も心も洗われ、写し終える頃には清々しい気持ちになれるはずです。
想像以上の精進料理に大満足
僧侶にとって、食事も日々の暮らしの中でおこなう修行の一部。仏教の戒律のもと殺生や煩悩への刺激を避けるため、肉や魚は一切使わず、ニンニクやニラ、タマネギなど臭いのきつい野菜も避けて創意工夫を重ねてきたという精進料理は、今や高野山グルメと言われるほどの人気。
各宿坊では旬の食材を使った精進料理がいただけ、季節ごとに多彩な味が楽しめます。お酒やビールは般若湯(はんにゃとう)と呼ばれ、自由に飲めるのもうれしい限り。多くの宿坊では、修行僧たちがお膳を運んでくれるのでお部屋でゆっくり食事できますよ。
1日のはじまり、朝の勤行はハズせない
宿坊では毎朝、仏さまの前で読経や礼拝のお勤めをする勤行が行われます。早朝6時か6時半には始まるところが多く、決して強制ではないのですが、せっかく宿坊に泊まったのですから特典とも言える朝勤行はできる限り参加しましょう。
宗派によって勤行の内容は異なりますが、お経を歌のように節をつけて唱える荘厳な声明(しょうみょう)に聞き入ったり、教本を見ながら僧侶たちと一緒に般若心経を唱えたり。宿坊でしか味わえない貴重なひとときになるはずです。
清らかな香りを旅のお土産に
宿坊の福智院ではオリジナルのお線香も販売されていて、心身を浄化する旅のお土産にぴったり。自分で使うのはもちろん、仏事やお墓まいりなど用途も幅広いので、年齢性別問わず喜ばれそうです。
- 高野山温泉 福智院
- 高野町(伊都郡) / 宿坊
- 料金(目安):14,960円〜27,000円
- 宿泊時間:15:00〜09:00
- 住所:和歌山県伊都郡高野町高野山657地図で見る
- 電話:0736-56-2021
- Web:http://fukuchiin.com/
密教の瞑想法、阿字観をプチ体験
阿字観(あじかん)とは、座禅に似た瞑想法の一種。真言宗独特のもので、姿勢や作法に厳しい座禅とは異なり、自然で楽な姿勢で座ればいいので初心者でも気軽にトライすることができます。
阿字観の「阿」はサンスクリット語で「すべてのはじまり」を意味し、密教の世界の中心となる仏さま、大日如来を表しているのだそう。その「阿」の字をイメージすることで仏さまと自分自身がつながり、宇宙との一体感を感じるのがこの瞑想の目的。難しいように思いますが、やってみると心身ともにリラックスでき、自分を解放する気持ちよさを味わえます。
阿字観体験を行っている宿坊もありますが、総本山金剛峯寺の中の阿字観道場で週4日、1日4回開催されており、先着順で予約も不要なのでおすすめです。(2017.7.31現在)
- 金剛峯寺
- 高野町(伊都郡) / 寺 / 観光名所 / 世界遺産 / 紅葉
- 住所:和歌山県伊都郡高野町高野山132地図で見る
- 電話:0736-56-2011
- Web:https://www.koyasan.or.jp/
奥之院を散策しながら、森林セラピー
宿坊ですっきり目覚めたら、いよいよ弘法大師空海が今もなお静かに瞑想していると言われる御廟にお参りしましょう。
御廟へと続く奥之院の参道は、高野山の中でも特別な場所。一歩足を踏み入れると周りを取り巻く空気がひんやりとして、奥へと進むほどに神聖さが増していくよう。参道の両脇には、見上げるほどの杉の巨木がそびえ、心地いいフィトンチッドのシャワーを浴びながら深呼吸したくなります。
また、高野山は近畿で初めて森林セラピー基地に認定された場所でもあり、仏教と森林セラピーを融合した独自のセラピー体験ツアーも豊富。次に訪れる時は、森林セラピーをメインに旅してもいいかもですね。
- 高野山 森林セラピー
- 高野町(伊都郡) / 自然・景勝地
- 住所:和歌山県伊都郡高野町高野山 45-17 総本山金剛峯寺 山林部内 高野山寺領森林組合地図で見る
- Web:http://www.nankaikoya.jp/event/2017_shinrin/
- 高野山 奥之院
- 高野町(伊都郡) / 寺 / パワースポット / インスタ映え / 紅葉
- 住所:和歌山県伊都郡高野町高野山550地図で見る
- Web:http://www.koyasan.or.jp
番外編!絶対食べ歩きしたくなる草餅
奥之院参道をしばらく行き、ちょっと一休みしたいなーと思う頃、ちょうどいいタイミングで現れるのが高野山名物のやきもちを売っているお店。
一つ(110円)から手軽に買え、平べったいので手に持ちやすく、食べ歩きに最適。まだほんのりあったかくて、つぶあんとのバランスも絶妙!ペロリと食べれちゃうので、食べ過ぎ注意です(笑)。
- みろく石本舗 かさ國
- 高野町(伊都郡) / スイーツ / 和菓子店 / 食べ歩き
- 住所:和歌山県伊都郡高野町高野山764地図で見る
- 電話:0736-56-2327
- Web:http://www.mirokuishi.com/