人口の9割がイスラム教徒であるエジプトには、数多くの礼拝堂・モスクがあります。その中でも一際目立ち、最も観光客にも人気があるのが、カイロにあるムハンマド・アリ・モスク。巨大なドームとミナレットが荘厳な雰囲気を漂わせており、内部に一歩踏み入ればシャンデリアの灯りと幾何学模様に彩られた美しい世界観に取り込まれます。
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ムハンマド・アリ・モスクの概要
ムハンマド・アリ・モスクは、カイロの中心部よりやや南側、高台にある城塞・シタデルの中にあります。カイロ中心部のタハリール広場から、車で約20分程度です。
このモスクは名前の通り、ムハンマド・アリが建設したモスクです。1824年に着工し、1875年に完成しました。
ムハンマド・アリとは
ムハンマド・アリは、19世紀初頭からおよそ150年間にわたってエジプトを支配した王朝、ムハンマド・アリ朝を創始した人物です。
この時代エジプトは、オスマン帝国(オスマン・トルコ)の属州となっていました。ムハンマド・アリは元々オスマン帝国の軍人でしたが、エジプトに派遣部隊として送られたことをきっかけに、権力抗争の末エジプト総督に就任、政権を樹立して新王朝を成立させました。
その結果エジプトはオスマン帝国から事実上の独立を達成したため、ムハンマド・アリは「近代エジプトの父」と呼ばれ、エジプトで現在も歴史的ヒーローのように愛されています。
トルコ風のモスク外観
トルコ・イスタンブールにあるアヤソフィア大聖堂をモデルに建てられたため、トルコ風のモスクになっています。巨大なドームと細長いミナレットが特徴です。中心の大きなドームを、周りの小さなドームで支えています。トルコのモスクではよく見られる形ですが、エジプトでは珍しい形だそうです。
外装にはアラバスター(雪花石膏)が使用されています。
水場や時計台のある中庭
モスク内部に入る前には、中庭を通ります。
中庭中央には、礼拝の前に身を清める八角形の水場があります。時計台は、フランスにルクソール神殿のオベリスク(記念碑)を贈呈したお礼に贈られたものですが、残念ながら動きません。
- 出典:www.flickr.comThe Mosque of Muhammad Ali Pasha or Alabaster Mosque - Cairo, Egypt, by David Berkowitz
- 出典:www.flickr.comThe Clock Tower in the Alabaster Mosque, Cairo, by Dan
美しいモスク内部
世界中全てのモスク共通のルールですが、モスクはイスラム教徒のお祈りの場ですので、肌を露出しない服装で、女性はスカーフで髪をかくして入場しましょう。入り口では上からかぶる布を貸してくれます。
内部に入ると、その美しさは息を呑むほど。中心で輝く巨大なシャンデリアと、天井から下る無数のライトが波を描くように内部を照らし、室内のステンドグラスや壁に描かれた幾何学文様とあいまって、異世界に迷い込んだかのような壮麗な雰囲気を出しています。
柔らかい灯りのせいか、不思議と落ち着く雰囲気なので、座り込んで天井の装飾やライトを眺めている観光客が多く見られます。一緒に座っていると、時が経つのを忘れてしまいそうです。
このランプは1年の日数と同じ、365個あるそうなので、座って、数えてみるのもいいかもしれません。
こちらはミンバルと呼ばれるモスクに設置される説教壇。この装飾も見事です。
- 出典:www.flickr.comMosque of Muhammad Ali Pasha, Cairo Citadel by Dan
おわりに
このムハンマド・アリ・モスクが位置する場所は、カイロのイスラム地区(旧市街)と呼ばれるエリアで、歴史地区としてこの土地自体が世界遺産に登録されています。モスクの他にも古くからの教会や学校が数多くあり、古代から住民の生活と信仰を支えてきた場所であることがわかります。
人口が密集するカイロの混沌とした雰囲気と神秘性、どちらも味わえる非常に「エジプトらしい」町だと感じました。モスク見学の後は、この町の雰囲気を楽しむために散歩してみるのもおすすめです。
- 入場料:50EGP(約310円)
- 入場時間:9:00~17:00(金曜日の礼拝の時間を除く)
- ムハンマド・アリ・モスク
- エジプト / 社寺・教会
- 住所:Al Abageyah, Qism El-Khalifa, Cairo Governorate, Egypt地図で見る