中東はアラビア半島の小国・カタールの首都ドーハ。ここには、世界でも有数のイスラムアートのコレクションがあります。コレクションが集まるのはイスラムアート美術館(Museum of Islamic Art-通称MIA)。MIAの楽しみ方を3通りご提案してゆきます。今回のテーマはズバリ「コレクション」。それは、カタールの現首長のサーニー家が10年がかりで収集した、世界屈指の珠玉のイスラムアートたちです!MIAを訪れたあなたは、イスラム文化の豊かさと深さを、驚きとともに知ることになるでしょう。
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世界屈指!珠玉のイスラムアートたち
MIAのコレクションは、カタールの現首長のサーニー家が10年がかりで収集したハイレベルなイスラムアートたち。収容作品の数こそさほど多くないものの、質の方は世界屈指の少数精鋭。
パリやニューヨークに計7年暮らした美術館好きの筆者ですが、誇張ではなく、ルーブルやメトロポリタンの所蔵作品に勝るとも劣らないクオリティです!しかも、これが鑑賞無料だというのですから驚く他はありません。
- 出典:commons.wikimedia.orgMohamod Fasil; CC BY 2.0
コレクションはアラビア半島だけでなく、イラン、エジプト、トルコ、インド、中央アジア諸国、西はスペイン、東は中国に及び、イスラム文化の豊かな多様性を改めて気づかせてくれます。
ラインナップも真鍮細工から、木工細工、陶器、タイル、宝石、布織物、ガラス細工、書物、カリグラフィー、絵画など多岐に渡り、カバーする時代も7世紀から19世紀までと幅広いものです。
そんなコレクションの一部を、早速見ていきましょう!
カーペット
16世紀ころの絨毯が並び揃うゴージャスな展示室。
細かな織りの、限りなく繊細で優雅なラインは、織物というよりはもはや絵画を見ているよう。ご覧ください、この滑らかな曲線!一本一本糸を通して手で織ったなんて信じられない。神業の様です。
ガラス細工
ガラス細工も繊細で緻密な柄が特徴。写真はシリアの桶。14世紀のもので、同様の作品はこれも含め4つしか現存していないそうで、本当に貴重なものです。
こちらはエジプトまたはシリア。モスクの夜を彩っていたであろうランプ。
近くで見ると、細かな気泡がたくさん入っています。今から800年も前の空気が閉じ込められていると想像すると、何だかぞくっとしませんか。
木工細工
建物の扉に刻まれた幾何学模様。
一体、どれほどの時間を要したことかと思うと、気が遠くなるようですね。当時は現代とは違った時間が流れていたのでしょうね。
こちらも建物の扉。古いアラビア語です。彫ってあるのはコーランの一節でしょうか。
宝石
王族の名前が刻まれた大粒ジュエリーのネックレスに、目が釘付けになりそう。他に真紅のルビーのネックレスもありました。
- 出典:commons.wikimedia.orgIrshadpp; CC BY-SA 3.0
展示室はだいぶ明かりが落としてあって、ガラスケースに入った作品ひとつひとつにスポットが当てられ、空間に浮かび上がって見える演出。宝石の展示室は、キラキラと輝く作品たちが部屋を一際明るく見せます。
金属細工
イスラムアートは、緻密に空間を埋めてゆくものが多いですね。こちらの記事でもご紹介した、ダウ船も連想させるフォルムです。
- 出典:commons.wikimedia.orgIrshadpp; CC BY-SA 3.0
ヘルメット。アラビア文字はデザイン性がとても優れていると感じます。
- 出典:commons.wikimedia.orgIrshadpp; CC BY-SA 3.0
陶器
MIAの作品群の中で、筆者が個人的に一番気に入ったのはこちらのイラクのお皿。記されているのは、このお皿を作った作者の名前だそうです。9世紀と、とても古いもの。
真っ白いお皿に、濃紺色でさらさらっと走るアラビア文字。その余白の何と美しいこと!洗練の極みですね。日本の書道にも似た美を感じます。
「空間を埋め尽くしたいのがイスラムアートなのか」と勘違いしそうになっていたので、この作品に出会った時はものすごい衝撃を受けました。
- 出典:commons.wikimedia.orgSodabottle; CC Attribution-ShareAlike 3.0
上の写真は10世紀、場所は変わってイランまたは中央アジアとのこと。陶器というと脆い印象があります。千年よくもまぁ壊れずにいたものだと、この一枚のお皿が存在してきた年月に思いを馳せると、瞼が熱くなるほどの感動を覚えます。
タイル
タイルと言えば一般的にトルコが有名ですが、中央アジア、イランなど幅広く展示されていて、イスラム圏共通の文化遺産であることがよく分かりました。
こちらの作品は文字をタイルにしたもの。まるで現代アートであるかのようですね。
書物
緻密さに大いに印象づけられます。こちらは、18世紀インドのコーラン。
途方もない時間と忍耐力、何よりも強い信仰心がなければこの作品は成り立たないでしょう。下の写真もインドのコーランで、17世紀のものです。
天文機器
最後に、少し変わったところで天文機器の写真を一枚ご紹介します。イランなど、10世紀ころのものです。
中央やや左手奥に、まるで現代美術のインスタレーションであるかのように展示されている茶色っぽいものは、四分儀と呼ばれる道具。こちらも天体観測機です。
この展示室にはこの他に医学書なども置いてあり、ルネサンス以前、イスラム世界こそが世界の科学のリーダーだったことを思い出させてくれます。
おわりに
MIAを訪れたあなたは、イスラム文化の豊かさと深さを、驚きとともに知ることになるでしょう。
一つ一つが、思わずじっくりと見入ってしまうほどに美しい、珠玉の名品ぞろいのコレクション。できることならば、全作品をご紹介したいくらいです!
少数精鋭のコレクションは、思い切りじっくりと見て半日、駆け足で見れば1時間半というところ。ここでご紹介できなかった作品は、ぜひ皆さんが実際に足を運んでご覧になってくださいね。
- イスラムアート美術館
- カタール / 博物館・美術館 / 美術館
- 住所:P.O Box 2777, Doha地図で見る
- 電話:974-422-4444
- Web:http://www.mia.org.qa/en/
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