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歴史資料に基づき復元した【箱根関所】で江戸時代の旅人気分を体感!

取材・写真・文:

トラベルライター

2017年9月8日更新

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2007年に全面公開された現在の箱根関所は、江戸時代当時の姿を忠実に復元し、史実に近い江戸時代の関所を体感できる史跡となっています。今回は、知っていると見学がもっと楽しくなる、関所全体に施されている工夫や細かいポイントなど、箱根関所の見どころを紹介します。

この記事の目次表示

箱根関所とは?

  • 箱根旧街道杉並木

「関所」は人が通る道の途上で重要な場所に設置され、出入りする人に怪しい人がいないか調べ、時には通行税として金銭を取ることもある場所でした。日本全国に古くからありますが、場所や時代により役割や機能が違っています。江戸時代の関所は、将軍のいる江戸の防衛や、治安維持を目的として置かれました。

江戸時代の幹線道路として定められた「五街道」の中でも、幕府が最も重視したのが東海道でした。その東海道にある箱根関所は、江戸に近い関所として重要な役割を持ち、箱根山の自然の険しさとあわせて、最大の難所となっていたのです。

江戸時代当時の箱根関所を史実に基づいて復元

現在の箱根関所は、1999年から2001年に行われた発掘調査や、江戸時代の史料の記述に基づいて復元された施設です。2004年から一部公開、2007年に全面公開されました。建物の寸法や配置も史料の記述通りに、当時利用されていた伝統的な技術で建てられています。

そのため、時代劇やアトラクション施設で見るような建物に比べると、箱根関所は少し地味に見えてしまうかもしれません。ですが、実際の史実に沿わない余計な装飾がなく、江戸時代の人々が過ごしていたそのままに近い箱根関所を、間近で見て体験できる施設なのです。

では、関所のそれぞれの建物に入る前に、知っていると江戸時代の箱根関所をより実感できる、関所の建築全体についてのポイントを紹介します。

渋墨の壁とシルエット展示

  • 写真:トラベルライター

写真の解説にもあるように、箱根関所の真っ黒な壁は「渋墨」で塗られています。渋柿を絞った汁の「柿渋」と松の木を焼いて作る「煤(すす)」を混ぜたもので、防虫・防腐・防湿効果があり、板の壁や塀などに使われてきた塗料です。

  • 写真:トラベルライター

人物は写真のように灰色のシルエット展示となっています。関所で働く人々の特徴や着物の色などが史料から読み取れないため、史実について間違ったイメージを与えにくい展示がされているのです。とはいえ、役人の配置場所や人数も当時の史料に基づき、髪型や着物の着方など当時の様子が再現されています。

栩葺き(とちぶき)の屋根

  • 写真:トラベルライター

門や番所の屋根は「栩葺き」となってます。特に端から見ると構造が見えやすいのですが、板を重ねて作っている屋根です。横に長い板を使っているようにも見えますが、屋根に使われている板は、幅が12cm~15cm、長さが42cmの板を一枚ずつずらしながら作られているとのこと。箱根関所では杉の板が使われているそうです。

石垣+木造建築の加工技術「光付け(ひかりつけ)」

  • 写真:トラベルライター

「ひかりつけ」は、基礎となる石垣の凸凹にあわせて建物土台の木材を削る加工技術です。この加工により、石垣に木の土台が密着して建物が安定し、基礎から外れることも防ぐことができるのです。画像は厩にある案内で、関所の中でもこの工法が見やすい場所になっています。

金輪継ぎ

  • 写真:トラベルライター

柱や梁などで使われている「金輪継ぎ」は、足軽番所で解説されています。やってみると本当に外れにくいので、昔からの技術に驚かされますよ。

調度品も史料に基づいて復元

  • 写真:トラベルライター

史実に忠実な復元をしているのは建物だけではありません。何げなく置かれているように見える調度品も、江戸時代に関所の役人が書いた日記など史料に基づいて再現されているのです。

では、次からは、箱根関所のそれぞれの建物に入っていきましょう。チェックせずに通り過ぎてしまいそうな細かい見どころも紹介していきます。

厩(うまや)

  • 写真:トラベルライター

文字通り馬を飼うところですが、掃除道具なども収められた納屋でもあったそうです。画像では見にくいですが、奥の馬の向こう側に世話する人も再現されています。

大番所・上番休息所

  • 写真:トラベルライター

関所の中でも、格が高い人達がいた建物です。建物の表側は主に仕事をする場所、裏側に休息や生活の場があります。手前の縁側で、女性が2人いるのが見えますが、これは「出女」つまり江戸から出ていく女性の取り調べがここで行われていました。

「出女」とは?江戸時代は、全国の大名が幕府へ謀反を起こさないように、幕府への人質として大名の妻が江戸に住んでいました。その妻たちが江戸を抜け出して帰国しないように、江戸から出ていく女性「出女」を厳しく取り締まっていたのです。特に箱根関所では、この「出女」を厳しく取り締まっています。

雪隠(せっちん)

  • 写真:トラベルライター
  • 写真:トラベルライター

番所の裏に、雪隠=トイレがあります。関所の役人が利用するもので、通行する旅人は利用できなかったそうです。足軽番所にも同じように雪隠があります。

台所・湯殿

  • 写真:トラベルライター
  • 写真:トラベルライター

台所土間の奥に湯殿があります。繋がった場所にあるのは両方とも大量の水を使う場所であるためでしょうか。湯殿は風呂桶を設置するのではなく、たらいにお湯を入れて湯を浴びる形です。

足軽番所

  • 写真:トラベルライター

関所の中でも、主に掃除や補修のような雑務を担当していた「足軽」の人たちがいた建物です。大番所より小さい建物ですが、こちらにも、雪隠や湯殿など休息する部屋があります。

獄屋

  • 写真:トラベルライター
  • 写真:トラベルライター

罪人を一時的に拘束する「獄屋」もこちらにあります。獄屋の中に入ることもできますよ。

台所土間の排水口

  • 写真:トラベルライター足軽番所台所土間
  • 写真:トラベルライター足軽番所台所土間の外

足軽番所の台所です。左の台所内の写真で、桶の近く左奥の壁側をよく見ると、穴が開いているのがわかりますか?この穴の向こう側を壁の外から見たのが右の写真で、水を流す樋がつけられているのです。台所で使った水の排水設備もあるのですね。

復活の井戸

  • 写真:トラベルライター

2001年の調査で井戸の木枠が発見され、その木枠を復元すると、水が湧いて井戸が復活したとのこと。今でも確かに水があります。時代を越えて復活した不思議な井戸です。

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