古くより、熊野三山を参拝する巡礼者が訪れた熊野古道。複数のルートの中でも中辺路(なかへち)と呼ばれる田辺から熊野本宮大社を経て那智・新宮へと向かう道は人気のルートです。特に滝尻王子から熊野本宮大社までの38キロは、道しるべも整備され歩きやすい定番ルートとして知られます。今回は古道歩きの途中で人気温泉地の川湯温泉にも宿泊し、古道と温泉両方を満喫する2泊3日のプランをご紹介します。
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古より続く巡礼道 熊野古道
熊野古道は、熊野三山と呼ばれる「熊野本宮大社」「熊野速玉大社」「熊野那智大社」の3社に参拝するために開かれた道。その歴史は古く、平安時代から「蟻の熊野詣」と例えられるほど多くの巡礼者が訪れた道です。
2004年には「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に登録されました。
熊野古道には、大阪から田辺へ向かう紀伊路、田辺から紀伊半島の海沿いに那智・新宮へと向かう大辺路、田辺から熊野本宮大社を経て、那智・新宮へと向かう中辺路、高野山から熊野本宮大社へ向かう小辺路、伊勢と熊野を結ぶ伊勢路、吉野・大峯と熊野本宮大社を結ぶ大峯奥駆道があります。
中でも、中辺路は人気のルートで、後鳥羽院や藤原定家、和泉式部も歩いたとされています。
今回は、熊野の霊域の入口とされる滝尻から38キロ先の熊野本宮大社までを2泊3日で歩くプランをご紹介。2泊目では川湯温泉に宿泊し、巡礼路とともに温泉も楽しめるプランとなっています。
コロナ禍の今こそ、熊野古道はおすすめ
元々、熊野古道に訪れる方は9割ほどが海外からの観光客だったそうです。2020年現在コロナ渦により海外からの観光客がおらず、巡礼路を歩いてる方はごく少数。数時間誰にも会わないこともあります。マスクからも解放され自然の風、鳥、虫の声のみを耳にし、古道を独り占めして歩く旅は、ソーシャルディスタンスと言われて久しい今に適した旅先と言えるのではないでしょうか。
2泊3日トレッキングのモデルスケジュール
まずはこれからご紹介する2泊3日のプランの概要を簡単にまとめておきます。
・2日目 近露から発心門王子へ。(歩行距離18キロ 目安歩行時間6時間)発心門王子からバスにて川湯温泉へ。川湯温泉にて宿泊。
・3日目 旅館の送迎サービスで発心門王子へ。発心門王子から熊野本宮大社へ。(歩行距離6.9キロ 目安歩行時間2時間)
スタート前に共通巡礼手帳をゲットしよう!
歩き始める前に手に入れたいのが、共通巡礼手帳です。
熊野古道は、同じく世界遺産のスペインにある「サンディアゴ・デ・コンポステーラの道」と姉妹道提携を結んでいます。100キロを超える道が世界遺産として登録されているのはこの2つだけ!
2015年より共通巡礼のプロジェクトが始まり、2つの道を歩いた方には証明書と限定ピンバッチが贈られ、専用ウェブサイトで紹介してもらえます。
道中の王子(古道沿いに祀られた熊野の御子神の社)や神社などのスポットには、スタンプ台が設置されています。このスタンプを手帳に押して集めると巡礼達成者として認められます。
熊野古道の場合下記のいずれかを1つを達成することが、共通巡礼の達成条件となっています。
- 徒歩で滝尻王子から熊野本宮大社まで(38キロ)を巡礼
- 徒歩で熊野那智大社から熊野本宮大社(30キロ)を巡礼
- 徒歩で高野山から熊野本宮大社まで(70キロ)を巡礼
- 徒歩で発心門王子から熊野本宮大社まで(7キロ)を巡礼するとともに、熊野速玉大社と熊野那智大社に参詣
熊野古道のスタンプを押すだけでも、達成感を得られ記念になりますので、ぜひ出発前に手帳を手に入れましょう。入手場所や巡礼手帳の詳しい情報は田辺市熊野ツーリズムビューロー 二つの道の巡礼者をご確認ください。
- 熊野古道
- 田辺市 / 観光名所 / 女子旅 / ハイキング / 世界遺産
- 住所:和歌山県田辺市 熊野古道地図で見る
- Web:http://www.hongu.jp/kumanokodo/
【1日目】滝尻から近露へ
紀伊田辺駅からスタート地点の滝尻まではバス移動
トレッキングのスタート地点となる滝尻までは、紀伊田辺駅から明光バスで約40分。バスは1時間に1本程度しかありません。バスの時刻は以下でチェック。
早めに出発したい方は、前日に紀伊田辺駅周辺で前泊することをおすすめします。
紀伊田辺駅に併設されている田辺市観光センターは、先ほどご紹介した巡礼手帳配布場所の一つ。この先の古道歩きに役立つ地図も置いてあります。地図にはルートや距離、所要時間だけではなく、休憩所やトイレの場所、また「登り」や「下り」などの詳細な道情報も記載されているのでとても役立ちます。
滝尻のバス停から川を渡った先にある熊野古道館でも巡礼手帳はもらえます。またこちらでは熊野古道に関する資料展示もありますので、出発前に立ち寄ってみるのもいいでしょう。
- 田辺市観光センター
- 田辺市 / 観光案内所・ビジターセンター
- 住所:和歌山県田辺市湊1番20号地図で見る
- 電話:0739-34-5599
- Web:http://www.city.tanabe.lg.jp/kanko-center/
- 熊野古道館
- 田辺市 / 観光サービス
- 住所:和歌山県田辺市中辺路町栗栖川1222-1地図で見る
- 電話:(0739)64-1470/
- Web:http://www.aikis.or.jp/~nakahech/sightseeing/kodou...
滝尻王子宮でご挨拶を済ませたら、いざ38キロの巡礼旅の始まりです。
巡礼旅の始まりは急登!
スタートからいきなり急な登りが1時間ほど続きます。初めから巡礼路の洗礼を浴びる厳しい道のりですが、先はまだまだ長いので無理をせずマイペースに進みましょう。
歩き始めて10分ほどで2つの巨岩が現れます。藤原秀衡の妻が子供を産んだと伝わる乳岩と、女性がくぐれば安産になると言われている胎内くぐりです。
途中の展望台では、飯盛山からの開けた景色を見ることができます。スタート時から登り続けてしんどい思いもしましたが、この景色を見て気分もリフレッシュ!
滝尻王子を出発して1時間50分ほどで高原熊野神社に到着です。こちらのご神体は熊野本宮大社より勧請されました。境内には樹齢1000年を超えるクスノキの御神木があります。
神社の近くに、高原霧の里休憩所があります。こちらでお昼休憩。綺麗なトイレも併設されており、自動販売機もあります。この先しばらく山の中に入りお水の確保が難しくなるので、ここで購入しておくのがいいでしょう。ここから近露までの目安時間は約3時間半です。
民家のない山道を歩く後半戦
高原から出ると、石畳の熊野古道らしい道に入ります。
アップダウンを繰り返しながら大門王子や十丈王子などいくつかの王子を歩いていきます。途中、反対側が崖になっている道幅の狭い道もあるので、足元には十分注意しましょう。
高原から3時間20分ほどで中辺路のシンボルとも言える牛馬童子像があります。こちらは、古道から少し道を外れた小山の上にあるので、道標を見逃さないようにしてください。
この牛馬童子のある箸折峠の丘は、花山法皇が御経を埋めた所と伝えられ、こちらの像は花山法皇の旅姿をモデルにしているとも言われています。
1日目の宿泊地 近露
この像から10分ほどで近露(ちかつゆ)の集落に到着です。
近露の名前の由来は、おもしろい言い伝えから来ています。先ほどご紹介した牛馬童子のモデルとなった花山法皇が、食事の際カヤの軸を折って箸にしたため、像があった場所の名が箸折峠となり、その時軸の赤い部分に露が伝うのを見て「これは血か露か」と尋ねられたので、この場所が近露という名前になったそうです。
近露にはいくつか宿泊施設がありますが、いずれも収容人数が少なく、また2020年現在コロナの影響により休館、もしくは1日1組など人数制限をしているお宿もあります。予定を立てたら早めに宿泊先の予約をすることをおすすめします。宿泊先選びには熊野トラベルを利用するのが便利です。
今回筆者がお世話になったのは「近露 櫻の園」さん。1日1組限定ということで、別館を一人で広々と使わせていただきました。お食事も美味しく、とても快適なお宿でした。
- 近露 櫻の園
- 田辺市 / ゲストハウス
- 住所:和歌山県田辺市中辺路町近露729-1地図で見る
- 電話:090-9625-0402,090-6986-4297
- Web:https://www.sakuranosono.online/