鎌倉
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えっ!?テッパンなのに、ほぼ独り占め?鎌倉最古の【甘縄神社】

取材・写真・文:

神奈川在住
訪問エリア:47都道府県

2018年9月6日更新

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大事にされてきた拝殿

少し戻って拝殿を見てみましょう。見てください!堅魚木がゴロンゴロンとのっていますね。

  • 写真:えいぶゆう/TossyPhoto拝殿

その他にも、拝殿の屋根は神殿に比べて、屋根が大きく反り返っています。

本殿よりも人に見られることを意識してか、反りが効果的に威厳を醸し出しているようにも見えます。

実は先ほど紹介した「堅魚木」も、建物が堂々として見える要素として一役買っているんですよ。堅魚木を設置する目的は、視覚的な安定感を与えるため。繰り返しますが、通常は神殿までで、拝殿には置かれないんです。

  • 写真:えいぶゆう/TossyPhoto堅魚木

甘縄神社のように拝殿にも堅魚木があるのは、土地の人々がこの神社を大切に大切に思ってきた証拠なのです。

少し珍しい造りなので、ぜひ屋根にも注目してみてくださいね。

万能のご利益 天照大神

さて、神社を訪れたなら、気になるご利益ですが、主祭神は「天照大神(あまてらすおおみかみ)」です。

天照大神は、神様が住む世界を支配する役目をもって生まれてきた神様で、八百万の神々のなかでもトップランクの神様。

そのため、あらゆる神徳を持っています。つまりは甘縄神社は万能のご利益だということ。

なかでも得意なのは、地上の万物の生命力やエネルギーを強めること。その力があるので、歴史上のこんな人も参拝しています。

歴史上の超有名一族も参拝した神社

甘縄神社を訪れた歴史上有名な一族、それが「源氏」です。

甘縄神社の溢れる生命力パワーにあやかって、子宝を祈願したと伝えられています。みごと子宝に恵まれたことから、一族数代にわたり甘縄神社を修復するなど、神社の存続に貢献してきました。

境内には、甘縄神社のパワーでこの世に生を受けた源義家の石碑があります。

  • 写真:えいぶゆう/TossyPhoto源義家 再建の碑

秋葉神社と五所神社

境内には、拝殿と神殿の他に、「秋葉神社」と「五所神社」の社があります。

  • 写真:えいぶゆう/TossyPhoto秋葉神社
  • 写真:えいぶゆう/TossyPhoto五所神社

境内には、それぞれの神社がどのような神様を祀っているか細かな説明はありません。

ただし秋葉神社には、神社名を記した額に「火防御守護」と書かれています。

  • 写真:えいぶゆう/TossyPhoto秋葉神社の額

「秋葉」とは通常「迦具土神(かぐつちのかみ)」という火の神様を祀る神社に使われる呼称です。「火防御守護」と書かれているので、「迦具土神」が祀られていると推測できます。

五所神社についても詳しい説明はありませんが、長谷寺の鎮守だった五社明神が祀られたものと言われています。

北条時宗産湯の井

境内には、「北条時宗産湯の井」と名付けられた井戸があります。その名の通り、北条時宗の産湯の水をここからくみ上げたのですね。時宗は18歳の若さで第8代執権となった、歴史上の大スターです。

  • 写真:えいぶゆう/TossyPhoto北条時宗産湯の井

鎌倉には、北条家ゆかりの寺院が、実は数多くあります。その中で、なぜここ「甘縄神社」の井戸から水をくみ上げたのでしょう?

それは北条時宗のおばあさんに関係しています。おばあさんは、鎌倉で有力者であった安達氏の一族でした。

この甘縄神社の近くには、「安達(足達)盛長」という人のお家がありました。その形跡をこの地で石碑として確認することができます。

  • 写真:えいぶゆう/TossyPhoto足達盛長邸の碑

安達盛長は、源頼朝に仕えていました。鎌倉幕府の中でも中核のような存在として、権力を持っていたようです。

北条時宗は、この安達氏の屋敷で生を受けました。屋敷に近いところにあった井戸のため、産湯をくみ上げたのですね。

文学にも登場する甘縄神社

甘縄神社は、まだまだ縁のある人がいますよ!いったいどれだけ、甘縄神社と縁の深い人がいるんでしょう。

実は甘縄神社の近くには、川端康成の邸宅があります。この歴史のある神社を、自身の作品の舞台としたこともあるんですよ。

甘縄神社は小説『山の音』に登場します。主人公の家の裏山にある神社として描かれていることで知られています。

作品名『山の音』のとおり、甘縄神社のある山から聞こえてくる音を主人公の心理状況に重ねた描写をしているんです。

甘縄神社に行く前に『山の音』を読んでから行くと、物語と風景が見事にシンクロして、まるで物語の中に入り込んだかのような気分にさせてくれますよ。

人力車の観光ルートで鉄板の川端康成邸

川端康成の邸宅が近くにあるとご紹介しましたが、本当に境内の真ん前にあるんです!

川端康成が実際に住んで、聞いた音が作品に生かされているわけですね。

鎌倉と言えば、観光の手段として人力車で回るのが人気なのですが、甘縄神社は川端康成の邸宅と作品の舞台が隣接しているということで、テッパンの観光コースなんです。

甘縄神社から川端康成邸を眺めていると、人力車で訪れる人を頻繁に見かけます。

川端康成の邸宅は、甘縄神社の鳥居の真横にありますが、非公開で奥まっているので知っている人に聞かないとわからないんです。

  • 写真:えいぶゆう/TossyPhoto川端康成の邸宅

あんまりにもひっそりとあるので、人力車で訪れた人が、人力車のお兄さんの説明を聞いて「えーっ!」と驚くほどです。

人力車で訪れるテッパンのスポットでありながら、甘縄神社は、知る人ぞ知る神社という感じで、実は訪れる人もごくわずかなんです。魅力にあふれているのに不思議??なところでもあります。場合によっては、ほぼ独り占めできることもありますよ。

でも『山の音』の聖地巡礼で訪れるのだとしたら、静かなほうが世界観にどっぷり浸れていいのかもしれませんね!

鎌倉を舞台にした『山の音』には、近くの「鎌倉大仏」に関するエピソードも出てきます。鎌倉大仏の境内には、歌人である与謝野晶子が、鎌倉大仏を詠んだ歌の碑があるんですが、『山の音』の登場人物たちが、その歌に対してケチをつけるワンシーンがあるんです。

鎌倉での日々と人間模様がこまやかに描写されているので、ぜひ一度読まれることをお勧めしますよ。

旧川端康成邸
鎌倉 / 遺跡・史跡
住所:神奈川県鎌倉市長谷1-12-5地図で見る

おわりに

いかがでしたか?鎌倉でもっとも古い神社には、歴史上の魅力がぎゅうっと詰まっています。それにも関わらず、訪れる人が少ないので、ゆっくり自分のペースで観光できるので本当におすすめ。

できれば、訪れる前に『山の音』を読んで、その世界観に浸ってみるのも、いつもの神社巡りとは一味違って楽しいですよ!

甘縄神明神社
鎌倉 / 神社 / 女子旅
住所:鎌倉市長谷1-12-1地図で見る
電話:0467-22-3347(八雲神社)

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