五百羅漢といえば、その迫力ゆえにリアルだったりちょっと怖かったりするイメージもあります。でも兵庫県加西にある羅漢寺の羅漢さんたちは、とても素朴でかわいく親近感たっぷり。かつて彼らが暮らしていたとされる古刹も合わせてご紹介します。
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五百羅漢(ごひゃくらかん)とは
日本各地に「五百羅漢」はありますが、そもそも「五百羅漢」とは何なのでしょうか。「羅漢」または「阿羅漢」と言われていますが、仏教の悟りを開いた偉いお坊さんのことです。釈迦の入滅後に集まった羅漢たちの数が五百人であったことから、彼らのことを「五百羅漢」と呼ぶようになりました。
加西市北条にある羅漢寺の五百羅漢
五百羅漢たちの姿を映した石像は、全国各地にあります。その最も大きな特徴は全員の顔がそれぞれ違うこと。ぴったり500人とは限りませんが、作られた時代や製作者によってその個性は様々です。「必ず1人は自分や知り合いに似ている像がいる」と言われていますね。
加西市北条町の「羅漢寺」にいる羅漢さんたちは、制作者や制作年代が不明ですが慶長年間(安土桃山時代から江戸時代)に作られたのではないかと言われています。
表情が個性的でかわいい
リアルに作られた石像が多い羅漢像ですが、こちらの羅漢さんたちはお地蔵さんのような大きさで非常にシンプルな造りです。それなのに、表情がとても豊かでかわいらしい。ちょっと不気味とか怖いなどとも言われたりする五百羅漢において、親近感が持てると言われている所以です。
困っているようにも、むくれている子供みたいな表情にも見える羅漢さん。
偶然なのでしょうが、どうみてもカメラ目線の羅漢さんがいます。
キリリとした表情が男前に見える羅漢さんと、少女のような表情がかわいい羅漢さん。
全体的にイースター島のモアイ像を連想させる羅漢さんたちですが、こちらは特にモアイっぽさが強い感じですね。
全体的に穏やかな表情の方々が多いのですが、時どきこんな感じの怖い顔をした羅漢さんもいました。
羅漢寺の中は青々とした緑も綺麗
筆者が訪れたのは緑が美しく映える初夏ということもあって、境内の苔や花などの植物がとても生き生きと綺麗でした。狛犬ならぬ狛虎(?)を苔がびっしりと覆っています。
初夏には数種類のアジサイを楽しめるほか、立派なイチョウやモミジもあり、紅葉の頃にはみごとな色に境内が包まれます。
こちらは「沙羅双樹」の花。釈迦の病床の折に生えていた花で、亡くなった時には枯れて悲しみに暮れたという仏教に縁のある花です。かなり頭上高いところで咲いていおり、羅漢寺の方いわく、「木の先端を切らなかったらあっという間に伸びて、あんなに上で咲いてしまった。毎日木との戦いです」とのこと。
住吉神社と酒見寺
羅漢寺と隣接する「住吉神社」と「酒見寺」もご紹介していきましょう。羅漢寺から徒歩5分くらいのところに住吉神社があります。神話の世界にも登場する播磨の国は、古式ゆかしき神社仏閣が多いのです。
君が代の歌詞に出てくる“さざれ石”です。小石どうしがくっついて巨大な石になったもので、神社や観光地などでよく祀られていますね。
住吉神社からお隣の酒見寺へは、小さな橋で繋がっています。元々神仏習合の時代の習いとして、住吉神社を管理するという役目をになっていたのが酒見寺です。
創建は天平17年(745年)という古さ。奈良の名僧「行基」によって建てられました。五百羅漢は元々この酒見寺の境内にあったと伝えられています。
県文化財である「鐘楼」や重要文化財の「多宝塔」などの建造物が境内に点在していて、加西市を訪れた際には必見の価値ある寺院でしょう。
羅漢は北条の庶民たちの顔
住吉神社も酒見寺も広々とした境内は開放的で気持ちよく、地元と共に年月を過ごしてきた場所なのだと実感します。羅漢さんたちの表情は名僧たちの顔というよりも、北条の土地で暮らしてきた庶民の人たちの表情に見えてきますね。