岡山には横溝正史の映画の舞台となった場所がたくさんあります。中でも有名なのが映画『八つ墓村』の洞窟「満奇洞」です。事件のお屋敷になった歴史的価値のある旧家も残されています。近くにある「笹畝坑道」めぐりも加えての、ちょっとスリリングな岡山をご紹介します。
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映画『八つ墓村』のロケ地になった洞窟「満奇洞」
「祟りじゃ~」というセリフで有名な、横溝正史原作の映画『八つ墓村』は1977年公開の作品。金田一探偵役は、シリーズではめずらしいキャスティングで、寅さんでおなじみの「渥美清」です。
この話の中心になるのが、お屋敷の下に広がる洞窟です。事件現場でもあり、鎧武者が祭られていたりするなど、その場所はかなり不気味な所として描かれています。ラストで主人公は犯人に追いかけられますが、ここで追われるのは相当怖いです。
岡山県新見市にある「満奇洞」は、その映画のロケ地になった場所として有名な洞窟です。すぐ側にある「井倉洞」と並んで、岡山県の指定天然記念物である鍾乳洞なのです。与謝野晶子がここを訪れ「奇に満ちた洞」と詠んだことからその名がついたとか。
映画のイメージとは違って、とても神秘的で美しい場所。鍾乳石が長い年月をかけて水に溶かされ、独特な景観を作り上げました。
全体的に天井が低めの鍾乳洞で、場所によっては腰をかがめたまま数メートル歩かなければならないところもあります。並んで歩けない幅の狭い道も。
洞窟内は、所々ライトアップされていて、明るくなったり暗くなったり、色も変化したりするので、その都度雰囲気も変わります。
自然の神秘と美しさに圧倒される満奇洞ですが、特に映画のイメージを持っているとなお更のこと、やはり一人ではちょっと怖い雰囲気でしょうか。
出入口付近に金田一探偵の顔出パネルがありました。『八つ墓村』はかなりオドロオドロしいストーリーですが、何度も映画化やドラマ化されている人気作品です。こちら以外にも、同じく横溝作品の『悪霊島』の洞窟のモデルにもなったそうです。
- 満奇洞
- 岡山 / 鍾乳洞 / 雨の日観光 / パワースポット / インスタ映え / 観光名所
- 住所:新見市豊永赤馬2276-2地図で見る
- 電話:0867-72-6136
- Web:https://www.okayama-kanko.jp/spot/10993
映画『八つ墓村』のお屋敷として使われた「広兼邸」
「満奇洞」から少し距離がありますが、岡山県高梁市にある「吹屋ふるさと村」の一角にも映画『八つ墓村』の舞台はあります。映画の事件は「多治見家」という旧家を中心として展開しますが、その「多治見家」の舞台となったのがこちらの邸宅で、江戸時代から続く豪商の家屋です。
江戸時代にベンガラ製造と銅山で巨大な富を築いた広兼氏の豪邸です。映画では主にお屋敷全体の外観が使用されました。お屋敷までのこの石垣の坂道は映画の中でも印象的です。
ベンガラとは赤い顔料で、赤みがかった独特の明るいベンガラ屋根が有名です。高梁一帯は巨大産地として栄えた所になります。辺り一帯を見渡せる邸宅の位置は、まさにお城です。
中に入ることはできませんが、ぐるりと庭をめぐってお屋敷の内部を見ることができます。端には土蔵もあり、広兼邸に伝わる資料や宝物も展示されています。
土間から見た居間の様子。まさにそのまま映画のセットになりそうですね。手前にパネルが立てられていて、映画のロケ地マップが詳しく載っています。
岡山は、原作者である横溝正史が戦時中療養と疎開を兼ねて滞在した場所です。その後発表される名作はこの地で考案されたためか、実際に岡山を舞台にしている作品が多くなっています。映画のロケ地も広い範囲にたくさん点在しています。
映画『獄門島』で使われた格子でしょうか。詳しいことが書いていないので不明ですが、いろいろと想像してしまいますね。
広兼邸は歴史的な建造物としても、見所は多くあります。水琴窟がある落ち着いた庭や、使用人部屋、土蔵、不寝番部屋、パンフレットによると結婚式に一度しか使われなかった離れなど、まさにお城の縮小版といったところです。
- 広兼邸
- 岡山 / 建造物 / 歴史的建造物
- 住所:岡山県高梁市成羽町中野2710地図で見る
- 電話:0866-29-2222
- Web:https://www.city.takahashi.lg.jp/soshiki/9/hirokan...
歴史と迫力の「笹畝坑道」めぐり
広兼邸のある吹屋ふるさと村は、銅山とベンガラの町として栄えた町並みが保存されているレトロなスポットで、他にも平成24年まで使用されていた国内最古の木造小学校など、見所がいろいろとあります。
残念ながら、筆者が訪れた際は小学校は修理中だったのですが、小規模だけど迫力があると話題の「笹畝坑道」を訪れました。吹屋銅山の一部を観光用として整備してあり、見学できます。料金300円を払い、ヘルメットを借りて坑道に入ります。
こんな感じの狭い道を進んで行きます。筆者が訪れた日は、外で雪が降り始めていましたが、坑道の中に入ると寒さが和らぎました。天然のエアコンですね。温度が一定しているので夏はきっと涼しいでしょう。
自然にできた洞窟である鍾乳洞と違って、人口的に掘られた銅山はなかなかの迫力です。江戸時代から大正まで、長きにわたって操業されていたそうです。かつてはここから、馬で銅を麓まで運び、そこから大阪に運搬されていたとかで、当時の人々の苦労がうかがえます。
コウモリが「キー」と鳴いて飛んできたりすることもありますので、気をつけてくださいね。
むき出しの岩が、変な表現ですが、張りぼての作り物にそっくりです。黄色くなっているのは硫黄でしょうか。
真ん中あたりで、広いホール状のエリアに出ます。そこからまた先が続いているのですが、立ち入り禁止になっていたり、行き止まりになっていたりで、坑道自体かなり複雑な造りになっているようです。中がどうなっているのかわからない暗闇もけっこうあります。
こんな人形が所々にいるのですが、暗闇なので側まで近づいて初めて気づくので、けっこう心臓に悪いです。
現在はお酒の貯蔵庫としても使われているようです。
出口が見えてきたときは、正直ホッとしました。もし一人でここに入るとしたらかなりの恐怖です。
鉱物を蓄えている山というのは、独特の雰囲気を持っているような気がします。しかし人間にはとても重要な、まさに宝の山であったわけです。
歴史と冒険の旅
たくさんの歴史や物語を生み出した岡山の地は、まだまだ冒険する楽しみがありそうです。かつて金田一探偵が事件解決に走り回った道を、たどってみてはいかがでしょうか。きっとまた映画が見たくなりますよ。