南太平洋に浮かぶキリバスは、33の環礁からなる共和国です。近年の地球温暖化に伴う海面上昇により、水没の危機にあります。また、第二次世界大戦時には大日本帝国軍の要塞が配備され、激しい戦闘「タラワの戦い」が起きた場所でもあります。今でも遺るその爪痕を、現在の様子とともにご紹介したいと思います。
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南太平洋の環礁島キリバス共和国
キリバス共和国は、日本の南東に位置する南太平洋の環礁国です。
33の環礁島から構成されており、大きくギルバート諸島、フェニックス諸島、ライン諸島に分かれています。首都はギルバート諸島にあるタラワ環礁。キリバス共和国の人口およそ12万人の多くがここに住んでいます。下の地図では、白い線が道路です。
環礁は途切れ途切れとなっており、白い線のないところに道はありません。このため、この間はボートなどで渡ります。
空の玄関口は、環礁の南東にある「Bonriki(ボンリキ)」にあります。施設はシンプルながら、機能的です。
ボンリキ国際空港を発着する国際線は週2~3便です。電車やタクシーがないので、国際線の発着時間が近づくと送迎の人々が行き交います。それ以上に多いのが見物に来る地元の住民。大きな飛行機の離着陸は一大エンターテイメントです。
環礁島ができるまで
キリバスの具体的なご紹介に移る前に、環礁について少しご説明します。世界にいくつもある環礁はどうやってできるのでしょうか?それには諸説あり、最も信憑性の高いといわれているのはチャールズ・ダーウィンの「沈降説」です。
まず、
- 海中より噴火してできた火山島の周りを、珊瑚が取り囲むように定着して成長(隆起)する。
- やがて島が沈降して海面下に没し、リング状の珊瑚礁はそのまま残る。
という説です。
何万年もの時を経て、火山は沈み、珊瑚が島として残るのですね。
環礁内と環礁外
環礁は、火山島が沈んだあと海水が入り、ラグーン(内環礁)になります。干潮になると干潟が現れ、地元の人々は貝や蟹を獲り、調理して食卓に並べるそうですよ。
環礁の外は太平洋の大海原です。美しい外環が広がります。
海面上昇で消滅危機に直面するキリバス
珊瑚礁でできているキリバスの環礁は、海抜が高いところで3.5メートル。平均すると海抜2メートルほどの平坦な低地のため、大きなサイクロンが来ると浸水してしまうことがあります。街に高い建物は少なく、サイクロン対策のためか一般家屋には簡易な高床式の住居も目立ちます。
サイクロンによる浸水被害だけでも大変なのですが、それよりも重大な懸念は、地球温暖化による海面上昇です。これらの島々は、地球の海水位が上昇することによって、完全に水没してしまう恐れがあるのです。タラワ環礁は既に半分ほど沈んでいます。
国土が丸ごと消失しますので、人が住むことは困難な環境となります。幸い、キリバス国民の受け入れ先としてフィジーが名乗りを挙げており、公式にそれを表明してくれています。
因みに、キリバス共和国議会は当初、土地の広いオーストラリアとニュージーランドに環境難民としての受け入れを要請しました。しかし、オーストラリアには拒否され、ニュージーランドでは労働移民として年間75人までならOKとの返事だったそうです。
貧窮する環礁国
キリバス共和国に限ったことではありませんが、環礁国は土地の持つ特性のため天然資源に乏しく、経済的に貧窮しています。珊瑚でできているため農業はココナッツやバナナ、タロイモなど育つ作物が限られ、水産も小規模。ほとんどの食品を輸入に頼っていますので、スーパーへ行くと日持ちする缶詰やお菓子ばかりが目立ちます。物価も決して安くありません。
飲み水としてのミネラルウォーターは輸入ですが、生活用水は雨水に頼らざるを得ず、どこの家にも大きな貯水タンクを構え、定まらない気候に依存しています。このような経済状況のため、GDPのおよそ半分を日本、オーストラリア、ニュージーランドなどからの無償政府支援に頼っており、国としての存続に疑問が持たれる所以ともなっています。
もちろん子供たちはゲームなども持っておらず、元気に外で遊ぶ姿をよく見かけます。
飛ぶ鳥を落とすために、張り切って珊瑚の欠片を投げていますよ。
いつか、飛ぶ鳥を落とす勢いで経済成長していくとよいですね。
住人は熱心なキリスト教徒
キリバスは、第二次世界大戦で日本に占領されるまで、長くイギリス領でした。このため公用語は英語とキリバス語。そして、キリスト教が深く浸透しており、日曜になるとミサに訪れる住民たちで街の教会は溢れ返ります。教会の建物はどこも立派で、壁や屋根はどれも柔らかいスカイブルーを基調とした優しい配色です。空の青さに合う美しい色ですね。
年中暑い気候ですので、建物内の暑さ対策はとにかく風を入れること。教会に冷房設備はありませんが、海風が入りどこも心地よいです。
Nippon Causeway(ニッポン・コーズウェイ)
タラワ環礁の最西端にあるベッソ島へ向かう際、手前のBairiki(バイリキ)島よりギルバート諸島の中で一番長い橋を渡ります。
橋の名称は「Nippon Causeway(ニッポン・コーズウェイ)」。1985年に日本の無償資金協力により整備された海上道路です。長さはおよそ3.4Kmで、バイリキ島とベッソ島を結ぶ唯一の幹線道路です。
元々はオーストラリアが橋を建設していましたが、途中で潮に流され断念。次にニュージーランドに依頼しましたが、激しい波と高潮にまた流されてしまいました。最後に日本に依頼し、道半ばでやはり流されたそうですが、日本はそこで投げ出さず、諦めず初めから工事をスタートさせ、潮の満干を見極めながら一気に完成させたそうです。
こういう物は、やはり日本人のもつ技術と根気、不屈の精神が秀でますね。
- Nippon Causeway(ニッポン・コーズウェイ)
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