サウジアラビア

【サウジアラビア】ついに観光ビザ解禁!閉ざされていた王国の珍しい文化と各都市の見どころ

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東京在住
訪問エリア:186ヶ国

2023年6月27日更新

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写真:toshel

観光での入国が困難だったサウジアラビアが、2019年9月27日に突然、ツーリストビザの発給開始を発表しました。今回は、サウジアラビアに古くからある慣習と文化、そして変革していく都市や見どころをご紹介いたします。

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ついに解禁となったサウジアラビアのツーリストビザ

サウジアラビアではこれまで、ビザの発行はビジネスや巡礼、家族訪問のみに限られていました。筆者も一生行けない国、という認識でしたが、今回、新たにツーリスト向けにもビザが発行されることとなり、旅人にとっては驚きをもって迎えられたニュースとなりました。

ここ一年ほどは、スポーツ観戦やコンサート鑑賞など、それを目的とする場合のみビザは発行されておりましたが、直前にHPに掲載されたり、年に数回しか出なかったりで、なかなか計画的な旅行スケジュールを立てられませんでした。また、ツーリストビザが近々解禁になるという噂はありましたが、具体的な情報は全くなく、彼の地(かのち)のお国柄もあり、噂の範囲を超えないと思った旅人も多かったと思われます。

  • 写真:toshelジェッダにある街モスク

云わずと知れた世界最大級の産油国

サウジアラビアは世界最大級のオイル生産量を誇る国です。近年アメリカに抜かれてしまいましたが、それまでは世界一の産油国でした。

  • 写真:toshel

日本ではあまり馴染みがないかも知れませんが、日本のエネルギーは40%を石油で占めており、90%以上を中東から輸入(2019年11月時点)しています。そのうち35%はサウジアラビアに依存しており、日本の原動力を担うとても重要な国でもあるのです。

  • 写真:toshel

サウジアラビアが掲げたビジョン2030

一方で、近年の石油価格下落と人口増加により、財政に陰りが見え始めたサウジアラビアは、オイル依存脱却のため「Vision2030」という目標を掲げ、多岐にわたって大改革を進めています。見えやすいところでは、女性に対する規則の緩和や、映画館の設置、そして今回のツーリストビザ発行も、観光収入を目的とした改革の一環です。

また、国家最大の収入源である国営(王族)のアラムコという石油会社を株式市場に上場させるなど、ほんの数年前ではありえなかった改革を次々と実現しています。

  • 写真:toshel

厳格なイスラム法の敷かれたサウジアラビア

新たな扉を開けて進み始めたサウジアラビアですが、宗教的な古い慣習もまた重要です。イスラム教の聖地を二つ(Makkah、Madinah)も抱えるサウジアラビアは、巡礼に訪れる世界中のムスリムを受け入れる立場にもあり、イスラム法を厳格に順守しています。

  • 写真:toshel

それらは、イスラム教を国教としない人間からすると、しばしば不可解だったり奇異に映ったりするかもしれません。

例えば、サウジアラビアには性別による次のような規制があります。

レストランは男女で入り口が別

筆者の訪問した2019年11月時点では、レストランやファーストフードなど、座って食事ができるような場所では、「男性」と「女性&家族」の入り口が別でした。もちろん中も完全に仕切られており、両者が視界に入ることはありません。

「男性エントリー」「ファミリーエントリー」がアラビア語で書かれている店も多いため、女性である筆者は分からずに、何度も男性エントリーの扉を開けたことがあります。その度に、中にいる男性たちにギョッと驚かれ、すごすごと静かに扉を閉めるという動作が発生していました。

しかし、2019年12月初旬にこの規制は撤廃されました。個人的には、これらはサウジ独自の風物詩でしたので、ちょっと残念でもあります。

結婚していない男女の同部屋宿泊は禁止

ホテルなどで男女同部屋に宿泊する際は、外国人でも結婚証明書の提示が必要でした。こちらも、ツーリストビザ解禁とともに、外国人カップルのみ規制撤廃されています。

婚姻関係にない女性に触れてはいけない

コンビニやレストランで、レジに立つ男性が女性客にお釣りのコインを手渡す際、手のひらを差し出している女性のだいぶ上から、コインを落とすようにお釣りを渡していました。ちょっとでも触れてはいけないのですね。スゴイ技だなと感心しました。鉄則のようです。

女性のみ適用される規制

女性は外出の際に民族衣装を着用義務がある

女性は外出の際、民族衣装である「アバヤ」の着用が義務付けられています。男性は義務ではありませんが、男性用の民族衣装である「トーブ」を着用している人は多いです。こちらの写真は、典型的なカップルの衣装です。

  • 写真:toshelサウジアラビアの基本的な服装(民族衣装)

男性(左)は、白いトーブを着用し、頭には赤か白のグトラやクフィアを被り、イガールと呼ばれる黒い布の輪で押さえます。女性(右)は、体の線が出ない黒のアバヤを着用し、髪の毛が見えないよう黒のヒジャブ(スカーフ)を被り、黒のブルカやニカブで顔を隠します。

こちらも、ツーリストビザ解禁とともに、観光客のみ着用義務がなくなりました。

外出時の民族衣装着用を女性のみ強制していることで、世界ではサウジアラビア女性への差別だといった認識が広まり、人権問題にまで発展したこともありました。しかし、本当にサウジアラビアの女性は虐げられて不憫な生活をしているのでしょうか。それらは、外国人が極表面的に見た一方的な感情に過ぎず、実際の生活を知らずに声をあげる非ムスリムの方もいらっしゃるかもしれません。

砂漠気候の高温かつ乾燥した環境では、ひとたび砂嵐が起こると、砂塵や砂埃が容赦なく目鼻口耳を襲います。しかし、グトラやヒジャブを被っていれば防ぐことができますし、トーブやアバヤは、砂が付着したり溜まることもなく、知らずに部屋の中へ砂を持ち込むことはない。その土地の自然環境によって服装は変わってくるものですので、部外者が一方的に異を唱えるのもいかがなものかと思います。日本でも、子供は登校時に毎日同じ制服を着用しますが、同じようなものです。

ちなみに、家の中では女性の皆様、オシャレしていらっしゃるようですよ。このような素敵なドレスを売るレディースファッションの店は、そこかしこにあります。

  • 写真:toshel

尚、男性のトープは生地が丈夫で長持ちするとのことで、少し高価な日本製が人気なのだそうです。

  • 写真:toshel

男性の許可なしには働くことができない

サウジアラビアでは、女性は保護の対象とみなされているので、一家を支えるのは男性の仕事というのが一般的です。日本でも、つい数十年前までそうでしたね。サウジアラビアでは、後見人制度という法によって、女性を男性の従属下に置かざるを得ないため、行動が制限されてきました。

しかし、裏を返せば女性は「働かなくていい」。しかも金持ちが多いため「家事炊事はすべてメイド任せ」「育児に専念できる」環境にあり、実に優雅な生活ぶりを伺える場面もあります。外資系超高級ホテルレストランで女子トークに花を咲かせている現地の女性を、筆者も幾度となく見かけました。

サウジアラビアの既婚女性全員が左うちわのわけではございませんが、一概に「女性の就労規制に対する差別」ということでもないように感じます。筆者などは、羨ましくさえ思いました。

女性は車を運転することができない

こちらも2018年の時点で規制撤廃されていますが、それまで、女性が車の運転をすることは法律違反でした。しかし、これも裏を返せば、旦那や父親、またはお抱えの出稼ぎ運転手がいつでもどこへでも連れて行ってくれるという羨ましい状況。

そして、訪問して分かりましたが、サウジアラビアの男性の運転は非常に荒い。車社会ですので幹線道路は充実しており、都会の真ん中でも片道5車線など当たり前ですが、「ここはサーキット場か何かなのですか?」と思うほど、どの車も物凄いスピードで一般道を走っています。

筆者も車の運転が好きで、海外ではよくレンタカーでドライブし、どちらかというとスピード狂ですが、世界中で運転した筆者から見ても「国民総暴走族なのですか?」というくらい危険です。ここへ、あまり運転の慣れていない女性ドライバーがトロトロと進入した日には、大事故を誘発しかねず、そのために女性の運転を規制したのではと思えるほどです。

  • 写真:toshel道路で事故炎上した車

働かない若者

日本でいう所謂ブルーカラー、3Kの職業に就くサウジアラビア人は少なく、それらの仕事はほとんどは他国からの出稼ぎ労働者が担っています。サウジアラビアでは、朝からカフェでたむろして、何時間も無駄話をしている若者によく遭遇します。ブルーカラーの職業に就くぐらいなら、働かないで手厚い失業保険をもらっていた方がマシ。という考えのようです。

  • 写真:toshel

しかし近年、石油価格の下落により財政事情が悪化しているサウジアラビアにとって、若者の不労問題は大きな政治課題の一つです。数年前、若者の雇用拡大(サウダイゼーション)を目的とし、外国人の出稼ぎ労働者を100万人以上帰国させる政策を実施しましたが、店が潰れたり、建築中の建物が放置されたままになるなど、効力を発揮しているようには思えません。

さらにぬるま湯の王族たち

しかし、働かない若者を揶揄する以上に困難を極めているのが、王族たちのぬるま湯体質です。一夫多妻制のサウジでは、初代国王に26人の妻がいたとされ、彼女の産んだ息子たちからネズミ算式に増えた王族の数は、現在の6世代までに2万人を超えるともいわれています。一説によると、直系は$8,000(約87万円)~$20万(約2,190万円)にもおよぶ月収を得ているとされ、王族の金満ぶりが伺えます。

日本で記憶に新しいのは、2017年にサルマン国王が来日した際、1,000人以上の随行者が13機の飛行機で羽田へ降り立ち、首都高は閉鎖。200台のハイヤーが借り出され、東京の高級ホテルは1,200室も押さえられたと話題になりましたね。

また、王族による汚職の蔓延に対し、サルマン皇太子が数十名を摘発し、リヤドの超高級ホテルリッツに軟禁したニュースもありました。この件は、一連の捜査で最終的に381人の王族や関連者が召喚され、不動産や現金など総額11兆円の資産が回収されたそうです。

11兆円といえば、世界の国家予算ランキング27位のアルゼンチンに相当し(2016年時点)、それ以下の百数十国の国家予算より多い金額です。

感覚がちょっと違いますね。

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この記事を書いたトラベルライター

地球旅~現在186ヵ国~
行ったことのない国を中心にひとり旅しています。他国の歴史、文化、宗教、遺跡、そしてそこに住む人々の考え方に興味があります。

車の運転が好きなので、海外ではドライブ旅を楽しんでます。普段は会社員です。

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