イラク

【イラク】古都サーマッラーの世にも美しきミナレット(世界遺産)

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東京在住
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2023年10月6日更新

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ハディ・アスカリ寺院

ここは、第10代イマーム「ハディ」と、第11代イマーム「アスカリ」の霊廟あるアリー・シーアの聖地・巡礼地です。

イスラム教の歴史と背景

寺院のご説明の前に、イスラム教の歴史と背景を少し整理したいと思います。

【スンニとシーア】

イスラム教のスンニやシーアは皆様、聞かれたことがあると思います。これらはイスラム教の派閥です。世界のイスラム教徒は現在およそ20億人といわれており、9:1で圧倒的にスンニが多い。しかし、国ごとに見るとイラクは半分、イランに至ってはほぼシーアです。

【カリフとイマーム】

イスラム教でよく聞く「カリフ」は正統カリフ時代からウマイヤ朝、アッバース朝に続く最高権威の称号で、事実上イスラム帝国の王です。

  • 正統カリフ時代 西暦637-661
  • ウマイヤ朝 西暦661-750
  • アッバース朝 西暦750-1517

一方、「イマーム」は概ねイスラム教の指導者を指します。

イマームは、スンニ派ではカリフおよびウラマー(一般のイスラーム神学者・法学者)のことを指します。一方、シーアでは意味は違い、イスラム教の預言者ムハンマドの子孫から選ばれし最高指導者を指す大変に意味のある特別な高位です。

預言者ムハンマドがイスラム教を布教していた時代、スンニやシーアという派閥はありませんでした。ただ単に「イスラムの教え」があるのみでした。しかし、ムハンマドの死後、次のリーダーを決めるにあたり、実力や能力で選ぶべきとする意見と、預言者ムハンマドの血筋を重視すべきとした意見が出ました。

結局のところ、ムハンマドの死後に正統カリフ時代のカリフ4人は実力で選ばれました。

  • 第一代カリフ:アブー・バクル(632年 - 634年)
  • 第二代カリフ:ウマル(634年 - 644年)
  • 第三代カリフ:ウスマーン(644年 - 656年)
  • 第四代カリフ:アリー(656年 - 661年)

この4人のうち四代目アリーだけはムハンマドの遠い血筋でした。イスラム教創始者ムハンマドの従兄弟であり、娘婿でもあったのです。派閥が決定的になったのは第四代カリフのアリーが暗殺されてからです。

アリーを信奉し、以前から血統を重んじていた人々は「単に信者から選ばれたにすぎないカリフは信仰上で誤ることがある」が、「神アッラーの使徒としてムハンマドの血統を受け継ぐ者は誤ることはない」と、ウマイヤ朝のカリフ制を否定しました。

そして、第四代カリフであったアリーを第一代目イマームとして、アリーの息子たちであり、創始者ムハンマドと血の繋がった孫であるアリーの長男ハサンと次男フサインを第二、第三のイマームに薦します。スンニがカリフによる統治を正しいと見なすのに対し、アリー・シーアはアリーの子孫こそムハンマドの血と意志を引き継ぐ正当な指導者で、イマームこそがイスラム教の長であると見なしたのです。

ムハンマドの血を継いだイマームの12名はこちら。

  • 第一代イマーム:アリー
  • 第二代イマーム:ハサン
  • 第三代イマーム:フサイン
  • 第四代イマーム:アリー・ザイヌルアービディーン
  • 第五代イマーム:ムハンマド・バーキル
  • 第六代イマーム:ジャアファル・サーディク
  • 第七代イマーム:ムーサー・カーズィム
  • 第八代イマーム:アリー・リダー
  • 第九代イマーム:ムハンマド・タキー
  • 第十代イマーム:アリー・ハーディ
  • 第十一代イマーム:ハサン・アスカリ
  • 第十二代イマーム:ムハンマド・ムンタザル(マフディー) - 隠れイマーム

そして、サーマッラーのこの寺院は、第十代ハーディとその息子、第十一代アスカリはここに眠る神聖なる聖地なのです。

  • 写真:toshel

美しい聖地寺院の装飾

サーマッラーの聖地寺院は西暦944年のアッバース朝時代に建設。金色ドームは1905 年に再建された際に72,000 枚の金片を貼ったそうです。流石に聖地の寺院。外装も細やかに美しいです。

  • 写真:toshel

天井の装飾はシルバーとパステルカラーで統一され、厳かな雰囲気を醸し出しています。

  • 写真:toshel

内部に入場しました。イラクとイランは、イマームの廟壁にこのキラキラした硝子や鏡を張り合わせる装飾が多いです。

  • 写真:toshel

写真だと分かりづらいですが、実際に煌めいています。

  • 写真:toshel
  • 写真:toshel

重厚なシャンデリアとドーム部分のモザイクが美しいですね。

  • 写真:toshel

こちらの廟に眠るハーディと息子のアスカリは、生涯のほとんどをここサーマッラーの家宅に軟禁されて過ごしました。彼らはイスラームについて深い学識をもち、後世の学者に利用されるクルアーンの解釈書も編纂するほどの実力の持ち主だったようですが、二人ともカリフの刺客に暗殺されています。それほどスンニとシーアは敵対してきた歴史があります。

寺院内へ入場の際はカメラと靴を預けます。預けると数字の入ったプラスティックの番号札を渡されます。スマートフォンでの撮影は可。入場フリー。女性は寺院へ通じる参道の手前でチャドルをフリーレンタルできますので、着用して入場します。

ハディ・アスカリ寺院(イマーム寺院)
イラク / その他スポット
住所:サーマッラー   イマーム寺院地図で見る

サーマッラーの行き方

サーマッラーへはシェアタクシーで行くか、タクシーを一日貸し切りして行きます。2022年現在、電車やバスはありません。

「シェアタクシーの場合」

サーマッラーはバグダッドの北方に位置するため、ここでお伝えしたように、バグダッドのマラウィ・ノース・ガレージから行きます。片道15,000イラクディナール(2023時点およそ1,500円)です。サーマッラーは外国人の単独行動ができません。入境には専用のドライバーが必要ですが、シェアタクシーはサーマッラーの入口までしか行きませんので、入境ポイントでイラク軍に専用ドライバーを依頼してください。10,000~15,000ディナール(1,000~1,500円)

「一般タクシー」

ホテルに依頼しタクシーを貸し切ります。80~120$目安(12,000~17,000円)/日。

チェックポイントを何度も通過します。また、サーマッラーの入境時にはイラク軍にパスポートを預けますので、必ずご持参ください。また、出境時には必ず返却してもらうよう忘れずにお声がけください。サーマッラーの街には宿泊施設がありませんので、日帰りのみとなります(2022時点)。

  • 写真:toshel
サーマッラー
イラク / 町・ストリート / 世界遺産 / 遺跡・史跡
住所:サーマッラー地図で見る

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この記事を書いたトラベルライター

地球旅~現在192ヵ国~
行ったことのない国を中心にひとり旅しています。他国の歴史、文化、宗教、遺跡、そしてそこに住む人々の考え方に興味があります。

車の運転が好きなので、海外ではドライブ旅を楽しんでます。普段は会社員です。

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