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埼玉に地下神殿があった!【首都圏外郭放水路】見学会で、防災意識を高めよう

取材・写真・文:

トラベルライター

2017年7月12日更新

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写真:トラベルライター

神秘的と形容出来る地下。まるで神殿を連想させるここは、埼玉県春日部市にある、「首都圏外郭放水路」という、水害から地域を守るために作られた、日本初の地下放水路です。国内外のメディアに取り上げられるほど、日本のモノ作りとしての技術が集結された施設であり、地域の水害被害を最小限とする大事な役割を担っています。また神秘的なスポットとして、アーティストのPVや、戦隊ヒーローのロケ地としても使用されています。埼玉の地下神殿の見どころと共に、防災意識についても改めて考えていきましょう。

この記事の目次表示

そもそも「放水路」とは?

平野を流れる多くの川は、幅が狭く浅いものです。勾配が小さい場合は、普段はゆったり流れています。そのため、大雨が降り水かさが増えると、水が流れ切らず、洪水になってしまいます。

川から枝分かれした人工の川を作り、水を他の大きな川や海に繋げて放水し、洪水を防ぎます。このように洪水を起こさないために作った人工の川を、「放水路」と言います。

  • ダムで見かける景色だと思います。これが「放水路」です。

なぜ春日部市周辺に放水路を?

埼玉県春日部市周辺地域は、江戸川、利根川、荒川の大きな川に囲まれており、お皿のような地形をしています。その地形は、地域を流れる大落古利根川、中川などの中小河川の水が貯まりやすく、さらに勾配が小さいため流れにくく、昔から洪水に悩まされてきました。

  • 春日部市周辺地域を流れる、大落古利根川

加えて、都市開発が進み、人口や資産が増加しています。こうした背景から、浸水被害対策がより必要となり、立ち上がった主要プロジェクトが「首都圏外郭放水路」なのです。

平成5年3月から工事が始まり、日本の土木技術を集結させ、平成18年6月、13年の歳月を経て完成しました。全長6.3km、地下50mの、日本初の地下放水路です。

では、放水路のしくみを、筆者が参加した見学会を踏まえてご紹介していきます。

「龍Q館」から見学会スタート!

首都圏外郭放水路を見学するには、見学会への参加申込が必要です。事前に電話かWebで予約をしましょう。土日の開催日は限られている為、早めに確認をしましょう。

見学会は、首都圏外郭放水路地底探検ミュージアム「龍Q館」からスタートします。東武野田線南桜井駅北口より、徒歩約40分の場所にあります。見学には余裕をもって来館しましょう。

  • 写真:トラベルライター首都圏外郭放水路 地底探検ミュージアム 龍Q館

見学会は全体で約一時間、見学会・入館料共に無料です。まず、館内の「地底体験ホール」で、首都圏外郭放水路をバーチャル体験します。

  • 写真:トラベルライター地底体験ホール。スクリーンと壁一面に映像が映し出され、音・光と共に体験出来ます。

次に、地図やミニチュアを使いながら、首都圏外郭放水路の概要を、係の方から丁寧に説明いただきます。映像と展示物(記事後半で紹介)のクオリティが非常に高く、ここだけでも地形や施設の知識、防災意識が高まります。積極的に耳を傾けましょう。

いよいよ地下神殿へ!

「龍Q館」での説明が終わると、一旦施設の外に出て、地下神殿の入口へと徒歩で移動します。龍Q館前にある入口から、6階分の階段を下って地下へ降ります。取材時の地上の気温は28℃、地下は15℃と、肌寒く感じます。見学に集中するため、上着の持参を忘れずに!

  • 写真:トラベルライター地下神殿への入口。すぐに6階分の階段を下ります。

「第一立坑(たてこう)」は、全ての河川の水が集まる巨大穴

春日部市周辺には、大落古利根川、中川などの中小河川が数本流れており、各河川の隣に、「立坑(たてこう)」という、大きな縦穴を地下に作りました。各立坑の下部は放水路と繋がっており、立坑に流れた水は放水路を通って、写真の「第一立坑」に集まります。

  • 写真:トラベルライター第一立坑

第一立坑の高さは約70m、内径約30m。スペースシャトル(55m)やニューヨークの自由の女神像(40m)がすっぽり入る、巨大な円柱状です。

「調圧(ちょうあつ)水槽」は、放水前の調整機能

  • 写真:トラベルライター調圧水槽

放水路を通って第一立坑に流れてきた水は、写真の「調圧水槽」を経由し、放水ポンプを使って江戸川へ放水します。調圧水槽は第一立坑と隣り合っており、水の勢いを弱めます。また、ポンプ運転を安定して行うための役割と、緊急時の水圧の変化の調整を行う役割を担っています。

長さ177m、幅78m、高さ18m、サッカーコート程の巨大な水槽です。

  • 写真:トラベルライター龍Q館の前にはサッカーコートが広がります。まさに真下が、調圧水槽です。

水槽を支える柱は、長さ7m、幅2m、高さ18m、重さ500tの規模が59本そびえ、まさに圧巻です。

  • 写真:トラベルライター人と比べて圧巻の大きさですね。

位置関係をミニチュアで!

龍Q館で説明いただいた、首都圏外郭放水路のミニチュアを使って、位置関係をご紹介します。左の円柱が第一立坑。真ん中の地下が調圧水槽、地上がサッカーコート。右の地上茶色の建物が、龍Q館です。

  • 写真:トラベルライター首都圏外郭放水路ミニチュア

水害被害の減少!

長年水害被害に合ってきた春日部周辺地域は、首都圏外郭放水路の稼動により確実に被害が減少してきています。平成12年度以降、一時間当たりの雨量が160mm以上を記録した際の被害状況の抜粋です。

・平成12年07月の浸水面積は137ha、浸水戸数は248戸。

・平成16年10月の浸水面積は72ha、浸水戸数は126戸。(工事途中だが部分的に通水開始期間)

・平成18年12月の浸水面積は33ha、浸水戸数は85戸。(完成後)

また、平成27年9月の台風17号・18号が、これまでで最も放水路に水が入った時であり、その水量は約1,900万㎥です。わかりやすく例えると、50mプールの約5,100杯分、東京ドームの約15杯分になります。とてつもない水量を入れ、流すことが出来る、世界最大級の地下放水路なのです。

  • 写真:トラベルライター地面が濡れているのは、前回水が入った時のものが乾いていないからです。ここに水が入っていたことを実感しますね!

世界に誇る日本の土木技術

日本の土木技術の結晶とも言える首都圏外郭放水路は、新たな技術ヒントを与えてくれるものとして、海外メディアにも取り上げられています。施設には海外からの視察団が多く訪れているそうです。

地下神殿の見学会を通して日本の土木技術レベルの高さを感じると共に、改めて災害意識を高める機会として、是非見学会へ参加してみてはいかがでしょうか。

首都圏外郭放水路
埼玉 / 工場・施設見学 / インスタ映え
住所:埼玉県春日部市上金崎720地図で見る
電話:048-747-0281(地下見学会への問い合わせ窓口)
Web:http://www.ktr.mlit.go.jp/edogawa/gaikaku/

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