
古代の壁画から世界中の名画千点以上が再現されています。世界旅行をしなければ見られない素晴らしい作品の数々が日本で鑑賞できるのです。そんな大塚国際美術館の魅力と必見ポイントを押さえた4時間ルートをご案内します。
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大塚国際美術館とは
大塚国際美術館は、ポカリスエットやカロリーメイトなど多くのヒット商品を生み出した大塚グループが設立した施設です。創立75周年記念事業として、徳島県鳴門市の鳴門公園内に造られました。
5階建ての美術館ですが、地下3階から地下1階までは、山の中にあります。総面積の80%は地下と言う特殊な建物です。広さは、29,412㎡(約9千坪)で建築当初は日本一を誇っていました。
大塚国際美術館が「世界初だらけ」である魅力
世界中の名画が一堂に
なんと言ってもこの美術館の魅力は、本来なら世界中を旅しなければ見ることのできない、あるいは個人所有などで一生かかっても見ることのできない名画を、この美術館を訪れることで鑑賞できること。世界26ヵ国190点あまりの名画を原寸大で日本にいながらにして楽しむことができるのです。
また世界各国の美術館で展示されている名画は、いうまでもなく人気作品も多く、世界中からの観光客であふれかえっていて、近づくことはおろか、ゆっくり楽しむことが難しい場合もあります。ここでは、近づいて細部までじっくり観察したり、椅子に座って時間をかけてのんびり鑑賞したりできるのです。
斬新でユニークな展示方法
大塚国際美術館の展示方法は、世界中の名画が一堂に集約されているからこそ実現できているのですが、展示に関しても、より見やすく楽しめるように考えられています。実際に遺跡や教会をめぐっているような空間そのものまで再現された「環境展示」。古代から中世、現代にいたる西洋美術の変換が理解しやすいように美術史にのっとった「系統展示」。
時代を超え同じ題材で描かれた作品がテーマごとに集約されたり、同じ画家によって何枚も描かれた作品が集められたりする「テーマ展示」など、展示方法によって様々な方向から楽しめるようになっています。
世界初の朽ちることのない陶板名画
大塚国際美術館で展示されている名画はすべて、大塚オーミ陶業(株)によるタイル製造の特殊技術を用いて作成された美術陶板(陶磁器)です。世界中にある名画のオリジナルは、いつ被災するかわかりません。
どんなに大切に保管しても、湿度や温度、光によって退色劣化は免れないことです。しかし、陶板名画になれば2,000年以上にわたってその姿が保持されると言われています。
また2万点もの色を開発しオリジナル絵画を忠実に復元している素晴らしさは、各国の美術館長や画家、その子息にまで、所有者の許可や検品を受け、すべて認められているのが証明でもあります。
大塚国際美術館の鑑賞モデルルート
チケット売り場がある正面玄関を入ると目の前に長さ41mの長いエスカレーターがあり、降り立った場所が地下3階です。展示内容は、以下の通りとなっています。地下3階からスタートして順に上の階に進むと良いでしょう。
- 地下3階:古代&中世
- 地下2階:ルネサンス&バロック
- 地下1階:バロック&近代
- 1階:現代&テーマ展示
- 2階:現代&テーマ展示
施設が9千坪、1,000点もの展示数ですから、丸一日かけて楽しめれば、それが一番だと思います。しかし旅先で限られた時間の場合は、そうもいかないので、ある程度の計画を立てておくのが良いと思います。「これだけは絶対に見たい!」という絵画があれば、公式サイトに展示作品リストがあるので事前に調べておけば、見逃しを避けられるでしょう。
各階の必見ポイント
以下のサブタイトルより、鑑賞ルートと簡単な見どころポイントをご紹介します。鑑賞ルートの前に記した番号は、展示室の番号になっています。入場の際に手にするフロアマップの番号と照らし合わせてご鑑賞いただけます。絵画は百人百様の好みがあるので一概には言えませんし、お好きな方は個々にこだわりがあると思います。本記事では、絵画に詳しくはないけれど、有名な絵画は押さえておきたい筆者の個人的嗜好でお勧めルートを作成しています。少しでも参考になれば嬉しいです。
地下3階
地下3階には展示されている空間まで再現された環境展示が9作品と、陶板絵画制作のプロセスも紹介されているので見ておきたいですね。
このフロアでの一番の見どころは、エレベーターから降りれば必然的に吸い込まれてしまうシスティーナ・ホール。バチカンのシスティーナ礼拝堂の空間がそのままに復元されており、ミケランジェロの「最後の審判」が目に飛び込んできます。礼拝堂の高い天井など空間の復元力の凄さや迫力に感動することは間違いないのですが、みどころポイントがもう一つ。
天井に描かれた絵を実寸大で見ることもでき、「この大きさの絵があそこに?!」と、机上の教材では得ることがない驚きです。ホールから次にルネサンスを代表する巨匠エル・グレコの部屋に移動し、19世紀のナポレオン戦争によって破壊された祭壇衝立を鑑賞しましょう。
その他にも環境展示が続きますので、秘儀の間から鳥占い師の墓、聖テオドール聖堂まで楽しみます。小さなスペースに淡くくすんだ黄土色の色調、狭い通路など、まるで考古学者にでもなったような気分が楽しめます。ローマ建国よりもずっと古いエトルリア人のお墓の中に入るなんて、それが徳島の地で入れるなんて想像できるでしょうか?イミテーションだけれどリアルな体感をお楽しみください。
地下2階
地下2階に移動するとシスティーナ・ホールの吹き抜けになっており、天井画をより近く感じることができます。またモネの「大睡蓮」が環境展示として屋外に展示されています。
睡蓮の季節には、モネの描いた世界に佇むような錯覚を感じられるでしょう。「受胎告知」という同タイトルの絵画が14枚も一堂に会している様は壮観ですし、描き方によってこんなにも違ってくるものかと、人間の視点の違い、技法の違いなど興味深く楽しむことができます。
レオナルド・ダ・ヴィンチ「最後の晩餐」の修復前と修復後が一つの部屋で向かい合い、ほとんど間違い探しゲームの感覚です。他には、ファンも多く、数年前には一大ブームを巻き起こしたヤン・フェルメールの作品も多数展示されていますし、有名すぎるアニメ『フランダースの犬』でネロ少年が見たいと夢見ていたうちの一枚「キリスト昇架」も必見です。
オランダを代表する画家・レンブラントの「夜警」に、スペインの画家・ベラスケスの「東方三博士の礼拝」なども楽しみたいところ。
地下1階
こちらのフロアも見逃せない絵画が多数あります。ゴヤの代表作ともいえる着衣のマハと裸のマハ他、環境展示でゴヤの家をオマージュした「黒い絵」の部屋は、病に侵された晩年のゴヤの心理状態さえ推し量ることができそうです。
また世界各地に展示されているフィンセント・ファン・ゴッホの花瓶に入った「ヒマワリ」が、7作品も同じ部屋で見比べることができるのは大塚国際美術館でしか実現できない環境。その中には、個人所蔵で焼失してしまった幻の「ヒマワリ」も復元されています。描いた時期やゴッホの置かれた環境によって、ヒマワリと言う同じ素材の描き方が変化していく様も見比べることができます。
その他にも、ミレーの「落ち穂拾い」、クリムトの「接吻」にムンクの「叫び」と一度はどこかで目にしたことがある絵画が目白押しです。
本館1階
1階に上ると芝生が広がる中庭を望む本館になります。視覚的な錯覚を利用した絵画、いわゆる「だまし絵」が展示されており、さらりと見るつもりが、ついつい見入ってしまいます。また、「時」や「生と死」というテーマを設けて展示されています。
ここでの必見は何と言ってもパブロ・ピカソの「ゲルニカ」ですね。スペイン・マドリードにあるソフィア王妃芸術センター所蔵で、門外不出と言われる絵画を原寸大で鑑賞できます。本物は当然のことながら、多くの人に囲まれガラスで隔てられていますが、触れるほどに近づいて鑑賞できます。ピカソがどんな想いで描いたのか、世界各地で紛争が起きている今こそ改めて考える機会になりそうです。
本館2階
本館にはエスカレーターがないので、2階への移動は、階段もしくはエレベーターでの移動となります。
このフロアは、1階と同じく現代絵画とテーマ展示がされており、「食卓の情景」や「運命の女」、「家族」などの同テーマで時代を超えた絵画が展示されています。時代が変わっても同じだなぁと感心したり、時代によってこんなに違うのだと驚いたり、気軽に楽しめる展示になっています。
さいごに
恥ずかしながら筆者は、芸術に造詣が深いわけではないので、「聞いたことがある」「見たことがある」「これは有名だね」程度の知識で、鑑賞を楽しみました。海外の現地で本物を見たものもあり、それらを思い出しながら鑑賞するのも十分楽しめました。特に環境展示は、その場に立っている錯覚さえ感じることができました。さらっと楽しみながら撮影しながら歩いて3時間強。それにランチとミュージアムショップでの買い物も楽しんで4時間強で過ごすことができました。

- 大塚国際美術館
- 徳島 / 女子旅 / 観光名所 / インスタ映え / 美術館
- 住所:徳島県鳴門市鳴門町土佐泊浦字福池65-1地図で見る
- 電話:088-687-3737
- Web:http://o-museum.or.jp/
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