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【ウズベキスタン】手すきの温かみを感じるサマルカンドペーパー工房

取材・写真・文:

トラベルライター

2017年10月10日更新

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写真:トラベルライター

「サマルカンドペーパー」を知っていますか? 世界初の紙は、紀元前の中国で生まれたと考えられています。その後、751年に当時地域を支配していたアッバース朝と唐が戦ったタラス川の戦いで、唐軍の捕虜によってサマルカンドに紙の製法が伝えられました。そうして製紙の一大拠点となったサマルカンドで作られていたのが、サマルカンドペーパーです。「世界一の紙」とも言われたというサマルカンドペーパーの伝統を担う工房をのぞいてみませんか。

この記事の目次表示

サマルカンドペーパーの歴史

中国で発明された紙は、751年タラス川の戦いで連れてこられた唐軍の捕虜によって、サマルカンドにもたらされました。これによりサマルカンドで製紙が始まり、さらにサマルカンドから中東やヨーロッパに製紙技術が伝えられました。

中国の本格的な製紙技術と西洋・中東の経典等の「書くこと」への需要が出会い、紙の供給・製紙技術の一大拠点となったサマルカンド。そののち西洋で発展した大量製紙技術が、現在私たちが日常的に使っている洋紙につながっているわけですから、サマルカンドペーパーは現代の紙のルーツとも言えるのです。

  • 写真:トラベルライターサマルカンドペーパー

当時、その高い品質と美しさが高く評価され、コーランや細密画の用紙などに多く用いられたサマルカンドペーパー。全盛期には2,000基もの水車があり、そのうち400基ほどが製紙に使われていました。しかし、19世紀に最後の工房が閉鎖され、紙作りの技術は途絶えてしまいました。

本記事で紹介するコニギル・メロス工房は、1998年にサマルカンドペーパーの復興活動を始めた紙すき工房です。ユネスコやJICAの支援を得て、コニギル村に紙作りのための工房を復元。一度は途絶えてしまったサマルカンドペーパーの製造技術を再現する試みは、現在も続いています。

コニギル・メロス紙すき工房

  • 写真:トラベルライター

工房は、サマルカンドの観光目玉のひとつ、レギスタン広場から車で15分ほどのところにあります。観光地の賑わいとはうって変わった、民家の集まる静かな村の一角。シヨブ川の流域にあり、まぶしい緑と小川の流れに囲まれた小さな工房です。

  • 写真:トラベルライター

紙作りの工程を見学

工房では実際に紙作りの手順を見せてもらうことができます。

1. 紙の原料を取り出す

まず、紙の原料となる桑などを蒸します。こうして柔らかくなった表皮を枝からはがします。はがした皮のうち表面のかたい部分だけをナイフで取り除きます。

  • 写真:トラベルライター

紙作りに使うのは、かたい皮の内側にぴったりくっついていた、この柔らかい皮(靭皮)です。これを煮込むと、縦に走っている繊維が柔らかくなり、ちぎれやすくなります。これが、紙の繊維になるというわけです。

  • 写真:トラベルライター靭皮
  • 写真:トラベルライター靭皮を煮込む

2. 紙の繊維をほぐす

先ほどの靭皮を臼に入れ、杵でひたすら叩いて繊維をほぐします。この杵の動力になっているのが、工房の外にある水車。サマルカンドペーパーの全盛期には400基あったということですが、現在は1基が4つの杵を動かしています。

  • 写真:トラベルライター
  • 写真:トラベルライター
  • 写真:トラベルライター

3. 紙をすいて乾かす

ばらばらになった繊維を水に溶かします。そのすき方は、日本人にもなじみのある和紙をすく方法と同じです。木枠に紙の繊維をすくって、紙を形作ります。すいた「紙」を平らなところに置き、重石をして、さらに空気にさらして乾燥させます。

  • 写真:トラベルライター
  • 写真:トラベルライター

4. 表面を磨く

サマルカンドペーパーの製法で特徴的なのはここから。乾燥させた紙の表面を、石や貝などを使って磨くのです。写真に見えるとおり、磨くのに使う石の表面がつるつるになってしまうくらい、丁寧に丁寧に磨いていきます。

  • 写真:トラベルライター

この作業によって、紙の表面に光沢が生まれ、なめらかに仕上がるのです。サマルカンドペーパーが「シルクペーパー」とも呼ばれた所以はここにあります。また、西洋で用いられていたペンの先が引っかかることがなく、機能面でも考えられた製法であるといえます。

  • 写真:トラベルライター光に透かすと、繊維が見えます

お土産にもおすすめ!サマルカンドペーパー製品

工房内には、サマルカンドペーパーを使った製品を買うことができる小さなショップもあります。カラフルな手描きイラストカードや、カレンダー、栞、カード入れなど、手すき紙ならではのあたたかみが感じられる可愛い小物がいっぱい。かさばりにくいので、手軽なおみやげにもとってもおすすめです。

  • 写真:トラベルライター
  • 写真:トラベルライター

ウズベク人の伝統的な帽子、色とりどりのお面や人形もユニーク。さらに、サマルカンドペーパーは洗っても大丈夫なのだそうで、服やカバンもあります。すべて紙でできているとは、驚きです。

  • 写真:トラベルライター
  • 写真:トラベルライター

隠れた歴史名所

私たちがふだん当たり前のように使っている紙ですが、その歴史の中でサマルカンドは重要な役割を果たしました。コニギル・メロス紙すき工房は、他の観光史跡のようなきらびやかさはありませんが、サマルカンドの知られざる歴史的側面を教えてくれるスポットです。名所めぐりの合間に、訪れてみてはいかがでしょうか。

コニギル・メロス紙すき工房
ウズベキスタン / 工場・施設見学
住所:サマルカンド, ウズベキスタン地図で見る
電話:2366046

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