2019年暮れの森林火災により、ブラフ・ノール山を含むスターリング・レンジ国立公園一帯は焼けてしまいました。しかし驚くべき生命力がそこにはあったのです。森林火災後に再生した植物の生命力を感じる、ブラフ・ノール登山をご紹介します。
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2019年に起こった、オーストラリア史上最悪の森林火災
2019年から2020年にかけて、オーストラリア全土で史上最悪の広範囲の森林火災が起きてしまいました。西オーストラリア州では東部のような酷い火災ではありませんでしたが、今回ご紹介するスターリング・レンジ国立公園一帯のように、一部で広範囲の森林火災がありました。
しかし、スターリング・レンジ国立公園一帯にあるブラフ・ノール登山道は、火災から1年足らずで、草木は青々とした新芽を発芽し、時期になるとワイルドフラワーが咲き誇る状況になっています。そんな強い生命力を感じる登山コースについてみていきましょう。
スターリング・レンジ国立公園
- 出典:www.openstreetmap.org© OpenStreetMap contributors
西オーストラリア州の西南部に位置する、スターリング・レンジ国立公園。首都のパースからは415km、車で4時間半の場所に位置します。
山が少ない西オーストラリア州ですが、スターリングレンジ国立公園では山が連なっており、登山も楽しむ事ができます。春には、ワイルドフラワーが咲き誇ることでも有名です。
- スターリングレンジ国立公園
- オーストラリア / 自然・景勝地
- 住所:Stirling Range National Park WA地図で見る
- Web:https://www.westernaustralia.com/en/Attraction/Sti...
ブラフ・ノール山 (Bluff Knoll)
そのスターリング・レンジ国立公園の中で1番高い山ブラフ・ノールは、標高1,095mと、山が少ない西オーストラリア州の中では高い方です。
ブラフ・ノールの頂上付近では冬になると雪が降り、雪が降る事がない西オーストラリア州で、唯一雪が見られる場所でもあります。
ブラフ・ノール登山をしよう
標高1,095m、距離にして3.1kmの道のりです。所要時間は3〜4時間で、登山レベルは4に値します (最難度はレベル5)。
「ブラフ・ノール見晴らし台」が登山開始地点となり、整備された登山道を進んでいきます。
2019年暮れに起きた森林火災で、多くの植物は焼けてしまいましたが、筆者が訪れた2020年11月時点の1年足らずで、黒焦げた木の幹から若葉が芽吹いていました。
登山中に見られるワイルドフラワーについては後述しますが、登山道脇にはサザンクロスの白い可愛いお花が一際目立っていて、登山者の目を飽きさせません。
黒焦げになったユーカリの木は痛々しいですが、根本や幹から芽吹く若葉から、ほんのりとユーカリの爽やかな香りと、新鮮な空気を感じます。
登山中はオーストラリアの固有種の植物を多く見られますが、こちらはその内のひとつのバンクシアです。
写真は焼けてしまったバンクシアの幹と実ですが、バンクシアの種の殻は固く、森林火事などで加熱されると種の殻が開きます。このように、オーストラリアの固有種の植物と森林火災は深い関係があるのです。
山頂に近くなると、植物の背が低くなり視界が広がります。
山頂の手前では、高山植物のようなカラフルなお花が咲いていました。
ブラフ・ノール山頂
山頂は崖に囲まれているので、崖の淵近くまで行かないようにという、注意書きもあります。
なるほど、崖に囲まれた山頂です。スターリング・レンジの山々が、広大な平地にぽつんぽつんとある景色を眺める事ができます。
キンと冷たい空気が火照った身体に心地良いです。冬にはここで雪が積もっていることもあり、冬の季節には、雲海が目下に広がることもあるそうです。
お花を見ながらゆっくり登れて、楽しい登山道です。途中階段がきつい箇所もありますが、なだらかな箇所も多いので、全体的に楽しみながらの登山になるでしょう。
ブラフ・ノール山で見られる、主なワイルドフラワー
ブラフ・ノールでは、主に8月から12月ごろまで、各種のワイルドフラワーを見る事ができます。その中から抜粋してご紹介します。
サザンクロス
西オーストラリア南西部に、8月から12月ごろまで咲くワイルドフラワーです。花の形が十字になっており、南十字を意味するサザンクロスという名前になっています。お花の形も姿も可愛くて、登山中は何度も何度も写真を撮りたくなってしまうでしょう。パース近郊では見られないお花なので、筆者もこんなに沢山のサザンクロスが見られることに大感動でした。
ペーパーヒースー
ブラフ・ノールの山頂付近で多く見られるワイルドフラワーです。時期になると、山肌に雪が覆ったような光景も見られます。
ベルフラワー
花が下を向いてベルのような形をしているので、ベルフラワーという名がつけられています。2020年11月は、森林火災の影響によって、例年より花の数は少なかったようです。
グラスツリー
森林火災に強く、焼けて黒くなった幹から青々とした針状の葉を再生させます。火災の翌年に花を咲かせる事が多いという生命力の強い植物です。
キンギア
グラスツリーのように火災後にも葉を再生させ、球状の集合花を咲かせる強い植物です。
ユーカリ
火災で真っ黒に焼けてしまった幹や根本から、新芽が力強く成長しています。この新芽の若い緑が、森を明るくし、ほんのりとユーカリの爽やかな香りを放っています。
- ブラフ・ノール
- オーストラリア / 自然・景勝地
- 住所:Stirling Range National Park Bluff Knoll地図で見る
- Web:https://trailswa.com.au/trails/bluff-knoll/print
オーストラリアの自然や、アボリジニの生活とも密着する森林火災
今回は2019年の暮れに起こった森林火災後の様子について紹介しましたが、実はこの森林火災、オーストラリアの先住民アボリジニによって人工的に起こされることもあります。アボリジニは、計画的に森に火を放って森林火災を起こし、大地に新芽の発芽を促し、それを目当てに集まる動物たちを狩るといった慣習があります。このように、森林火災は、オーストラリアの自然の中で古くから頻繁に起きているものでもあります。
そして前述で紹介したバンクシアのように、火災によって硬い殻が開き、種をが出るといったように、火災と深い関わりのある固有種の植物も多くあります。
しかし地球の温暖化によって、オーストラリアでは降水量が激減しており、以前以上に森林火災が起こりやすくなっているというのが現状で、これは近年の大きな問題となっています。
この記事を書いたトラベルライターから一言
今回のブラフ・ノール登山では、火災で再生した植物の生命力を強く感じました。大規模な森林火災にあった他の地域でも、このような植物の再生が始まっている事を、願わずにはいられません。コロナ明けには、生命力あふれ、再生しているオーストラリアに是非お越しください。(bemnty)