
かつて世界のVIPたちをもてなしたイスタンブール旧市街のレストランで、伝統的なトルコ料理を食べてみませんか。創業125年以上の歴史を持つ「パンデリ」をご紹介します。
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エジプシャンバザールにあるレストラン
イスタンブール旧市街のガラタ橋近く、エミノニュの賑やかな広場に面して建つのが「エジプシャンバザール(Mısır Çarşısı)」です。トルコ語で「エジプト市場」を意味するこのバザールは、1664年に完成し、グランドバザールと並ぶイスタンブールを代表する歴史ある屋内市場です。かつては、オスマン帝国にエジプトから運ばれてきた香辛料や薬草の集積地として栄え、別名「スパイスバザール」とも呼ばれています。バザールの中は、色とりどりのスパイス、ナッツ、ドライフルーツ、ハーブティー、トルコ菓子などの店が軒を連ね、独特の香りと熱気に満ちています。地元の人々はもちろん、観光客も訪れ、歩いているだけで五感が刺激される特別な場所です。

- エジプシャンバザール
- イスタンブール / 市場・朝市
- 住所:Fatih, Rüstem Paşa, Istanbul地図で見る
レストラン「パンデリ」はなぜ特別か
そんなエジプシャンバザールの入口の上階にひっそりと佇むのが、イスタンブールで最も有名な老舗レストランのひとつ「パンデリ(Pandeli)」です。創業は1901年で、オスマン帝国末期から続く歴史を誇るこの店は、イスタンブールの文化的なランドマークともいえる存在です。
パンデリの特別さのひとつは、訪れた著名人たちの顔ぶれにあります。建国の父・ムスタファ・ケマル・アタテュルクをはじめ、ウィンストン・チャーチル、オードリー・ヘプバーン、クイーン・エリザベス2世、ジャクリーン・ケネディといった世界のVIPたちが足を運びました。彼らの足跡が残るレストランというだけでなく、トルコ料理の伝統を守り続けている点でも高い評価を受け、近年ではミシュランのビブグルマンに選ばれるなど、品質が保証されています。歴史、格式、味のすべてが揃った、まさに特別な一軒なのです。
パンデリで体験できるオタンティクな空間
パンデリの店内に一歩足を踏み入れると、そこにはまるでオスマン帝国時代にタイムスリップしたかのような美しい空間が広がります。青いタイルで彩られた壁、アーチ型の天井、重厚な木の家具と真鍮の装飾が織りなすインテリアは、古き良きトルコの雰囲気そのもの。窓際の席からは、金角湾を見下ろす景色が広がり、外の喧騒を感じながらもゆったりとした時間が流れます。
この独特の雰囲気もまた、パンデリが特別とされる理由のひとつです。観光地のど真ん中にありながら、店内は静かで落ち着いていて、まるで隠れ家のよう。青と白のタイルが放つ清涼感と、オリエンタルな温かさが同居する空間は、訪れる人々の記憶に深く残ります。
パンデリの料理
パンデリでは、古典的なトルコ料理を中心に、上品かつ素朴な味わいの料理が楽しめます。名物のひとつが、子羊の肉を柔らかく煮込み、ピラフとともに供される「フルンダ・クズ」や、トマトソースで味付けしたミートボールの「イズミル・キョフテ」。また、オーブンで焼かれたナスの詰め物料理「イマム・バユルドゥ」も人気です。
素材の味を生かしながら丁寧に調理された料理は、奇をてらわず、トルコ家庭料理の王道を味わえるのが魅力です。デザートには、カザンディビやライスプディングといった甘味が用意され、食後のトルココーヒーや紅茶とともにゆったりとした時間を締めくくれます。(季節の食材が使われるためメニューは変更になる可能性もあります。)
おわりに
エジプシャンバザールの喧騒のすぐ上にありながら、歴史と格式に包まれた特別な空間が広がるパンデリ。ここでは、バザールでの買い物の合間に、オスマン帝国時代の面影を感じながら、伝統的なトルコ料理を味わうことができます。百年以上の時を超え、数々の著名人に愛され続けてきたこのレストランは、イスタンブールの魅力を象徴する場所のひとつです。
イスタンブールを訪れたなら、ぜひこの青いタイルの空間で、歴史の香りとともに至福のひとときを体験してみてください。