洞爺湖町(虻田郡)

噴火の怖さを未来に伝える。北海道・有珠山西山山麓火口散策路を歩く

取材・写真・文:

訪問エリア:43都道府県

2021年6月14日更新

5,455view

お気に入り

写真:やまざき にんふぇあ

北海道の洞爺湖と内浦湾の間にある737メートルの活火山、有珠山。1910年の噴火で洞爺湖温泉、1943年~1945年の活動で昭和新山を作りだし、1977年の噴火では500億円を越える経済損失を発生させるなど、活発な火山活動を繰り返しています。そしてそんな有珠山が、2000年にも噴火を起こしました。人的被害はなかったものの、国道230号が断層によって不通になり、周囲の建物が噴石により被害を受けました。今回は、その時の噴火の脅威を見て学ぶことができる有珠山西山山麓火口散策路をご紹介します。

この記事の目次表示

2000年3月31日、北海道・有珠山噴火

  • 写真:やまざき にんふぇあ

2000年3月27日、有珠山噴火の予兆となる群発地震が発生し、地殻変動が起こりました。4日後の3月31日には有珠山西側の西山山麓で噴火が発生し、4月1日には有珠山北西の金毘羅山でも噴火が発生します。

ですが、過去の経験からハザードマップが作成されていたこと、周辺住民の意識が高く事前に15,000人以上が避難をしていたことから、1人の犠牲者も出ませんでした。人的被害こそなかったものの地殻変動と噴石により国道230号や周囲の建物は大きな被害を受け、使用できなくなりました。

当時の被害の様子を見て学べる西山山麓火口散策路

2002年になると、災害にあった建物や道路をそのまま残した西山山麓火口散策路が整備され、当時の被害の様子を歩きながら見て学ぶことができるようになりました。

北口と南口2つの出入り口がありますが、バスは北口にしか停まらないので、自家用車・レンタカー・タクシーを使わない場合は北口から入ることになります。

この散策路は洞爺湖有珠山ジオパーク内にある12個の散策路のうちの1つで、全長1.8キロ、1時間強で回れます。ただし周遊路ではなく、北口から入って南口から出ても帰る手段がないため、タクシーを呼ぶか引き返す必要があります。引き返す場合、休憩も入れて2時間半は見ておきましょう。

洞爺駅からバスで15分ほどの「西山火口停留所」で下車すると、目の前に消防署だった建物があります。地殻変動により床は4度傾いていますが、解放されており出入りすることができます。火山資料が展示されていますが量は少ないため、どちらかというと休憩場所として使うと良いでしょう。

以下に、有珠山西山山麓火口散策路内の主な見どころをご紹介します。

元は国道だった西山火口沼

  • 写真:やまざき にんふぇあ

元消防署の裏にある水たまりは、「西山火口沼」と呼ばれています。元は国道230号でしたが、地面が隆起してできた窪地に水がたまり沼となったものです。

電柱や廃屋、「止まれ」の標識、乗り捨てられた白い車が、かつてここが車道であったことを物語っています。

階段状に断層化した町道泉公園線

  • 写真:やまざき にんふぇあ

1977年の噴火の際に避難路として作られた町道泉公園線も、噴火で使えなくなりました。大地が70メートルも隆起した結果、地表が引っ張られて階段状に割れ、陥没してしまっています。当然立ち入りはできませんが、となりに散策路が作られており、さらに先に進むことができます。

被災した「わかさいも本舗」の工場

  • 写真:やまざき にんふぇあ

第二展望台から見える巨大な建物は、北海道が誇る銘菓、わかさいもを製造していた「わかさいも本舗」の工場です。被災により、一時的にわかさいもの生産拠点を登別工場に移すこととなりました。

入学式の準備中だった旧とうやこ幼稚園

  • 写真:やまざき にんふぇあ

とうやこ幼稚園は、入園式の準備をしている時に被災しました。

  • 写真:やまざき にんふぇあ

噴石により穴だらけとなった幼稚園の中には、様々な備品が災害当日のまま残されています。

  • 写真:やまざき にんふぇあ

敷地内には壊れた幼稚園バスや手洗い場、遊具が残されています。

ちなみに、とうやこ幼稚園は、このあと無事に別の場所へ移転されました。

噴火の脅威を今に伝える建物たち

散策路の周辺には、まだ当時の被害を物語るものが数多く残されています。

  • 写真:やまざき にんふぇあ

草木におおわれた一軒家。家の前には自動車がとまっています。

  • 写真:やまざき にんふぇあ

折れた電柱。かつてここを車が50キロも出して走っていたことが信じられません。

正しく火山を学びつき合っていこう

世界にある活火山の7%が集中する火山大国、日本。火山は恐ろしい被害をもたらす一方、土壌を豊かにしたり、温泉を作りだすというメリットも合わせ持ちます。現に、有珠山のふもとの洞爺湖温泉も噴火により誕生した温泉地です。

いざという時のため火山の脅威を学ぶのも大切ですが、必要以上に恐れたり忌み嫌ったりせずに、正しい知識を持ってつき合っていきたいものです。

関連リンク

洞爺湖有珠山ジオパーク

有珠山
壮瞥町(有珠郡) / 自然・景勝地
住所:北海道有珠郡壮瞥町字昭和新山地図で見る
Web:http://wakasaresort.com/usuzan/
有珠山西山山麓火口散策路
洞爺湖町(虻田郡) / 自然・景勝地 / ハイキング
住所:北海道虻田郡洞爺湖町地図で見る

洞爺湖町(虻田郡)の旅行予約はこちら


この記事で紹介されたスポットの地図

関連するキーワード

※記事内容については、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。

あなたにオススメの記事

同じテーマの記事


【国内旅行】12月におすすめの穴場旅行先15選!

温泉とイルミネーションが楽しめる「洞爺湖温泉」や、珍しい青いシクラメンが咲く「浜名湖ガーデンパーク」、12月中旬まで美しい紅葉が見られる国宝の「富貴寺」など、1...


北海道のおすすめドライブスポット35選!車で行きたい絶景スポット特集

函館夜景の人気スポット・函館山展望台や、世界中から観光客が訪れる白金青い池、「天下の絶景」と謳われる美幌峠など、車で行きたい北海道のおすすめ絶景ドライブスポット...

道央エリアのおすすめ観光スポット21選!

アイヌ語で“神”の名がつけられた神威岬や、強風が吹き荒ぶ風光明媚な襟裳岬、工場見学や試飲が楽しめるニッカウヰスキー余市蒸溜所など、道央エリアにあるおすすめ観光ス...

【2024】北海道の人気観光スポットTOP56!旅行好きが行っている観光地ランキング

小樽運河に大通公園、函館山展望台など北海道の観光スポットを、トリップノートの9万2千人を超える旅行好きのトラベラー会員(2024年1月現在)が実際に行っている順...

【北海道】夏のおすすめ観光スポット32選!夏の絶景に出会える観光地特集

夏の人気観光地・北海道。知床五湖や釧路湿原、洞爺湖など雄大な絶景を見られる観光スポットから、ラベンダーやひまわりなどお花畑スポットまで、夏の絶景に出会える北海道...

この記事を書いたトラベルライター

一人旅好きのブロガー
国内で一人旅ばかりしているブロガーです。メジャーではないけどマニアックすぎない、「もっと評価されるべき」スポットを中心に紹介します。個人ブログやツイッターで今までに訪れた場所について書いたり、ここではない某所でもトラベルライターとして活動したりしているので、ぜひ参考にして頂ければと思います。
http://85irimusume.doorblog.jp/

寿司に神社に恐竜まで!福井駅周辺の面白スポット4選

東尋坊や永平寺などの観光地が有名な福井県。日本総合研究所が2016年に発表した情報によると、日本で1番幸福度が高い県とされています。そんな意外な実力を隠し持つ福...


城崎温泉から渡し船で行く!柱状節理が広がる不思議な洞窟「玄武洞」

近畿地方を代表する温泉、城崎温泉。そこから車で10分ほどのところに、大量の石柱が建ち並んでいるように見える奇妙な洞窟、玄武洞があります。今回は、城崎温泉から気軽...


3億年かけて作られた神秘の洞窟、山口県・秋芳洞

山口県美称市に広がる日本最大級のカルスト台地、秋吉台。元はサンゴ礁だった石灰岩が、3億年以上もの時をかけて堆積してできた奇跡の風景です。さらに秋吉台の下には、大...

開放的すぎてほぼ丸見え!鳥取県・三朝温泉の【河原風呂】

鳥取県を代表する名湯、三朝温泉(みささおんせん)。世界有数のラドン含有量を誇るラジウム温泉であり、その効能の高さで名が知られています。ですが、三朝温泉の注目すべ...

鯉が泳ぐ城下町。「山陰の小京都」島根県・津和野を歩く

「山陰の小京都」の異名を誇る島根県・津和野。津和野藩亀井氏の治めていた城下町であり、鯉の群れが泳ぐ水路、1,000の鳥居を持つ稲荷神社、畳敷きの教会、西周や森鴎...

トラベルライターインタビュー Vol.3 Emmyさん

【トラベルライターインタビューVol.3】一人旅を応援する記事を多数執筆!Emmyさんならではの人気記事執筆のコツやその原動力に迫ります