三重県の伊勢湾に浮かぶ、周囲約4キロの離島、神島。三島由紀夫が1954年に発表した名作『潮騒』の舞台となりました。鳥羽港からフェリーで45分ほどの距離にあり、観光地化されておらず、離島特有の雰囲気が感じられる島です。 今回は、60年以上前に新治と初江(『潮騒』の主人公とヒロイン)が純愛をくり広げた舞台である神島を紹介します。
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階段だらけの入り組んだ町並み
神島は小さな島のため、2時間ほどで1周できます。ただ、全体的に高低差が大きく、1周には思った以上に体力が必要です。
高低差が大きいのは住宅街も例外ではありません。住宅街は階段が多い上に、道幅はせまく、道は入り組んでおり、さながら迷路のようになっています。
かつて唯一時間が分かる場所だった時計台
住宅密集地の真ん中辺りにある背の低い時計台。この時計台が置かれた時期は定かではありませんが、かつては島で唯一の時計でした。
富山の置き薬屋が神島を訪れた際に、多くの島民が薬を購入してくれた礼に作ったものです。時計本体は故障により何度か交換されています。
三島由紀夫が滞在した民家の前にある洗濯場
時計台を通りすぎると、まもなく小さな水路のようなものが姿を現します。ここはかつて洗濯場として使われ、『潮騒』でもここで洗濯をする場面が描かれています。
また向かいにある民家には、取材に来た三島由紀夫が2回にわたり滞在しました(一般の家なので当然外からの見学のみとなります)。
200段を越える石段を持つ八代神社
住宅街を抜けると、200段もの石段と鳥居が現れます。石段を登りきった先には八代神社という神社があります。創建は不詳で、祭神として、誰もが知る綿津見神・天照皇大神・須佐之男命を祀っています。1月1日の未明には、無形民俗文化財であり、奇祭として知られるゲーター祭が行われる場所でもあります。
『潮騒』では、新治と初江がお参りに行った場所、そして逢い引きしようとして失敗する場所として登場します。ちなみに新治はよく鍛えているため、この石段を登っても息切れしないそうです。
100年以上前海の安全を守り続ける神島灯台
神島港から上陸し30分ほど歩くと、小さな灯台が姿を現します。1908年に軍艦「朝日」が座礁事故を起こしたことをきっかけに設置が決まり、1910年に完成します。
当時、灯台の明かりは石油灯があたり前でしたが、この灯台には日本で2番目に自家発電による電気灯が据えつけられました。
『潮騒』では、ここに灯台長が住んでいます。主人公の新治は中学時代成績が悪く卒業が危ぶまれていましたが、灯台長が中学校の校長にかけ合ったおかげで無事に卒業できました。新治は灯台長に借りがあるため、時々魚を届けにこの灯台を訪れています。
『潮騒』名シーンの舞台。監的哨跡
さらに進んでいくと、今度は小さな廃墟が姿を現します。ここは監的哨(かんてきしょう)という、旧陸軍省が砲弾の着弾点を観測した施設の跡です。
『潮騒』では新治が焚き火を飛び越えて初江と抱き合う重要なシーンの舞台となりました。
美しいカルスト地形と「ニワの浜」
監的哨跡を通り過ぎると、白いカルスト地形が見えてきます。白く美しいこの岩場は、石灰岩が風雨にさらされてできたものです。その下の浜はニワの浜と呼ばれています。
『潮騒』では子供たちがカルスト地形に隠れて西部劇ごっこをしたり、ニワの浜に海女さんが集まったり、行商人が訪れる描写があります。
浜と道をへだてたところには防風用の木の柵があり、その奥には学校があります。住宅街の中心からやや離れた場所ではありますが、今でも子供たちが集まる場所であることに変わりはないようです。
他の観光地とも組み合わせやすい神島
多くの見どころがある上に1周しても2時間程度で回れる神島ですが、せっかくなので、他の観光地と組み合わせてみるのはいかがでしょうか。
例えば、朝早くのフェリーで神島へ向かい昼に戻ってきて、フェリー乗り場である鳥羽マリンターミナルから徒歩12分ほどのところにある鳥羽水族館へ行くのも良いですし、伊勢神宮まで足を伸ばすのも良いでしょう。
また、1日で神島とはしごするには時間が厳しいですが、この鳥羽マリンターミナルからは答志島や菅島など、神島に負けない強い個性と魅力を持つ離島へ行くこともできます。
三重県・鳥羽周辺には選びきれないほど魅力的なスポットが数多くあるので、事前に旅の計画を立てて、効率良く神島を始めとしたスポットを回ってみてくださいね。
関連リンク
- 神島
- 鳥羽 / 島・離島
- 住所:三重県鳥羽市 神島地図で見る
- Web:https://www.city.toba.mie.jp/kikaku/ritoushinkou/k...