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【トランスニストリア(沿ドニエストル)】東欧の川沿いに佇む静かな未承認国家

取材・写真・文:

東京在住
訪問エリア:191ヶ国

2023年6月27日更新

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写真:toshel

東欧モルドバ共和国とウクライナ国境付近に南北へ延びるドニエストル川沿岸には、多くの人々が静かに定住し、独立国家を保っています。今回は、そんな未承認国家トランスニストリアの首都ティラスポリをご紹介します。

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未承認国家トランスニストリアができあがるまで

ソビエト連邦崩壊によって誕生した15の独立国家

1991年のクリスマスにソビエト連邦が崩壊した際、15の自治州が次々と独立しました。トランスニストリアがある東欧の国モルドバもその一つで、複数の自治州からなる共和国です。モルドバに住む人種は主にルーマニア人、公用語もルーマニア語というほぼルーマニアの小国です。

しかし、モルドバの東方に位置するドニエストル川沿岸には、ロシア語を話すロシア系住民が多く住む地域がありました。それが、今回紹介する未承認国家・トランスニストリアがある地域となります。

モルドバ共和国への反発

ソビエト連邦崩壊により、位置的にモルドバ共和国に組み入れられたトランスニストリアは、その決定に猛反発!1992年には戦争にまで発展します(トランスニストリア戦争)。

今も昔も、非常に静かに音を立てず流れる川沿いでは、戦争が起こりやすいと云われていますね。この静かな川岸で、そう遠くない過去に戦火を交えていたのですね。

  • 写真:toshelドニエストル川
  • 写真:toshelドニエストル川

戦争終結後、トランスニストリアは世界的にもモルドバ共和国の一自治州と認識されていながら、主権は及んでおらず、一国家を主張して独自通貨を使用するなど、未承認のまま27年(2019年時点)事実上の独立状態にあります。

  • 写真:toshel

独立後は、厳しい経済状況が続く

事実上の国家とはなっていますが、人口は2015年統計で48万人。日本では東京都葛飾区の人口より少し多いくらいで、その人口も徐々に減少傾向にあります。実際、首都ティラスポリを歩いていても、歩行者は少なく、車の往来が多いわけでもないため、どこか寂しささえ感じます。

  • 写真:toshelキリム文字で「ティラスポリ」と書かれていると思われる

また、GDPはおよそ10億USドル(約1,100億)と、日本の中小企業並み。目立った大きな産業もなく、どうやってこの国が成り立っているのか不思議です。街の雰囲気や、人々の様子を見ていると、派手に暮らしている人はほとんどおらず、皆様、慎ましく生活されている様子が伺えます。

豆知識:国名の呼び方の違い

「トランスニストリア」はモルドバで使用されるルーマニア語の呼び名で、ロシア語では「沿ドニエストル」と呼ばれています。

  • 写真:toshel政府機関建築

それでは、未知の国トランスニストリアへ出発です。

トランスニストリアの首都ティラスポリへの行き方

トランスニストリアへは、モルドバの首都キシナウから陸路で行くことが出来ます。

バスの行き方

キシナウのバスターミナルは、街の中心部にあります。

  • 写真:toshel

バス(大型バン)のチケットは外にあるボックスで購入します。ティラスポリ行きは日中、およそ15~25分に一本の頻度であります(片道およそ39モルドバレイ=約250円 2018/9現在)。チケットボックスのすぐ目の前にある乗り場から出発します。

キシナウのバスターミナルを出発すると、なだらかな丘陵が一時間半ほど続きます。

  • 写真:toshel

モルドバ側のボーダーに到着すると、一旦降りてパスポートチェック。ここでは、特に何の事務処理も不要です。

  • 写真:toshel
  • 写真:toshel

すぐにバスへ戻り、その後ほどなくしてトランスニストリア側のボーダーに着きます。パスポートを渡すと入域許可のレシート(VISA)を発行してもらえます。

  • 写真:toshel

このレシートは、一日有効のVISAとなり、トランスニストリアを去る際に提示する必要がありますので失くさないように!また、宿泊が伴う一日以上の滞在には、事前に別のVISAの申請が必要となります。

モルドバーキシナウ 中央バスターミナル
モルドバ / 駅・空港・ターミナル
住所:Gara Centrala Chisinau Strada Mitropolit Varlaam 58 Chișinău Moldova地図で見る

列車での行き方

列車で行く場合、キシナウ駅からウクライナのオデッサ行きへ乗車します。車中では特に入国審査がないため、万が一トランスニストリア内で何か不測の事態があった場合、色々と面倒になりそうです。

また、列車でトランスニストリアへ入域した場合は、必ず列車で移動する必要があります。道路で国境を超える場合は必ずボーダーを通るため、許可証不携帯ということになります。ご注意を!

キシナウ国際列車駅
モルドバ / 駅・空港・ターミナル
住所:キシナウ国際列車駅地図で見る

トランスニストリアの首都ティラスポリの観光スポット

  • 写真:toshel

小規模な街であるトランスニストリアの首都ティラスポリは、中心を東西に走る「10月25日通り」沿いにほぼ観光名所が集中し、3時間もあれば余裕で観て周れる大きさです。

  • 写真:toshel10月25日通りにある建物
  • 写真:toshel

それでは、10月25日通りの東端から西へ歩いてみます。

10月25日通り
モルドバ / 町・ストリート
住所:10月25日通り Tiraspori地図で見る

演劇場

10月25日通りの東端に劇場があります。

  • 写真:toshel

ここでは、歌劇からコメディまで様々な演劇が毎日催されています。

  • 写真:toshel
ドラマ&コメディシアター
モルドバ / エンターテイメント
住所:Drama and Comedy theatre tiraspoli地図で見る

City Hall

こちらは市役所です。白い列柱ファサードを持つ印象的な共産主義の建物で、10月25日通りの中でも特に印象的なランドマークの一つです。建物の前の広場の中心にレーニンの銅像があります。旧ソビエトから独立した国々が、勢いレーニン像を破壊し撤去していく中、この街にはレーニンの銅像があちこち点在します。最近は、ロシア国内でも少ないですので貴重ですね。

  • 写真:toshel

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地球旅~現在192ヵ国~
行ったことのない国を中心にひとり旅しています。他国の歴史、文化、宗教、遺跡、そしてそこに住む人々の考え方に興味があります。

車の運転が好きなので、海外ではドライブ旅を楽しんでます。普段は会社員です。

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