宇陀市にある室生寺は、金堂や本堂、五重塔といった建造物や、十一面観音像などの仏像も鑑賞できる、観光客に人気の高いお寺。春に咲くシャクナゲで有名ですが、秋の紅葉もとても美しいです。門前では、食事や買い物も楽しめます。
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室生寺とは
室生寺(むろうじ)は、奈良県宇陀市の室生川沿いにある、真言宗室生寺派の寺院です。奈良時代末に興福寺の僧、賢憬(けんけい)が創建し、その後、弟子の修円(しゅうえん)が、現在の寺の姿を整えたとされています。
同じ真言宗の和歌山県高野山「金剛峯寺」が、女性の参詣を禁ずる「女人禁制」としていたのに対し、室生寺では参詣を許可していたため、女人高野(にょにんこうや)とも呼ばれ、古くから女性の信仰を集めてきました。
境内には、国宝の本堂や金堂のほか、本尊釈迦如来像、十一面観音立像などの木造仏像もあり、見どころは多いです。また、春のシャクナゲや秋の紅葉など、四季折々の景色も楽しめます。
境内を散策しよう
太鼓橋
バス停や駐車場から門前町を歩くと、美しい太鼓橋が見えてきます。室生川にかかるこの橋を渡れば、室生寺の境内です。橋の上からは、清らかな室生川の流れや周囲の山々の緑が眺められます。
仁王門
受付を入ってすぐに見えるのが、仁王門です。元々あったものは元禄時代に焼失したため、現在の門は昭和40年(1965年)に再建されました。堂々とした立派な門が、このような静かな山間の寺院にあることに驚かされます。
鎧坂(よろいざか)
仁王門をくぐって左に曲がると、長い石段が見えてきます。こちらは、鎧坂と呼ばれており、自然の石を積み上げて作られているそうです。美しい石段は、歴史を感じるお寺の景観に溶け込んでいます。
金堂
鎧坂の石段を登りきった場所にあるのが、金堂です。平安時代に建てられたもので、国宝に指定されています。屋根は、杮葺(こけらぶき)といって、薄い板を幾重にも重ねて造られているのが特徴です。また、建物前方が舞台のように張り出した懸造(かけづくり)になっていますが、これは江戸時代に付け加えられたものだそうです。
建物内部には、いずれも平安時代に造られた十一面観音立像、文殊菩薩立像、本尊釈迦如来立像、薬師如来立像、地蔵菩薩立像の5つの仏像が安置されています。これらの前には、鎌倉時代の十二神将立像が配置されています。
弥勒堂(みろくどう)
弥勒堂は、金堂の左手に建っている御堂です。鎌倉時代前期に建てられたもので、重要文化財に指定されています。内部には、ご本尊の弥勒菩薩像が安置されています。
本堂(灌頂堂)
さらに石段を登ると、本堂が建っています。入母屋造り、檜皮葺の建物は、鎌倉時代の後期の延慶元年(1308年)に建立されました。こちらは、真言密教の重要儀式の灌頂(かんじょう)を行う御堂であるため、灌頂堂とも呼ばれています。建物内には、平安時代の如意輪観音菩薩が安置されています。
五重塔
本堂から奥の院へ向かう参道沿いには、五重塔があります。奈良時代後期に建てられた塔は、法隆寺に次いで古いものだそうです。
1998年の台風の際、倒木が屋根を直撃して大きな被害を受けましたが、その後復旧工事が行われ、2020年現在は美しい姿を取り戻しています。檜皮葺、丹塗りの美しい塔は、室生寺の代表的な景観となっています。
奥の院への参道を少し登ると、塔の全体を眺めることができます。室生寺の五重塔は、高さは約16メートルほどと低く、屋外にある木造五重塔では国内で最も小さいですが、ここから見るとそのコンパクトさが良く分かるでしょう。
奥之院
五重塔の脇の石段をしばらく登ると、奥之院があります。こちらには、鎌倉時代の建築である御影堂(みえどう)が建っています。板を二段に葺いた建物内部には、弘法大師空海像が祀られています。奥之院へは長い石段が続きますが、時間と体力のある方は訪れてみてください。