矢田寺は、奈良県大和郡山市の郊外にある寺院です。「あじさい寺」とも呼ばれており、例年6月から7月にかけて、アジサイが美しく咲くことで知られます。その数は60種約10,000株もあり、境内のいたるところで鑑賞できます。
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矢田寺(やたでら)とは
矢田寺は、奈良県大和郡山市にある高野山真言宗の寺院です。正式名称を金剛山寺(こんごうせんじ)と言い、天武天皇5年(676年)に、天皇の勅願によって開かれたとされています。ご本尊として、延命地蔵菩薩が祀られており、古くから地蔵信仰の中心として栄えてきました。
境内には、本堂、御影堂、開山堂などの建造物のほか、北僧坊、大門坊、念仏院、南僧坊の4つの僧坊が立ち並んでいます。
毎年初夏には、境内に植えられた10,000本ものアジサイが開花するため、「あじさい寺」として親しまれており、多くの観光客で賑わいます。
境内を散策しよう
塔頭4ヶ坊
境内には、北僧坊、南僧坊、大門坊、念佛院の4つの小寺院が立ち並んでいます。これら4つの塔頭(たっちゅう)寺院を総称して矢田寺と呼んでいます。
これらは、現在では、僧侶の生活や参拝者への食事提供の場となっています。また、大門坊では、定期的に般若心経を写経する会が開かれています。所要時間は40分~1時間ほどで、用具も用意されているそうですから、気軽に参加してみてはいかがでしょうか。
本堂
本堂は、ご本尊の木造地蔵菩薩が祀られている入母屋造り、本瓦葺きの建物です。室町時代の再建とされる建物で、奈良県指定文化財となっています。
厨子(ずし)という仏具からは、正徳2年(1712年)の棟札が残されており、江戸時代の中頃に大修理が行われていたようです。また、平成6年から12年にかけても、解体大修理が行われたため、重厚で美しい姿が維持されています。
本堂には、ご本尊のほかにも、十一面観音立像、試みの地蔵尊、阿弥陀如来坐像が鎮座しており、特別拝観の期間に公開されています。
みそなめ地蔵
その昔、農家の女性が、自家製の味噌の味が悪くなって困っていたところ、ある日夢に出てきたお地蔵さまが「私にその味噌を食べさせてくれたら、良い味にしてあげよう」と告げたそうです。そこで女性は矢田寺に向かうと、夢に現れたお地蔵様がおられたため、味噌を口に塗ったところ、悪くなった味が直ったそうです。
そのことを聞いた近隣の人々は、新しく味噌を作る際に、良い味になるようにとお地蔵様の口もとに塗るようになったため、「みそなめ地蔵」と呼ばれるようになりました。
春日神社
春日神社は、矢田寺境内にある神社です。室町時代のものとされる建造物は、一間社春日造りの檜皮葺で、重要文化財にも指定されています。もともとは、矢田寺の鎮守社であったとされています。
約1万株のアジサイを鑑賞しよう
矢田寺のアジサイを鑑賞してみましょう。境内の至る所で見られるため、極端に混雑することはなく、ゆっくり楽しめるでしょう。
※新型コロナウイルス感染拡大防止のため、2020年のあじさい園開園は中止となりました。2020年7月15日までは、境内への立ち入りもできませんので、ご注意ください。(2020年5月20日現在)
あじさい園
こちらは、本堂周辺に咲くアジサイです。本堂や風情ある石畳の道とともにアジサイが鑑賞できる、おすすめのスポットです。
本堂裏の石段や庭園周辺は、比較的人が少なく、ゆっくりと鑑賞できるでしょう。このあたりに咲く水色のアジサイは、とても美しいです。
念仏院周辺には、まとまった数のアジサイが植えられており、特に見ごたえがあります。休日などはやや混雑しますが、比較的広いので、観賞はしやすいです。
起伏のある園内に、青や水色といった涼し気なものから、赤やピンクの明るいものまで咲き、訪れた人の目を楽しませています。
筆者は、やや暑い晴れた日に訪れましたが、こちらのアジサイは萎れることなく咲いていました。生き生きと咲くアジサイを見ると、梅雨のうっとうしさも忘れてしまうかもしれませんね。
多くの人がカメラやスマートフォンで花を撮影していますが、通路は狭く、段差や坂道もあるため、少し離れた場所から撮るほうが安全かもしれません。
あじさい見本園
念佛院そばのあじさい園から石畳の道を挟んだ北側には、あじさい見本園もあります。こちらでは、品種ごとに植えられたアジサイが鑑賞できます。ヤマアジサイやガクアジサイのほか、珍しい品種も多数植えられているので、忘れずに鑑賞してくださいね。
食事や奈良盆地の景色も楽しもう
僧坊でいただく料理
矢田寺のすぐ近くには、食事がとれる飲食店がありませんが、例年アジサイのシーズンには境内の僧坊で料理が提供されています。メニューは、精進料理のお弁当やカレーライスなどですが、各僧坊で内容、価格などは若干異なるようです。
筆者は、北僧坊でカレーライス(1,000円 税抜き)をいただいてみました。サラダや酢の物が付いており、カレーもお寺で作られているようです。野菜の素揚げも添えられているカレーは、味もフルーティーでなかなか本格的です。風通しの良い部屋で静かに味わえるのも魅力ですね。
料理は、予約が必要というわけではありませんが、多くの人が訪れる週末などには売り切れることもありそうです。こちらで是非食事を楽しみたいという方は、事前に予約をするか、境内の散策前に問い合わせると良いでしょう。
矢田寺から望む奈良盆地
矢田山の中腹にある矢田寺は、境内からの景色も素晴らしいです。麓からの長い階段を登り切ったあたりからは、大和郡山市内や隣の奈良市などが一望できます。
お時間のある方は、本堂裏山にある「八十八ヶ所霊場」を巡ってみてはいかがでしょうか。こちらは、大正時代に開かれたもので、四国霊場のお寺のご本尊と弘法大師を石仏で現したコースを巡拝することができます。1周約3.5kmあり、矢田山の自然や奈良盆地を一望する景色も楽しめるそうですよ。
- 矢田寺(金剛山寺)
- 奈良 / 寺 / 女子旅 / 花畑(6月) / 花畑(7月) / あじさい名所
- 住所:奈良県大和郡山市矢田町3549地図で見る
- 電話:0743-53-1445
- Web:http://www.yatadera.or.jp/
この記事を書いたトラベルライターから一言
2019年6月に、矢田寺を訪れてみました。山門から境内までは急な階段が続いており、息を切らしながら登りましたが、風情ある石畳の道や美しいアジサイの花を見ると、とても癒されました。みなさんも、ぜひアジサイの季節に訪れてみてくださいね。(ゆきたか)