2019年には新しい天皇がご即位されます。歴代天皇がご即位されるとき、岐阜県位山で産出されたイチイの木でつくられた勺が献上されます。古文書にも「位の山のイチイの勺」の記述がみられることから相当に古くからのしきたりであったことが伺われます。由緒ある行事を担う高山の水無神社では、ご即位に先立ち2017年秋に位山のイチイの木の切り出しが行われました。今回は位山に奥宮をもつ高山市水無神社の正式参拝などご紹介します。
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飛騨一之宮水無神社のご祭神は水無神(みなしのかみ)
筆者が水無神社に参拝した日は、台風の接近であいにくの雨。秋口だったため、七五三の旗が立っています。
そぼ降る雨の中、多くの人の参拝の声を包み込んで、静寂を感じさせる威容を見せています。
白川神社とねじの木の由来
境内に入ると最初、右手にご鎮座するのが白川神社です。世界遺産にも登録されている合掌造りの里、白川村の一部は、御母衣(みほろ)ダムの湖底に沈んだため、村の産土神(うぶすながみ)である白山神社が土地を無くしました。氏子たちも散り散りに離散する中で当地に遷座し、氏子たちの心のより処となったということです。
境内には、ねじの木が保存されています。
直系1.5m、高さにして数十mあったという桧が、水無神社大鳥居の横にあり、社家や民家の日陰となっていたそうです。そのため普請に使おうと相談し斧を入れようと決めた時、一夜にして幹から梢に至るまでねじ曲がってしまいました。
里人は驚いて伐採を取りやめ神にわびたと言います。神霊の宿るご神木は、その後枯れてしまったのですが、神宿るねじの木として保存されているのです。
水無神社ご祭神水無神(みなしのかみ)のこと
筆者が訪れた際は、昇殿しての正式参拝の予定でしたが、まずはご挨拶のお参りを。
ご祭神は御歳神(みとしのかみ)、大己貴命(おおなむちのみこと)、三穗津姫命(みほつひめのみこと) 、少彦名命(すくなひこなのみこと)、天火明命(あめのほあかりのみこと)ほか10柱です。867年にはすでに従五位上の神位を授けられていることから、相当な古社であることがわかります。
社名は「みなし」「みずなし」とも呼ばれ「水主」から変化したという説もあります。北は富山に、南は尾張に通じ、東に信濃の通じる交通の要所であり、霊峰白山、御嶽山に挟まれた土地柄、水を日本海側と太平洋側に分ける「分水嶺(ぶんすいれい)」に位置しており地勢上、水主の地位にふさわしい場であるといえます。
昇殿して正式参拝をしよう
さっそくお宮に昇殿しましょう。まずは控室にて順番を待ちます。
本殿前にある樹齢800年の銀杏の木に癒される
拝殿の左側に本殿への入り口が供えられています。お庭の端正さに見とれてしまいます。
渡り廊下に足を踏み入れると、手前に銀杏の木が本殿に入る人を迎えてくれます。昇殿しない場合は見ることができない光景です。
樹齢はおよそ800年。乳頭が垂れ、幹にイチイ、ナラ、ケヤキ、クルミなどのヤドリギを抱いています。縁結びのご神木として霊感を受ける人も多いようです。
生きびな様のお祭り
当社の珍しい行事として4月3日に行われる「ひなまつり」があります。当日は飛騨一円から集められた美女たちが「生きひな様」として祭りの主役を務めます。ひな祭りとは本来、幸せな結婚を願うお祭りです。
水無神社でご縁結びのお祈りをすれば銀杏のご神木のご神威もいただけて、きっと叶うに違いありません。
日時/4月3日 10:30~16:00
開催場所/飛騨一宮水無神社
問い合わせ先/0577-53-2211
待ち時間にしばしたたずみ、銀杏のかあさんの温かみを浴びること数分。とても気持ちが安らぎます。
”みつは”に出会える!?昇殿参拝について
本殿内部の写真はご遠慮もうしあげましたが、祭壇は厳かにしつらえられ、修祓(しゅばつ、祓い清め)、降神(こうしん、神様をおまねきする)、献撰(けんせん、奉納する)、祝詞奏上(のりとそうじょう)、玉串奉奠(たまぐしほうてん、神様を一度いただきお戻しする)、撤饌(てっせん、お供え物を下げる)、昇神(しょうしん、神様にお帰りいただく)という流れで、しゅくしゅくと執り行われた後、宮司さんのお話に入ります。HPにもパンフレットにもないお話が飛び出すのがこの時です。
水無神社の宮司さんはとても気品のある若い方ですが、とても気さくにいろいろなお話をしてくださいました。古い神社なので長年の人々の暮らしを見続けた神様の裳裾にふれるような気がしました。
宮司さんのおそばでお勤めをされた巫女さんが、なんともアニメ『君の名は』に出てくる主人公の一人“みつは”にそっくりで驚きました。
日時/随時 ※要予約
祈祷内容/・交通安全 ・安全祈願 ・合格祈願 ・健康祈願 ・無病息災 ・国家安穏
・家内安全 ・良縁祈願 ・学業上達 ・病気平癒 ・就職祈願 ・五穀豊穣
・商売繁昌 ・安産祈願 ・必勝祈願 ・心願成就 ・神恩感謝 ・豊業祈願
・長寿祝((還暦・古稀・喜寿・傘寿・半寿・米寿・卒寿・白寿・茶寿・皇寿)その他
御祈祷初穂料/5,000円より
お問い合わせ/0577-53-2001
正式参拝での授与品は撤饌、ご神箸、水無神社の手ぬぐいと御札でした。
昇殿参拝を終えて出たところにタイコがありました。七五三の時期にはこのタイコの音が近隣にも響き渡るのでしょうね。
さて、いよいよ奥宮のある位山へ向かいます。