トルコのマルマラ地方ブルサ県にあるイズニック(イズニク)は、14世紀頃から陶器の生産で栄え、イズニックで生産される陶器は、やがてオスマン帝国宮廷社会でもてはやされ、宮殿やモスクにも多用されました。オスマン帝国時代の芸術美がたっぷりとつまったイズニックタイルを見ることができる、イスタンブールの建造物をご紹介します。
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イズニックタイルとは?
トルコのイズニックという街では、14世紀頃から陶器やタイルの生産が盛んになりました。イズニックの陶器は、陶器をつくるときの原材料となる土にさらに白い土を塗り、下絵を施した後に透明の釉薬(うわぐすり)を塗ってつくられます。
中国の染付の文化の影響を受け、白地を活かしたコバルトブルーで下絵が描かれるようになり、さらに時代が進んで15世紀になるとターコイズブルーや緑、赤といった複数の色が下絵に用いられるようになりました。最盛期を迎えたのは16世紀のスレイマン大帝の時代で、この頃のオスマン建築にはイズニック製のタイルがたくさん使用されていることで有名です。
1.歴代のスルタンの居城「トプカプ宮殿」
1453年、コンスタンティノープル(現在のイスタンブール)を攻略し、東ローマ帝国を滅ぼしたオスマン帝国のメフメト2世は、帝国の政治や文化の中心となるトプカプ宮殿を建設しました。トプカプ宮殿は、オスマン帝国の歴代のスルタン(皇帝)が住まい、代が変わるたびに新たに増築や改築がなされ、徐々に規模が広がっていった宮殿です。
部屋ごとに異なるイズニックタイルが装飾されており、当時のスルタンたちの贅沢な生活ぶりを垣間見ることができます。
2.愛称はブルーモスク「スルタンアフメット・ジャーミィ」
アフメト1世の命により、イスタンブール旧市街に建てられたスルタンアフメット・ジャーミィには、2万枚を超えるイズニック製のタイル装飾が施されています。そしてそれらには50以上の異なるチューリップの文様が描かれています。チューリップはアッラーと関連深い花であり、また同時にトルコの国花でもあります。スルタンアフメット・ジャーミィを訪れたら、それぞれのタイルに込められた意味の奥深さに触れることができるはずです。
3.まるで宮殿!「ヒュンキャル・カスル」
1万枚を超える17世紀のイズニックタイルが装飾に使われているのが、イスタンブール旧市街のエミノニュにあるヒュンキャル・カスルです。
ヒュンキャル・カスルは、当時オスマン宮廷のハレムで絶大な権力を握っていたメフメト4世の母、トゥルハン・ハティジェ・スルタンによって、1665年に完成させられたイェニ・ジャーミーに付属する施設です。ここは礼拝の前や後に、スルタンやその家族が待ちあうための場所として造られました。コバルトブルーや深紅のタイルの圧巻の美しさは、トプカプ宮殿を彷彿とさせます。
- ヒュンキャル・カスル (イェニ・ジャーミー)
- イスタンブール / モスク
- 住所:Rüstem Paşa Yeni Cami Cd. No:3 34116 Fatih/İstanbul地図で見る