オスマン帝国を最盛期に導いたスレイマン大帝の元で活躍した政治家のリュステム・パシャのモスクは、おびただしい量のイズニク製タイルで覆われた内装が特徴的です。リュステム・パシャの人物像やモスクの美しいタイルをご紹介します。
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リュステム・パシャとは?
リュステム・パシャは、16世紀のスレイマン大帝の時代に活躍したオスマン帝国の大宰相です。大宰相とはいまでいう首相のような立場で、スルタンに並んで権力を持つ存在でした。
リュステム・パシャはスレイマン大帝の一人娘であるミフリマー皇女と結婚したことにより、さらにオスマン宮廷での権力を高めていくことに成功しました。蓄財に長けていたリュステムは、オスマン帝国の歴史の中で自身の資金から帝国の発展に貢献した最初の大宰相であるといわれています。
そんな彼はイスラム教スンニ派の敬虔な信者であり、亡くなる前に帝都イスタンブールに自身のモスクを建設することを望みました。1561年にリュステムが亡くなるとスレイマン大帝がそれを承認し、宮廷建築家のスィナンに設計を依頼しました。
※リュステム・パシャの棺はリュステム・パシャ・モスクではなく、シェフザーデ・モスクの敷地内にあります。
- シェフザーデ・モスク
- イスタンブール / モスク
- 住所:Kalenderhane Mahallesi, Şehzadebaşı Cd. No:44, 34134 Fatih/Istanbul, トルコ地図で見る
イスタンブールの雑踏に紛れたモスク
リュステム・パシャ・モスクは、イスタンブール旧市街のエミノニュにあります。モスク自体の大きさはそれほどでもなく、周囲の市場に紛れ込んだ立地となっています。オスマン帝国を最盛期に導いたといわれるスレイマン大帝の時代に活躍した大宰相であるにもかかわらず、外観はとても地味に見えます。
おびただしいイズニク製のタイルで覆われた内装
外観は地味ですが、モスクの内部はそれとは正反対で、おびただしい量のタイルで覆われた非常に贅沢な造りとなっています。モスクに使用されているのは、タイルの名産地であるイズニクのもので、もちろんすべてが手描きで作られたものです。
イズニク製のタイルが使用されているモスクは、スレイマン大帝のモスクを含めたくさんありますが、リュステム・パシャのモスクで使用されているタイルには特徴があります。
リュステム・パシャのモスクのタイルには、16世紀のこの時期にしか採用されなかった塗料で色づけられたタイルが含まれています。タイルの赤色の塗料はトマトレッド色ともいわれ、他のモスクでは見ることができない鮮やかな色合いです。
また、正面玄関付近にあるターコイズやエメラルドグリーンの塗料で彩られたタイルも、リュステム・パシャ・モスク独特のものです。イズニク製のタイルをこれほどまでに使用したモスクは他になく、リュステムの財力を証明しているモスクといえます。
タイルの模様にも注目
リュステム・パシャのモスクのタイルは、塗料だけではなくその模様が美しいことでも有名です。一つ一つのタイルで模様が完結しているものもあれば、何十枚もののタイルが組み合わさって一つの絵画のようになっている作品もあります。モスク内のタイルの枚数は約2,300枚、80種類といわれています。
おわりに
リュステム・パシャのモスクは、イスラム寺院というよりはもはや壮大なタイルの美術館のような空間です。歴史に名を残した大宰相の権力を感じることができるモスクで、16世紀の芸術的なタイルの美しさにぜひ触れてみてください。
- リュステム・パシャ・ジャーミィ
- イスタンブール / モスク
- 住所:Rüstam Paşa Hasırcılar Cd. No:62 34116 Fatih/İstanbul地図で見る