トルコ最大の都市、イスタンブールは、かつて東ローマ帝国の首都コンスタンティノープルとして栄華を極めました。修道院として建てられ、その後歴史に翻弄されながらイスラム寺院に改修された、ビザンツ建築の典型的な建造物、ゼイレック・モスクの行き方と見どころをご紹介します。
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【アクセス方法】まずはヴァレンス水道橋を目指そう
ゼイレック・モスクは、「イスタンブール歴史地区」として世界遺産に登録されているイスタンブール旧市街に位置します。まずはアヤソフィア博物館やブルー・モスクがあるスルタンアフメット地区、または中東最大級の屋根付き市場グランドバザールがあるベヤズット地区を目指しましょう。
トラムT1線のラーレリ駅からアクセスする場合、ビュユック・レシット・パシャ通りをメトロM2線ヴェズネジレル駅まで歩きます。そこからシェフザーデバシュ通りを西の方へ歩いていくと水道橋が見えてきます。
ラーレリ駅からは徒歩約10分、ヴェズネジレル駅からは約5分ほどです。水道橋のアーチからは少し離れたところにあるため、観光はなにかと後回しにされがちですが、メトロやトラムを利用すれば簡単にアクセスすることができます。
ゼイレック・モスクを目指すには、このヴァレンス水道橋の下の道路(アタテュルク大通り)を横断します。水道橋のアーチの下をくぐって、道路沿いに金角湾の方向へ歩いていくとゼイレック・モスクに辿り着くことができます。ゼイレック・モスクと書かれた標識に沿って歩くと迷子になりません。
【見どころ】修道院、イスラム神学校、そしてモスクへ
住宅街に紛れて、存在感たっぷりの建物が見えてきます。特徴ある外観から、すぐにゼイレック・モスクだと識別できます。いまではモスクとして一般にも開放されていますが、実はこの建物は修道院として建てられたものでした。
1118年から1124年にかけて東ローマ帝国皇帝ヨハネス2世コムネノスの妻イリニによって、現在モスクがある場所に聖パントクラトール修道院が建てられたのが、このモスクの起源です。外観に注目してみると、建物が平行に3つ並んでいるのがわかります。これは、聖母マリアや大天使ミカエルなど3つの教会から成り立っていたことの名残なのです。
1204年に十字軍にこの街が攻め落とされたとき、修道院はヴェネツィア人に略奪されました。その後、オスマン帝国のメフメト2世が1453年にコンスタンティノープルを攻略してからは、イスラムの神学校として利用され、その後さらにモスクに改修されたという、複雑な歴史を持ちます。
美しい内装にも注目
建物は18世紀の地震と火事で大きな被害を受けましたが、60年ほど前から徐々に復旧作業が進められています。その際に、ビザンツ時代に作成された美しいモザイク画が床面から発見されています。モスク内部には、実際に入って自由に見学することができるので、美しい内装にも注目してみましょう。
真っ赤な絨毯と、緑で描かれたミフラーブのコントラストが美しく、大理石のミンバル(説教壇)が重厚な雰囲気を醸し出しています。天高いドームや壁面からの採光が絶妙で、モスク内を神秘的に照らしています。いまでは修道院の面影はなく、庶民の生活にすっかりと溶け込んだモスクとして機能していることがわかります。
訪問時の注意点
イスラム神学校時代の初代学長モッラー・ゼイレック・エフェンディの名前に因んで、このモスクはゼイレック・モスクと言われています。またモスク周辺もゼイレック地区と呼ばれていますが、この辺りは主要な観光スポットからは少し離れたところにあるため、警備がそれほどしっかりとしていません。この地区周辺を観光するときは、夜を避け人通りの多い道を通るよう心掛けると安心です。
おわりに
イスタンブールには、その複雑な歴史の中で、教会や修道院からモスクに転用された宗教施設がたくさん残っています。ゼイレック・モスクは、その独特な外観や、外観からは想像できない神秘的なモスクの内部のギャップが素晴らしい宗教施設です。ビザンツ時代から続くこの建物の長い歴史にに思いを馳せながら、じっくりと見学してみてください。