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首都バクーは”世界一バブルな都市”

【ナヒチェバン】シルクロードの歴史的文化が遺るアゼルバイジャンの飛び地

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東京在住
訪問エリア:192ヶ国

2025年7月31日更新

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写真:toshel

ナヒチェヴァンは、アゼルバイジャン本土から離れた飛び地にあり、空路でのみ結ばれた「地政学的な秘境」ともいわれています。今回は、ナヒチェバンの見どころをご紹介します。

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アゼルバイジャンの飛び地ナヒチェバン

ナヒチェバン自治州は、国として属するアゼルバイジャン本土から切り離された飛び地で、アルメニアとイラン、トルコにも国境を接しています。面積は約5,500km²、首都はナヒチェバン市です。

ナヒチェバンの歴史

この地域は地政学的な要衝であると同時に、文化・宗教・民族の交差点でもありました。その歴史は古代から現代に至るまで多くの文明と政権が交錯し、非常に豊かな背景を持っています。簡単にご紹介します。

古代から中世まで。

  • 紀元前6世紀にはアケメネス朝ペルシアに属し、その後アルメニア王国の一部となります。
  • 5世紀にはサーサーン朝ペルシア、623年には東ローマ帝国、7世紀半ばにはアラブ人に征服されました。
  • 11世紀にはセルジューク朝の支配下となります。
  • 12世紀にはイルデニズ朝の中心地となり、ペルシア文学の巨匠ニザーミー・ギャンジャビーもこの地で活躍しています。

近世から帝国支配まで

  • 13〜14世紀にはモンゴル帝国が侵攻し、ナヒチェバンはイルハン朝の領土となります。
  • 15〜17世紀には黒羊朝・白羊朝、そしてサファヴィー朝が支配。この時期、ペルシアとオスマン帝国の間で激しい争奪戦が繰り広げられました。
  • 1604年、サファヴィー朝のアッバース1世による焦土作戦で住民の強制移住が行われ、アルメニア人の町ジュルファは破壊されました。

近代以降

  • 1747年、ペルシアのナーディル・シャーの死後にナヒチェバン・ハン国が成立。
  • 1828年、トルコマンチャーイ条約によりロシア帝国に編入され、アルメニア地域の一部となります。
  • 1920年に赤軍が進駐し、1924年にはナヒチェバン自治ソビエト社会主義共和国としてアゼルバイジャンの一部に。
  • 1991年のアゼルバイジャン独立後は、ナヒチェバン自治共和国として現在に至ります。
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ナヒチェバンの文化

人口は約45万人で、現在はほぼ全員がアゼルバイジャン人です。かつてはアルメニア人も多く住んでいましたが、ナゴルノ・カラバフ紛争以降はほぼ姿を消しました。塩や鉱物資源の採掘、果物や綿花の栽培が盛んなほか、歴史的建造物の多く存在する地域です。

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ノアの箱舟伝説

ナヒチェバンは旧約聖書の「ノアの箱舟」伝説にまつわる興味深い言い伝えがあります。ナヒチェバンという地名は、アルメニア語で「最初の停泊地」や「ノアの都市」を意味するとされ、ノアが箱舟から降り立った場所と信じられてきました。この伝説は、近隣のアララト山が箱舟の着地地点とされる説と並行して語られています。ナヒチェバンには、後ほどご紹介する「ノアの霊廟」と呼ばれる史跡があり、ノアの墓があると伝えられています。

ナヒチェバンの歴史的建造物と見どころ

ナヒチェバンには多くの歴史的建造物がありますので、ご紹介します。

ナヒチェバン城

ナヒチェバン城は、首都ナヒチェバン市に位置する歴史的な要塞です。起源はサーサーン朝時代(3世紀〜7世紀)に遡り、最後の王ヤズデギルド3世によって築かれたと考えられています。

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この城は、宗教・文化・政治が交錯するコーカサス地方の複雑な歴史を物語る貴重な遺構です。

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この場所からは、中世の文化のみでなく青銅器時代(紀元前3000〜2000年)の陶器や石器まで発見されており、古代から人々がこの地に住んでいたことを示しています。

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ヘイダル・モスク

ナヒチェバン城の隣には、アゼルバイジャン建国の父とされる「ヘイダル・アリエフ」にちなんで名付けられた壮麗なイスラム教寺院が建っています。

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21世紀に入って建設された新しい建築です。

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伝統的なイスラム建築と現代的なデザインが融合し、ディープスカイブルーのドームが印象的です。晴れた空とのコントラストが美しいと評判です。

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内部は、広々とした礼拝ホールがあり、白を基調とした明るい内装に金色のシャンデリアが輝いています。床にはアゼルバイジャン伝統の絨毯が敷かれています。

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スンニ派とシーア派の両方の信者が礼拝に訪れる、宗教的寛容さを象徴する場所でもあります。

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ノアの霊廟

ナヒチェバン城とヘイダルモスクに挟まれるかたちで、ノアの霊廟があります。この霊廟は、もともと中世のアルメニア教会の修道院でした。アルメニアの伝承によれば、ノアは洪水後にこの地に降り立ち、ナヒチェバンを築いたとされています。現在の霊廟は2006年にイスラム様式の霊廟として再建され、ノアの遺物が埋葬しているそうです。

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尚、ここは古来からイスラム教、キリスト教、ユダヤ教の信者にとっても重要な場所であり、巡礼地としても知られていました。

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一説によると、ナヒチェバンから見えるこの山にノアの箱舟が行き着いたともされています。ノアの霊廟は、神話と歴史が交差する場所であり、ナヒチェバンの文化的アイデンティティを象徴しています。

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カラバグラルの霊廟

カラバグラルの霊廟は、南コーカサス地域でも屈指の美しさを誇るイスラム建築の霊廟です。建築的にも歴史的にも非常に興味深い構造を持っています。建設時期は12〜14世紀頃とされ、正確な築年数や建築家は不明です。建築様式はこのように塔型霊廟の典型で、古代アルメニアやイランの建築様式との関連も指摘されています。

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装飾:外壁には青緑色の釉薬レンガが使われ、「アッラー」や「ビスミラー」の文字がクーフィー体で200回以上繰り返されています。

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これは装飾であると同時に宗教的な意味を持つマントラでもあります。

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内部は円形で、地下の埋葬室と地上の記念建造物の二層構造になっています。

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イルハン朝時代の貴婦人「ジャハン・グディ・ハトゥン」に関する碑文が残されており、彼女との関連が示唆されていますが、詳細はよく分かっていません。1998年にユネスコの世界遺産暫定リストに登録されており、現在も良好な状態で保存されています。

カラバグラルのキャラバン•サライ

また、カラバグラル霊廟の隣には、キャラバン・サライがあります。

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建設時期は12世紀頃とされ、かつてシルクロードを旅する隊商たちの宿泊・交流の場でした。ミナレットも備わっていますので、元々はモスクとして建てられた可能性もありそうです。

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現在は博物館として保存されており、当時の生活や文化を感じることができます。

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内部にはパンを焼く窯や水瓶などが残されており、生活の痕跡が見られます。宿泊施設だけでなく礼拝所も備えており、宗教的な役割も果たしていました。

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周囲の穏やかな村の雰囲気と相まって、まるでシルクロードの世界にタイムスリップしたような感覚を味わえます。

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このキャラバンサライは、霊廟とともにナヒチェヴァンの歴史と文化を物語る貴重な遺産です。まるで旅人たちの声が今も壁に残っているかのような、静かで荘厳な空間です

カラバグラル村は、ナヒチェヴァン市から約30kmに位置し、タクシーでの訪問が一般的です。

カラバグラル村
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住所:Naxçıvan地図で見る
**モミネ・ハトゥン廟

建築家アジェミ・ナヒチェヴァニによって1186年に建てられた霊廟です。イルデギズ王朝の支配者ジャハン・ペリヴァンが、母モミネ・ハトゥンを偲んで建立した霊廟で、ナヒチェヴァン建築学派の代表作でもあり、アゼルバイジャン中世建築の最高傑作のひとつとされています。

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フセイン・ジャビド廟

フセイン・ジャビド廟は、詩人・劇作家として知られるフセイン・ジャビド(1882–1941)を記念して建てられました。彼だけでなく、妻・ミシュキナズさん、息子・エルトゥーレルさん、娘・トランさんの墓も共に祀られています。

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ナヒチェバンではとても有名な詩人で、霊廟の近くには彼の住んだ家が博物館として公開されています。

フセイン・ジャビド博物館

こちらはフセイン・ジャビドが1882-1941に住んでいた家です。今は博物館になっています。

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ジャビドはアゼルバイジャン文学の近代化に貢献した重要人物で、哲学的な悲劇や宗教・人間性をテーマにした作品を多く残しました。代表作には『シェイク・サナン』『イブリス(悪魔)』などがあり、宗教間の対立や人間の本質を深く掘り下げています。

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ここでは彼の生涯や作品、当時の文化背景を学ぶことができます。

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ユシフ・イブン・クセイル廟

ゼルバイジャンに現存する最古級の霊廟のひとつです。建設年は1162年(ヒジュラ暦557年シャヴァール月)に建立されたと碑文に記されています。建築様式は八角形の平面にピラミッド型の屋根を持ち、高さは約15メートル。焼成レンガで造られた印象的な構造です。建築家アジェミ・ナヒチェヴァニによって設計されました。彼はナヒチェヴァン建築学派の創始者であり、モミネ・ハトゥン廟も手がけた巨匠です。

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上部には尖頭アーチが施され、墓の上部にはクーフィー体で書かれたコーランの引用文が飾られています。

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内部は地下の納骨堂と広々とした上室の二層構造で、上室ではこの霊廟の歴史を紹介しています。

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この霊廟は、宗教的敬意と建築美が融合した中世イスラム建築の傑作で、ナヒチェヴァンの歴史と文化を象徴する重要な遺産です。

ナヒチェバン歴史博物館

ナヒチェヴァン自治共和国の歴史、文化、民族、芸術を保存・展示するために設立された博物館です。

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それほど広くはなく、展示物は少ないながら、ナヒチェバンの長い歴史を簡潔に網羅しておりとても充実しています。

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内部は時代ごとに区切られており、紀元前4000〜1000年の青銅器・鉄器時代のペトログリフ(岩絵)や石器、化石化した貝やウニなど先史時代の遺物から始まり、古代の生活用品である乳鉢・乳棒、7〜8世紀の食器、農工具などが展示されています。

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民族衣装と装飾品:帽子、イヤリング、布製小物入れなど、ナヒチェヴァンの伝統文化を反映したものや、楽器も。

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軍事関連品:17〜18世紀の軍章や武具もあります。

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ナヒチェバンの行き方

日本からアゼルバイジャンへ直行便はありませんので、中東やEUを経由して行きます。首都バクーからナヒチェバンへ一日10本以上の国内線が飛んでいます。また、ナヒチェバンはトルコ航空がイスタンブルからの直行便も出航しています(週2~3本のみ)

ナヒチェバン
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住所:Naxçıvan Muxtar地図で見る

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この記事を書いたトラベルライター

地球旅をしています~現在192ヵ国~
行ったことのない国を中心にひとり旅しています。他国の歴史、文化、宗教、遺跡、そしてそこに住む人々の考え方に興味があります。

車の運転が好きなので、海外ではドライブ旅を楽しんでます。普段は会社員です。

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