ブータン王国は、世界的な指針となる国民総生産(GNP)である経済的な豊かさよりも、国民の総幸福量(GNH)こそ重要と位置づけ、古来からの伝統文化や環境に配慮し、人々の幸福実現を目指す国です。チベット仏教に根差し、一風変わった慣習や文化を守るための法律があるのも特徴的です。今回は、北側にヒマラヤ山脈の連ねる山と川の国に囲まれた神秘の王国、ブータンの首都ティンプー県とプナカ県、パロ県の見どころと、旅に出かける前に知っておきたい慣習や豆知識をご紹介します。
この記事の目次表示
神秘に包まれたブータン王国
ブータンの歴史は古く、紀元前2000年頃には人の住んでいた形跡がありました。チベット仏教が国全体に広まると、領土を広げるなどして繁栄を極めた時代もありましたが、一時の戦争で敗戦すると国王は鎖国を始め、謎に包まれた国となります。
すっかり外界との往来がなくなり、世界に忘れられるほど存在感のない国となってしまったブータン王国。しかし、若くして国王となった三代目は「これじゃいかん」と一念発起!鎖国をやめ、自ら世界へ訪問して国をアピールしはじめました。それがなんと、つい50年前!
ブータン王国の国旗に描かれた橙色と黄色をまたいだ霊龍は、その昔、ここが「龍の地」として知られていたことが由縁です。また、龍は王家のシンボルともなっています。
実際に、この国へ訪れると、本当に龍でも出てきそうな雰囲気ですよ!
ブータン王国の首都ティンプー県
ティンプーはブータンの首都です。数年前に来日して話題となった、ブータン王国の若き皇太子と皇太子妃は、ここティンプーの中心にあるお城に住んでらっしゃいます。
タシチョ・ゾン
ブータンを訪れると、見晴らしの良い高台に、白壁の大きなお城が建っているのが印象的。ゾンとよばれるチベットの文化圏に多い城塞建築です。ゾンはどの都市にもあり、いずれも17世紀ごろに建てられたそう。各都市のゾンは現在、各県の庁舎と、僧侶の修行および住居として使用されています。
それぞれのゾンは、その土地の立地などにより多少の違いはありますが、基本的な構造は同じで、広い中庭とそれを囲む回廊、建物が特徴です。
どの県のゾンも、屋内は撮影禁止ですが、鮮やかな宗教画が壁一面に描かれています。夜のライトアップも綺麗ですね!
国民に愛された三代目国王の仏塔(メモリアルチョルテン)
GNH(国民総幸福量)を提唱した三代目の国王は、近代国家の父と呼ばれ、国民に慕われていました。三代目国王が亡くなると、どの国王よりも大きい仏塔が首都ティンプーに建てられました。今でも老若男女問わず往来が絶えず、その人柄が浮かびます。
「チョルテン」は仏塔を意味するチベット語です。時計回りに周ることで、善い行いをしたとみなされます。中には一日中、歩いて回っている方もいらっしゃいますよ!
- メモリアル・チョルテン
- ブータン / 社寺・教会
- 住所:chorten lam city centre thimphu地図で見る
ブッダポイントにある世界一高いお釈迦様
こちらはティンプーの街のどこからでも見える山の高台に鎮座するお釈迦様です。
近くまで行くと、やはり大きいですね。世界一の高さです。(2018/1現在)
川の美しいプナカ県とヒマラヤ山脈
ティンプーから東の山を越えていくこと3時間。ブータンの古都プナカは、1955年に首都がティンプーへ移されるまでの首都だった歴史の深い地域です。
プナカ・ゾン
プナカのゾンは、モ川とポ川が合流する中州地点に建てられています。まるで天然のお堀のようです。とても美しいですね。
プナカは、ティンプーに比べて暖冬のため、偉い僧侶の方たちは冬になるとティンプーからこちらへ移動してきます。
中庭には、本当にお釈迦様が鎮座しているのではないかと思われるくらい大きな菩提樹があり、厳かな雰囲気の中、敬虔なチベット仏教徒が瞑想しています。
ヒマラヤ山脈を望むドチュラ峠
ティンプーからプナカへ移動する際に、必ず通るドチュラ峠。
この峠は、富士山の8合目くらいにあたる3,150メートルの高さがあり、北方にヒマラヤ山脈を望める大展望台となっています。この峠も十分高いですが、ヒマラヤの山々は7,000メートル級のため、まるで白屋根が宙に浮いているよう!
ドチュラ峠にはレストランやホテルがありますので、ヒマラヤ山脈を眺めながらコーヒー休憩したり、宿泊するのもよいですね。
また、こちらには108基のチョルテン(仏塔)が円陣を組んで建っています。
ドチュラチェルテンです。
これは、ゲリラとの戦闘の際に亡くなった兵を追悼するため建てられました。今でこそ戦争などとは無縁の幸せそうに見える国ですが、国を守るためにせざるを得ない戦いもあったのですね。