ビザンツ帝国時代にはギリシア正教の大本山として人々の信仰の中心となったアヤソフィア大聖堂以外にも、トルコ・イスタンブールには様々な歴史ある教会が残されています。新市街にある、オスマン帝国時代に設立された美しい教会をご紹介します。
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【1】聖トリアダ・ギリシア正教会
イスタンブール新市街の観光の中心地、タクシム広場の近くにある聖トリアダ・ギリシア正教会は、1880年に完成したイスタンブール最大規模のギリシア正教会です。
1453年にオスマン帝国のメフメト2世がコンスタンティノープル(現在のイスタンブール旧市街)を攻略してからは、イスタンブールにドーム屋根付きのキリスト教会を建設することは許されていませんでした。しかし、1839年のタンジマート(近代化の政策)以降、少数民族の言論の自由を制限する制度が緩和され、イスタンブールの少数民族が集う宗教的な施設の建設も許されたのです。
教会はオスマン帝国のギリシア人建築家によってネオ・ゴシック様式で建設され、いまなお信者が集う場として機能しています。
- 聖トリアダ・ギリシア正教会
- イスタンブール / 教会
- 住所:Katip Celebi Mahallesi, 34433 Beyoglu/Istanbul地図で見る
【2】クリミア教会
カラキョイ地区のひっそりとした細い路地に聳え立つ、ほとんど人目に付かないながら重要な教会であるクリミア教会。1868年、クリミア戦争に参加したイギリス人兵を記憶するために建てられたイングランド国教会です。
教会を建設するための土地はアブデュルメジトによって寄贈され、イギリス人の建築家が設計を手掛けました。信者が集わなかった時期は一時閉鎖されていましたが、1991年に再びその門が開かれました。
【3】聖アントニオ教会
イスタンブールにおけるローマ・カトリックの最大規模の教会が聖アントニオ教会です。1725年にイスタンブールのイタリア人コミュニティによって最初の教会が建てられましたが、後に取り壊され、1906年から1912年にこちらの教会がネオ・ゴシック様式で建て直されました。
現在もイタリア人司祭によって運営され、ミサも開かれています。第261代ローマ教皇ヨハネ23世は、教皇に選出される以前、彼がトルコのバチカン大使だったときに、この教会で10年に渡って説教していたことで知られています。
【4】聖マリア・ドラペリス教会
1584年に設立された聖マリア・ドラペリス教会は、イスタンブールにおける最も古いローマ・カトリック教会のひとつです。オスマン帝国がコンスタンティノープルを攻略する数カ月前に教会を完成させたフランシスコ会修道士でしたが、コンスタンティノープル陥落とともに教会が取り壊され行き場を失くしていました。
そんな中1584年、レバント人女性マリア・ドラペリスによって、現在のガラタ地区にある小さな礼拝堂付きの家を与えられました。火災などで礼拝堂は何回か消失してしまいましたが、当初から礼拝堂に飾られていたイコン(画像)だけはずっと無事だったそうです。
そして教会は1769年に現在の場所に再建されます。祭壇の後ろに置かれている聖母子のイコンは、長い歴史の中での度重なる火災から救出され続けたものだとされています。
- 聖マリア・ドラペリス教会
- イスタンブール / 教会
- 住所:Tomtom İstiklal Cd. No215 34433 Beyoğlu/İstanbul地図で見る
おわりに
イスタンブールの新市街にはイスティクラル通りやドルマバフチェ宮殿、オルタキョイなどといった華やかな観光名所が多いため、あまり教会は注目されないかもしれませんが、意外にも観光名所からアクセスしやすい場所にあります。
モスク建築と肩を並べるくらい立派な教会の奥深い歴史背景を感じながら、イスタンブールで教会巡りをしてみてはいかがでしょうか。なお教会内部は写真撮影が禁止されていることがほとんどですのでご注意ください。