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【三重・熊野古道】神々の母が眠る黄泉の国、花の窟神社

取材・写真・文:

愛知在住

2018年4月20日更新

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写真:Takako

熊野古道には、熊野三山(熊野本宮大社・熊野速玉大社・熊野那智大社)以外にも世界遺産に指定されている神社があります。三重県は神が日本をつくった「国生み神話」の舞台ともいわれていて、多くのパワースポットが点在しています。深い森と穏やかな内海、豊かな自然に抱かれたこの土地は、いにしえより多くの神々が集う場所として信仰を集めてきたのです。まさに、県全体がパワースポットといっても過言ではない三重県にある、熊野の花の窟神社(はなのいわやじんじゃ)をご紹介します。

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圧倒的な存在感に思わず脱帽する”花の窟(はなのいわや)”

熊野灘に面した国道42号線のすぐわき。花の窟神社という、神々の母である伊弉冊尊(イザナミノミコト)が火神・軻遇突智尊(カグツチノミコト)を産み、灼かれて亡くなった後に葬られたという伝説の御陵があります。

  • 写真:Takako

平成16年7月、そんな花の窟を含む「紀伊山地の霊場と参詣道」が世界遺産に登録されました。花窟神社(花の窟神社)は『日本書紀』にも記されており、日本最古の神社という説もあり、古来からの聖地として今に続きます。見る者を圧倒させるこれほどの存在感をもって迫る神社は、日本一と呼び声も高いのです。

イザナギノミコトとともに国生みのパートナーであるイザナミノミコトが火の神を生んだ時に焼かれて神去ったあと、有馬村に葬ったという記述が『日本書記』にあり、ゆえに日本最古の神社と言われています。

黄泉の国(よみのくに)のはじまり

黄泉の国とは死者が生活するところ、死後の世界のことをいいます。

イザナミ(妻)とイザナギ(夫)のいざこざ

イザナミが亡くなった時、夫であるイザナギはそばにおらず、妻が死んだと聞いて嘆き悲しみのあまりイザナミに会いに行こうとしました。けれども、イザナミは焼けただれ、腐りかけた醜い姿を夫に晒すことを恥じて「来てはならぬ」と止めたのにもかかわらず、夫は強行突破したのです。

妻の驚くべき姿に畏れおののき逃げるイザナギに「これ以上の恥はない」と怒ったイザナミが、死の国の追っ手を夫に送り込みました。そんな追っ手を振りきる最後の切り札が桃の実(おふかんつみ)でした。イザナギは追っ手どもが桃に気をとられている間に大岩をふさいで押しとどめ、こうしてこの世とあの世に境目をつけました。

あの世とこの世を分ける桃の実の岩

その桃の実の象徴が、手水舎の隣にある丸い岩です。ここを超えるといよいよ“黄泉の国”へと足を踏み入れるわけです。

  • 写真:Takako

今は社務所が黄泉の国へのゲートになっています。

イザナミの御陵、花の窟神社

花窟神社には神殿がなく、熊野灘に面した45mという高さに及ぶ巨巌がイザナミノミコトの御神体としています。

花の窟神社は国道42号線沿いに面しており、熊野灘を航行しているとよく眺められるそうです。太平洋を行き来する船をよく見張り、外敵の侵入をこの花の窟が防いでいるようにも見えます。

『ホツマツタヱ』によればイザナミは、世の中の罪汚れを一身にわが身に受けようとしていたことがわかります。すべてを背負ったまま亡くなることで「罪汚れ」を、あの世に葬り去ったのです。花の窟神社にお参りすることは、そんな女神さまの鎮魂(ちんこん)となります。

圧巻の御陵、花の窟

  • 写真:Takako御縄掛け神事の縄が見られます

「花の窟神社」の御神体には侵食により無数の穴があります。何千年も風雨に耐えてきたのです。この穴に白石が無数に納められています。願いをこめることで祈願成就するという言い伝えがあり、現在でも多くの参拝客が訪れては願いを込めます。

広くはない境内ですが、岩のそばにしばし佇んでいると温かい気が岩や地面から流れ出して包まれ、温泉につかっているようだという評判も高いのです。

毎年2月2日と10月2日には、神体の巨岩に綱を渡す「御縄掛け神事」が執り行われ、三重県の無形文化財にも指定されています。

カグツチの神の御陵

イザナミノミコト(伊弉冉尊)の巨石と向かい合って鎮座するのはカグツチ(軻遇突智尊)の御陵となります。火の神カグツチを産むことにより亡くなってしまったイザナミですが、亡くなる直前、ミツハメやハニヤスという、家を守る神々を新たに生んでいます。

カグツチは火伏の神としてはたらき、ミツハメは水の神として家の水源を豊かにし、ハニヤスは土の神としてたっぷりの水分と養分を含んだ大地をつくり、家庭の生業を豊かにするよう見守ってくれています。

世界遺産・熊野古道に含まれる花の窟神社と熊野三山の関係

熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社の熊野三山や、花の窟神社も含めた熊野古道が2004年に世界遺産に登録されました。熊野神(くまのかみ)とも称されるイザナミが、世の罪汚れを一身に受け、それを祓うようにつくった祈りの宮が熊野本宮大社あるといいます。

  • 写真:Takako熊野本宮大社拝殿

熊野詣(くまのもうで)が流行したわけ

平安時代以降「アリの熊野詣」といわれるほど行列を作ってこぞって熊野にお参りしたそうです。浄土宗が広がり、熊野全体が浄土の地であるとみなされるようになったのです。人々は生きながら浄土に生まれ変わることを目指して、熊野詣の道を歩いたのでした。

熊野の地のおお元であるイザナミのお墓参りをすることは、現代に生きる私たちも浄土に生まれ変わる転生の実現を助けて下さる場と言えます。

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