「人類が作った最もロマンチックな建物」とも「閉ざされた楽園」とも称されるアルハンブラ宮殿は、決して訪れる人の期待を裏切らないスポットです。総面積14,000㎡もの広大な敷地は、筆舌しがたい魅力にあふれています。宮殿は大きく分けると、アルカサバ要塞、カルロス5世宮殿、ナスル朝宮殿、ヘネラリフェの4つから成り立っています。本記事では、そんなアルハンブラ宮殿の堅牢でシンプルな外観からは想像もできないほどに贅を尽くした、王のプライベートスペースであるナスル朝宮殿のライオン宮とヘネラリフェをご紹介します。
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ナスル朝宮殿(Palacios Nazaries)
ナスル朝宮殿は、メスアール宮、コマレス宮、ライオン宮の三つの独立した区画から成りたち、ライオン宮は王族のプライベート空間となります。数奇な歴史の所以か、神秘的な美しさからか、過ぎ去りし繁栄の象徴は、多くの伝説を生みだしました。そこは、まるで『千夜一夜物語』の世界です。
ライオン宮(Palacios Leones)
ライオン宮の建物の2階は、王の后たちが住んでおり、ここから先は王しか入ることが許されない場所・ハーレムでした。歴代の王たちは、香料で満たされた浴槽につかり、蒸し風呂を楽しみ、楽師の奏でる音色を聞きながら、憩いの間で絶世の美女を侍らせていたのです。楽師たちは、美女の顔を見ないよう、盲目にされていたと伝えられています。
ライオンの中庭(Patio de los Leones)
中庭の中央には、12頭のライオンに支えられた噴水があり、四方は124本の大理石の柱が林立する回廊となっています。ライオン像の口からは水が流れ、まわりの4箇所の部屋へ水が流れるようになっている上に、昔は一時間ごとに一頭が水を噴き、水時計の役目を果たしていました。
アベンセラッヘスの間(Sala de los abencerrajes)
中庭の南側が、アベンセラッヘスの間。天井は星型で、モカラベスと呼ばれる、鐘乳石飾りの豪華な装飾が施されています。クーポラから差し込む光が、星形を浮かび上がらせます。アベンセラッヘスとは、王に仕えた名門騎士団の名前ですが、后と騎士団の不貞を知った王が、アベンセラッヘス家の男性を打ち首にしたとされ、床にある水盤の染みは血の跡だと語り継がれています。
- アベンセラッヘスの間
- スペイン / 建造物
- 住所:Calle Real de la Alhambra, 18009 Granada, Spain地図で見る
二姉妹の間(Sala de dos hermanas)
アベンセラッヘスの向かいにあるのが二姉妹の間。二姉妹というのは、床の中央に敷かれた大きな二枚の白い大理石に由来します。8角形の天井に施されたモカラベスは、レースのような繊密な模様が施されており、ため息がでるような美しさです。
ここには、ハーレムの女性たちや、カルロス5世が愛したと言われるリンダラハのバルコニーがあり、天井にはカラフルなステンドグラスがはめ込まれています。イスラム時代には、多くの天井にはめこまれていたというステンドグラス。その大きさと彩色の豊かさで、訪れる者の度肝をぬいていたようですが、今日残されているのはこの天井だけになります。バルコニーからは坪庭のようなリンダラハの中庭が見渡せます。囚われの身のリンダラハがお気に入りだったことからこの名がついています。
諸王の間(Salón de Rey)
丸天井に、最初の10人の王が描かれていることから、諸王の間と呼ばれています。ライオンの中庭の東側に位置し、内部にはいくつかの小部屋があり、家族のパーティーや王の寝室としても使われていました。
ヘネラリフェ(Generalife)
宮殿から北へ10分ほど離れた場所にある夏の離宮ヘネラリフェは、12世紀から14世紀にかけてムハンマド3世によって建設されました。
離宮中央にあるのは、スペインにおけるイスラム庭園の代表と言われるアセキアの中庭。噴水を配置した庭園の周りには、全長50mに及ぶ回廊が続いています。
はるか遠く、20kmも離れたシエラネバダ山脈から引き込まれた水は、宮殿内を贅沢なほどに潤します。土地の高低差を利用して造られた噴水など、その技術の高さには驚かされるばかりです。
アルハンブラ宮殿のおもしろ雑学
アルハンブラ宮殿は、床に敷き詰めた絨毯の上で、王たちがくつろいでいたことから、低い視点から眺めることを前提に構成された建物なのだそうです。
他にも宮殿の構成には、面白い説があります。部屋から部屋への移動は、直角に曲がる、暗い部屋の次は明るい部屋になるなど巧みな動線が考えられています。1段上がると次は下がる、本物と偽物の扉を作るなど、外来者に対して方向感覚を失わせる効果や、敵の目をくらますことを狙った造りは、迷宮の世界を思わせるのに十分な造りではないでしょうか?
また、ヘネラリフェには、夏の間、王が最も愛する1人だけを連れてきていたとか、スルタナの中庭では、王妃が若者と密会していたという伝説も残っています。夢のような華やかな王侯生活のなかで、華やかな世界であるが故に、嫉妬や陰謀なども渦巻いていたのかもしれませんね。真偽のほどはわかりませんが、想像を膨らませながら歩くと楽しさが倍増するかもしれません。
さいごに
今回の記事では、アルハンブラ宮殿内の王のプライベートスペースに関して見どころをご紹介しました。なおパブリックスペースについての記事はこちらをご覧ください。
- アルハンブラ宮殿
- スペイン / 建造物 / 城・宮殿
- 住所:Calle Real de la Alhambra, s/n, 18009 Granada,Spain地図で見る
- Web:http://www.alhambra-patronato.es/