その美しさゆえ破壊されずに、奇跡的に今日に伝えられているアルハンブラ宮殿。イスラム建築の最高峰といわれ、ユネスコ世界遺産にも登録されている宮殿は、大きく分けると、アルカサバ要塞、カルロス5世宮殿、ナスル朝宮殿、ヘネラリフェ庭園の4つの部分で成り立っています。今回は、魅力あふれるアルハンブラ宮殿をパブリックスペースと王のプライベートスペースに分け、本記事ではパブリックスペースの見どころをご紹介しましょう。
この記事の目次表示
アルハンブラ宮殿が今に残る理由
アルハンブラ宮殿は14世紀、スペイン各地を統治していたイスラム王朝の一つ、グラナダ王国(ナスル朝)によって建てられました。完成当時、「王は魔法を使って宮殿を完成させた。」とまで言わしめた比類なき宮殿でした。
1492年、キリスト教によるレコンキスタ(国土回復運動)によって追い詰められた王国最後の王ムハンマド12世は、イサベル女王とフェルナンドス王子との連合軍に、涙をためながら無血開城したと伝えられています。
その後、宮殿を見たイサベル女王は、あまりの美しさに感動し、建物の保存を決意したのです。美しすぎて壊せなかったほどの城。そんな宮殿の魅力に迫ってみましょう。
今もなお多くの人を魅了し続けているアルハンブラ宮殿ですが、総面積14,000平方メートルという広大なスペースなので、本記事では、パブリックスペースといえるアルカサバ要塞、カルロス5世宮殿、ナスル朝宮殿内一部の見逃せないスポットをご紹介します。
アルカサバ要塞(Alcazaba)
ムハンマド1世により最初に造られたのが、宮殿の西側に位置するアルカサバ要塞と城壁部分。初めは、農民による反乱軍からの防護壁として造られたのが始まりで、グラナダの覇権争いのために増強され、難攻不落の要塞といわれるまでになりました。ナスル朝宮殿が完成するまでは、ムハンマド1世とその息子2世も住居としてアルカサバを利用していました。
迷路のような遺跡部分には、兵士の住居の他、鍛冶職人や武器職人達の家の基礎部分が残されています。一番高いベラの塔まで上ると、グラナダの街が一望でき、当時の要塞としての役目も感じることができます。
カルロス5世宮殿(Palacio Carlos V)
イスラム建築の中にあって、ルネッサンス様式の異色の存在感を放つカルロス5世宮殿は、16世紀にイスラム建築に勝る建築を!と、カルロス1世の命で建てられたもの。
しかし、王が存命中には完成せず、予算不足で天井部分のクーポラも設置できなかった未完の建築物です。四角い外観の内部は、古代ローマのコロシアムを思わせるような円形の中庭が広がります。
ナスル朝宮殿(Palacios Nazaries)
ナスル朝宮殿は、メスアール宮、コマレス宮、ライオン宮の三つの独立した区画から成り立ちます。現在の宮殿は、破損した部分に増改築を重ねた複合建築物となっていますが、今日でもイスラム教文化の性質が保たれています。
また、水をふんだんに利用した建築様式や、星をイメージした天井装飾が多いことも、砂漠の民の歴史が感じられる部分です。
メスアール宮(Sala de Mexuar)
この部屋は、司法行政を行う政府の執務室でしたが、レコンキスタ後には礼拝堂として使用されます。キリスト教時代には、2階の欄干部分や天井など、王宮の中でも多くの改装が行われましたが、壁面のアラベスク文様で覆われているスタッコ(化粧漆喰)や、柱上部のモカラベ(鍾乳石飾り)など見どころ満載です。
アリカタード(タイル細工)上部のスタッコには、アラビア語で「あなたたちが持っているもの全ては、神から生じたものである」と記されています。
この部屋からは、ナスル朝時代には、謁見許可が下りるのを待つ部屋だった黄金の間や、身分ある者からの訴えを聞く場所だったメスアールの中庭、メッカの方向に向けられた祈祷室などに通じています。
コマレス宮(Salón de Comares)
アラヤネスの中庭に面して建つのが、コマレスの塔(Torre de Comares)をはじめとした王の公邸です。偶像崇拝を禁じられたイスラム圏では、幾何学模様や文字装飾が発展しました。これがアラベスクです。こういった伝統的なイスラム教文化の影響を強く感じる内装には、目をみはるばかりです。
アラヤネスの中庭(Patio de Arayanes)
グラナダの典型的な庭園として有名なアラヤネスの中庭。アラヤネスとは、池の両側に、四角く刈り込まれている植物の名前です。水面に向こうのコマレス塔を映し出す「水鏡」という技法で造られています。
これらの庭園や噴水で使われる水は、20kmも離れたシェラネバダ山脈から雪解け水をひきこんでいました。コマレス宮が「水の宮殿」とも呼ばれる所以です。
- アルハンブラ宮殿
- スペイン / 建造物 / 城・宮殿
- 住所:Calle Real de la Alhambra, s/n, 18009 Granada,Spain地図で見る
- Web:http://www.alhambra-patronato.es/
さいごに
今回の記事では、アルハンブラ宮殿内のパブリックスペースに関して見どころをご紹介しました。なおプライベートペースについての記事はこちらをご覧ください。