2011年3月11日に発生した東日本大震災は、未曽有の大災害となり、宮城県気仙沼市でも多くの被害を受けました。災害を知り、災害から学び、伝える為に、一度は足を運んでほしい気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館をご紹介します。
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気仙沼(けせんぬま)市と東日本大震災
宮城県の北東部に位置する気仙沼市。リアス式海岸など、自然が作り出した独特の景観スポットや、日本一の水揚げ量を誇る漁港があるなど、豊かな自然に恵まれた場所です。
東日本大震災では、大津波とその後の大規模な火災によって、死者1,152人(震災関連死を含む)、行方不明者214人にも上る、最大級の被害を受けました。
気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館とは
震災当日まで宮城県気仙沼向洋高校の校舎として利用されていた建物に、震災伝承館を加えたのが今回ご紹介する施設です。震災の記憶と教訓を未来に伝え、警鐘を鳴らし、「目に見える証」として活用するために2019年3月10日、開館しました。
2020年には、開館1年で8万人を超える来館者となり、防災・減災への関心の高さが感じられます。気仙沼市は「津波死ゼロのまちづくり」を目指し、この施設を通して、多くの事を発信しています。
見学ルート
受付でチケットを購入後、伝承館で震災時の記録映像を300インチの大型スクリーンで視聴、校舎内へ移動して見学後、伝承館に戻ってくるという流れになります。記録映像は毎時00分・20分・40分ごとに上映され、長さは約13分間です。
その後、伝承館の展示室Aにて記録写真を見学し、渡り廊下を通って震災遺構の旧南校舎に移動します。抜け落ちた天井、むき出しになった鉄骨、ここが教室だったとは思えないほどの惨状に、唖然とします。1階を見学後、階段またはエレベーターで3階へ移動します。ここもまた、津波の恐ろしさが身に染みる光景が広がります。
地上8メートルにある3階の教室は、窓から波によって運ばれてきた車が横転しているという、まさかの光景です。周囲に散乱しているスポンジ類は、学校の付近にあった冷凍工場が破壊され、運ばれてきたものだそうです。
震災当日は、学生たちはすべて避難所に移動して無事でした。当日校舎には、重要書類を保護するために残った教職員20名と、校舎の改装にあたっていた工事関係者25名が残っていました。屋上には、彼らが少しでも高い所へ避難しようと、積み重ねた机が、その証としておかれています。彼らも翌日には、全員無事に脱出することができたそうです。
屋上を見学後は、1階に戻り、屋外へ。外からは、冷凍工場が南校舎4階西側のベランダにぶつかった爪痕が残されています。校舎の正面衝突を避け、この場所にぶつかったことが、不幸中の幸いだったようです。
校舎の後ろ側に周ると、校舎との境には、ひときわ高く積みあがった残骸が目に飛び込んできます。これは、2度、3度とおそった引き潮の通り道となったことで、車が何台も折り重なった様子です。津波と一言で言っても、何度も襲い来る引き潮の怖さを目の当たりにする現場です。
このあとは、旧北校舎1階を通り、震災伝承館へ戻ります。残骸が片付けられた旧北校舎の廊下部分には、震災前の授業風景の写真が飾られています。生徒や教職員が一人も亡くなられていないことが、せめてもの救いに感じます。
展示室Bでは、震災後の爪痕や、行方不明者の捜索、避難所の様子などの、記録写真を見学。講和室で約15分間、被災者の想いや命の大切さについての映像を視聴して終了となります。
気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館の概要
- アクセス:最寄り駅:JR気仙沼線「陸前階上(りくぜんはしかみ)駅」、最寄りIC:三陸沿岸道路「大谷海岸IC」
- 開館時間:4月~9月/9:30~17:00、10月~3月/9:30~16:00
- 休館日:毎週月曜日、年末年始
- 入館料:一般/600円、高校生/400円、小中学生/300円、小学生未満/無料
- 気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館
- 宮城 / その他スポット
- 住所:宮城県気仙沼市波路上瀬向9-1地図で見る
- 電話:0226-28-9671
- Web:https://www.kesennuma-memorial.jp/
この記事を書いたトラベルライターから一言
ある日突然奪われた日常。転がった机もパソコンも教科書も、一つ一つが、代えがたい日常の一つだったはず。十分に知っているつもりだった津波の恐ろしさが、この場に立つと、その凄まじさと恐ろしさで、とても切なく、苦しかったりしますが、目をそらさずに見て頂きたい場所です。予測不能な自然現象が頻発する昨今、ここを訪れ、見て感じたことを、多くの方に伝えたいと感じる場所。あの日を忘れてはいけないと心に誓う場所。わたしたちが、命を守るために何をしなければいけないのか考えたい場所です。(olive)