大草原が広がるモンゴルでは、遊牧民がゲルを建てて暮らす様子が特徴的ですね。旅行で訪れた際にはゲルに宿泊する方も多いと思いますが、ゲルとはいったいどんな場所なのか、実際の様子についてまとめました。
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モンゴルゲルの基礎知識
1.ゲルはモンゴル語で「家」を表す
ゲルとは遊牧民が暮らす移動式住居の名称で、モンゴル語で「家」を表します。家といっても一軒家のことはゲルとはいわず、あくまでも移動式住居のことを指しています。遊牧民は無数の家畜を育てるために、季節ごとに草のある場所へと引越します。そのため解体・組み立て・持ち運び可能な家は、彼らにとって必要不可欠というわけです。
それから「ゲル」は日本語でいう「うち」の意味もあるようです。建物を表す「ハウス」ではなく、人が住む空間を表す「ホーム」といえばわかりやすいでしょうか。つまり一軒家やマンションに住んでる人も「うちに帰る」というときは「ゲルに帰る」と表現します。遊牧民族の文化を感じる言葉ですね。
2.ゲルはこうやって組み立てる
まずは木で骨組みを作ります。外壁となるのはフェルトであり、夏は2重、冬は3重に巻きつけます。その上にブレースという白い布をかぶせ、まわりをヒモで固定すれば出来上がりです。外枠は数人いれば1時間ほどで組み立てられ、あとは内部に家具やストーブを設置すれば完成です。
3.ゲルが丸い形をしている理由
ゲルは壁の部分が円柱形で屋根の部分が円錐形であり、全体的に丸く横に広い形をしています。これは強風にも耐えられるよう抵抗の少ない形になっているらしく、遊牧民の知恵と工夫が施されています。柱は地面に打ち込まれていないため、強度をつける場合は外側に杭を打ってヒモで固定します。
ツーリストゲルはこんな場所
草原にあるすべてのゲルが遊牧民の住居というわけではなく、宿泊施設として建てられたゲルも多数あります。旅行で訪れた際にはツーリストゲルに泊まることがほとんどであり、豪華なゲルから質素なゲルまでグレードは様々です。
1.宿泊施設としての設備が備わっている
ゲルそのものは遊牧民の住居と同じである場合が多いですが、ときどきデザインの凝ったおしゃれなゲルもあります。いずれも移動する必要がないため床下はコンクリートで固められ、周囲にレストラン、シャワー、トイレが備わっています。これらを総称してツーリストキャンプと呼んでいます。
2.客室はベッドが置かれたシンプルな空間
ひとつのゲルには3〜5台のベッドが置かれ、そのほかはテーブルとストーブがあるだけです。コンセントは使えますが、キャンプによってはないこともあり、Wi-Fiはほぼないと思っていいでしょう。ただ、ときどきレストランで使えるキャンプもあるようです。
3.シャワーは地下水を引いている
草原には水道管が通ってないので、ほとんどのキャンプでは地下水を使っています。そのためシャワーの温度が低かったり、水の勢いが弱かったり、季節によってはパイプが凍って水が出なかったりと、快適ではない部分もあるかもしれません。これも体験のひとつと思って楽しんでください。
遊牧民のゲルはこんな場所
遊牧民のゲルは民家ですが、宿泊体験ができるツアーも多くあります。彼らはいったいどんな暮らしをしているのか、そして宿泊する際はどのように過ごすのかを見ていきましょう。
1.生活に必要な家具や家電が置かれている
ゲルの中には家具や家電が置かれ、床は地面の上にカーペットを敷いています。草原には電線がありませんが、電力は自家発電によって確保しているため、照明、テレビ、携帯電話などの家電は使えます。ただ冷蔵庫や洗濯機などの大型家電はない場合が多いようです。
2.ゲル内は配置が決まっている
内部の配置は決まっていて、基本的に玄関は南向きに建てられています。したがって玄関を入って正面が北となり、そこは神聖な場所となるため祭壇が設けられています。また北側は家長の場所でもあり、お父さんや大切な訪問客はこの位置に座ります。
玄関を入って右側(東側)は女性の場所で、キッチン用品などもここに置かれます。左側(西側)は男性の場所で、仕事道具や馬具などが置かれます。ただ、近年ではこのような風習もあまり厳格には行われておらず、配置も各家庭によって少し違う場合があるようです。
3.宿泊はゲスト用のゲルが用意される
遊牧民のゲルに宿泊するときは、彼らが生活しているゲルとは別にゲスト用のゲルが用意されます。室内は質素なツーリストゲルと変わりませんが、コンセントは設置されてない場合が多いです。充電が必要なときは遊牧民にお願いして、彼らのゲルで充電させてもらいましょう。
4.水道設備は使えない
ツーリストキャンプと大きく違う点は水道設備がないことです。水をもらって歯を磨いたり顔を洗うことはできますが、シャワーは浴びることができず、水洗トイレもないため小屋で用を足すことになります。ちょっと不便ですが草原での非日常を体験できるため、忘れられない旅の思い出になるのではないでしょうか。
ゲルで過ごすときのマナー
1.敷居は踏んだり座ったりしないこと
入口の敷居を踏んだり座ったりするのはマナー違反です。これは日本も同じであり、古い家屋やお寺の敷居はまたぐのがマナーですね。なぜそのような風習が生まれたかは諸説ありますが、うっかり足を置いたりしないよう気をつけましょう。
ただ、敷居に足を引っかけゲルの中へ転んぶことは、金運・財産をもたらすといわれています。もちろん故意にやってはいけませんが、思わず転んでしまったときは喜ばれるかもしれません。
2.柱の間に立たないこと
ゲルの中央には天窓に向かって2本の柱が立っていますが、この間に入ったり手を伸ばして物を渡すことはマナー違反です。2本の柱は夫婦を象徴しているため、間に入るのは夫婦の間に立ち入るという意味になるそうです。ツーリストゲルではあまり気にする必要はありませんが、遊牧民のゲルを訪問した際は気をつけましょう。