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アムステルダムの隠された驚異の世界!屋根裏教会を探る

取材・写真・文:

トラベルライター

2019年11月12日更新

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写真:トラベルライター

17世紀のオランダでは、宗教改革により公の場でのカトリック活動が禁止されていました。そんな中、アムステルダムの運河沿いにある邸宅の屋根裏に、カトリックの教会が密かに築かれました。博物館として今に残る、その驚異の世界を紹介していきます。

この記事の目次表示

屋根裏教会の博物館について

  • 写真:トラベルライター屋根裏教会のある運河沿い

アムステルダムの運河沿いによく見かけられる邸宅の中の一軒に、17世紀の時代に密かに築かれたカトリックの教会があります。

当時のオランダはスペインとの80年に渡る長い宗教戦争の後、宗派がカトリックからプロテスタントへと移り変わり、少なく残っているカトリック教徒が公の場で活動することが禁じられていました。

  • 写真:トラベルライター屋根裏教会のあるアムステルダムの邸宅(右から2番目)

その事に対して、カトリックでもある裕福な商人のヤン・ハートマン(Jan Hartman)が、1661年に購入した邸宅の中に教会を築き、周囲に住むカトリック教徒の人々が密かにそこに集まったのです。隠れた教会でしたが秘密は次第に知れ渡り、アムステルダム当局もこの事実を知っていましたが、長い宗教改革の時代が過ぎ去ったこともあり目をつぶっていたそうです。

  • 写真:トラベルライター聖ニコラス教会

この邸宅教会は約200年に渡ってアムステルダムの中心となるカトリック教会でしたが、1887年にアムステルダム駅前にカトリックの聖ニコラス教会が完成して以来、この邸宅教会は必要なくなってしまいました。そして、1888年からこの邸宅教会は博物館として一般に公開されたのです。アムステルダムでは国立美術館に次いで、2番目に古いミュージアムとなっています。

以前の博物館は「アムステルクリング」(Amstelkring)という名前でしたが、2015年になるとリニューアルオープンして「Museum Ons 'Lieve Heer op Solder」という名前に変わりました。

それでは、博物館の見学ルートに沿ってそれぞれの部屋と教会を見ていきましょう。

博物館の屋根裏教会を見学

  • 写真:トラベルライター博物館の入り口

屋根裏教会の博物館は2015年にリニューアルオープンして以来、隣の建物にできた新しい入り口から入場します。

  • 写真:トラベルライター博物館の動画

受付を済ませて建物の中へと入っていくと、まず最初に短い動画でこの屋根裏教会の経緯について、簡単に紹介しています。博物館では無料の音声ガイドが利用できます。残念ながら日本語には対応していませんが英語が分かるようでしたら是非使ってみましょう。各部屋毎に詳しい説明を聞くことができます。

  • 写真:トラベルライター博物館の模型

動画を視聴する同じ部屋に白い模型が展示されているので、大まかに建物の構造も把握できます。

地下通路を通って教会のある邸宅の方へと向かうと様々な部屋があり、当時のキッチンやリビングルーム、ベッドや家具、絵画のコレクションなどを見ることができます。

  • 写真:トラベルライターキッチンルーム
  • 写真:トラベルライターキッチンのデルフトタイル
  • 写真:トラベルライターキッチンのデルフトタイル

19世紀のキッチンルームの壁にはデルフトタイルが敷き詰められていて、よく見ると子供たちが遊んでいる様子や動物などが描かれているのが分かります。

  • 写真:トラベルライターママの部屋
  • 写真:トラベルライター汚水槽から発見された陶器

ママの部屋(Momkamer)には数多くの陶器が展示してあります。これらは2013年に博物館の拡張・修復工事中に、当時使用されていた汚水槽の中から発見されました。あまり綺麗な話ではないですが、当時はトイレに生ゴミや調理用品、壊れたり不要な陶器やグラスも捨てていた事が分かったのです。

  • 写真:トラベルライターザエル(レセプションホール)

ザエル(SAEL)と言う名の部屋は、ヤン・ハートマンがゲストを迎える応接室でした。この部屋の中にある絵画や家具、床のタイルなど全てが17世紀の物です。

  • 写真:トラベルライターデイルーム(Daghkamer)

こちらは、ヤン・ハートマンの家族がリビングルームとして使っていた部屋で、当時のベッドも見ることができます。

邸宅の中の隠された教会

  • 写真:トラベルライター屋根裏の教会

下の階から順に様々な部屋を見てから、いよいよ教会の中へと入っていきます。邸宅の中に造られた教会ですが意外と広さもあり、建物の上部3階層を利用して築かれた空間はまさに驚異的!この教会には約150人が収容できるそうです。

  • 写真:トラベルライター屋根裏教会の最上階から

以前、この教会博物館は黄色のような色でしたが、科学的な調査に基づいて、2015年のリニューアルオープンでは当時と同じ紫色に塗り替えられました。

  • 写真:トラベルライター教会の祭壇

祭壇の中央部には、アムステルダム出身のヤコブ・デ・ウィット(Jacob de Wit)によって描かれた『ヨルダンの洗礼』が飾られてあります。

  • 写真:トラベルライターパイプオルガン

祭壇の反対側には、1794年に設置された小さいパイプオルガンがあり、こちらも2010年に復元され、大部分が元の状態に保たれています。

  • 写真:トラベルライター聖母チャペル

カトリックの教会には必ず聖母マリアのチャペルがありますが、この隠れ教会には十分なスペースが無いためにメイン祭壇裏側の角に配置されています。

  • 写真:トラベルライター屋根裏からの眺め

最上階の屋根裏に上がると、窓からアムステルダムの街並みが見られるので、ぜひその風景を眺めてみませんか!写真の左隅に少し見えるのはカトリックの聖ニコラス教会です。

教会を後にして下の階へ進んでいくと、そこにもまたいくつかの部屋があります。

  • 写真:トラベルライター告解部屋

こちらは、カトリックならではの告解部屋です。司祭は左側の部屋に座って信者は右側の部屋にひざまずいて罪を告白していました。

  • 写真:トラベルライター司祭の部屋

隠れた教会がオープンしたのは1662年からで、その頃からこの部屋に教会の司祭が住んでいました。床の大理石は当時からのものです。

  • 写真:トラベルライター17世紀のキッチン

今度は17世紀のキッチンがあります。このキッチンの裏にあるトイレの中からいろんな陶器が発見され、それらが「ママの部屋」に展示されています。

  • 写真:トラベルライター教会博物館のコレクションルーム
  • 写真:トラベルライター金銀のコレクション
  • 写真:トラベルライター教会博物館のコレクション

邸宅教会を後にして最後に通りかかる部屋には、教会の素晴らしいコレクションを見ることができます。

屋根裏教会博物館
入場料:大人 12.5ユーロ(約1,500円)、5〜17歳 6ユーロ(約720円)、4歳以下 無料

※ユーロから日本円への換算は、1ユーロ=約120円で計算しています。

博物館のカフェ

  • 写真:トラベルライター博物館のカフェ
  • 写真:トラベルライター博物館カフェからの眺め

博物館のエントランスがある建物の2階にはモダンなカフェがあり、休憩をとりながら運河沿いの風景を眺めるのもいいですよ。カフェにも数点の陶器が展示してあるのでお見逃しなく!

  • 写真:トラベルライターカフェに展示してある陶器

最後に

この博物館は単なる隠れ教会であったと言うよりも、中世におけるオランダの宗教の歴史を象徴するかのような場所でもあります。アムステルダムには大きな教会がいくつかありますが、このような秘められた教会を覗いてみるのも興味深いと思います。

屋根裏教会博物館
オランダ / 博物館・美術館 / 博物館
住所:Oudezijds Voorburgwal 38, 1012 GD Amsterdam地図で見る
Web:https://www.opsolder.nl/en

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