アブハジア

【アブハジア】未承認国家第三弾!VISA取得方法と首都スフミ観光

取材・写真・文:

東京在住
訪問エリア:186ヶ国

2023年6月27日更新

4,742view

お気に入り

写真:toshel

黒海に面した北コーカサスに位置するアブハジア。国際的にはジョージアの一部州とされていますが、一方的に独立を宣言し許可証なしに出入りすることはできません。今回は、ジョージアからアブハジアへの入境方法と、首都スフミの様子をご紹介します。

この記事の目次表示

世界の未承認国家

未承認国家といわれる地域は、一つの国としての機能を満たして独立を宣言しているものの、世界的に国家として認められていない国です。現在、世界には13の未承認国家があるとされています。

未承認国家アブハジア

今回ご紹介する「アブハジア」は、国際的にジョージア(旧称グルジア)の一部州と見なされており、日本政府も「ジョージア領土の一体性を尊重する」との立場から、アブハジアをジョージアの一部地域とし、一つの国家としては認識していません。アブハジアを独立国と認めているのは、ロシアやベネズエラなど数カ国のみです。

  • 写真:toshel

アブハジアは古来よりアブハズ人が住んでおり、ジョージアと同じく、時代の大国に翻弄されてきました。1991年のソビエト連邦崩壊時、ジョージア(グルジア)に属する自治共和国だったアブハジア州は、宗教・言語など独自のアイデンティティを持ったアブハズ人が、ジョージアからの独立を求めて民族紛争に発展します(アブハジア紛争)。

  • 写真:toshel

一旦は沈下したものの、数年後、同じくジョージアに属する「南オセチア」で起こった独立戦争を機に、アブハジアでも火種が再燃しました。そして、実際には僅か20%にも満たない少数派だったアブハズ人がロシアの協力を得て再び紛争を起こし、多数派だったグルジア人を追い払うカタチとなりました。郷里を追われたグルジア人は、今もなお、ジョージアに退避し国内避難民となっています。

アブハジアはどこにある?

アブハジアは、コーカサスの最西端、黒海北岸に面しています。

首都は「スフミ」という黒海沿岸の街です。全体的に山がちな環境のため、人の住む地域もいくつかの峡谷や黒海沿岸に限られています。

ジョージアからアブハジアへの入境とVISA取得方法

上述したように、アブハジアは国際的にはジョージアの一部の州なので在外大使館はなく、アブハジアのVISAをアブハジアの首都スフミで取得する必要があります。日本のパスポートの場合、アブハジアに隣接するロシアからの入境はできず、必ずジョージア側からの入境となります。

まずは事前に入境許可証を取る

入境許可証はジョージア政府領事館の下記URLから申し込みができます。

アブハジア入境許可申し込み

5日以内に入境許可のメールが送られてきますので、添付ファイルを印刷して持っていきます。

ジョージア政府領事館の中の人とチャット(余談)

筆者は、この入境許可証を取得するために、ジョージア政府の上記URLへアクセスし、そこに記載されていたチャットでVISA取得に関するいくつかの質問をしました。すぐに返信がきてスムーズに応対してもらったあと、「アブハジアはとても美しいところです。楽しんでください。」とメッセージをもらったため、中の人はてっきりアブハジアに住んでいるものと思い、社交辞令もあって「アブハジアで会えることを楽しみにしています。」と送りました。

すると、中の人は「私はアブハジアで生まれ育ったが、アブハジアには住んでいない。」「1992年のアブハジア戦争でジョージアへ来た。」「もう何十年、一度も帰れていない。」「故郷へ帰りたい。」など、質問を終えてからその数倍の時間、チャットラリーが続きました。思わぬところで、故郷を追われた人の悲痛な本音を聞くことができました。ジョージアに住むアブハジアからの避難民は、現在も26万人にのぼります。

ジョージア側ボーダー・コントロール

ジョージアからの入境ポイントは、ズグディディにある一か所のみです。

ジョージアからアブハジアへ行くには、ズグディディの街中から車でおよそ20分のボーダー・コントロールを目指します。下の写真の左側にある白い建物で、ここではパスポートとアブハジアの入境許可証を提示するのみです。

  • 写真:toshel
国境検問所(ズグディディ)
ジョージア / その他スポット
住所:42.576341, 41.863378地図で見る

アブハジア側ボーダー・コントロール

橋を渡って一本道をしばらく歩くと、アブハジア側のボーダー・コントロールが見えてきます。

  • 写真:toshel

こちらで、パスポートと印刷したアブハジアの入境許可証を渡します。ロシア警察の管理下にあり、パスポートの承認確認がアナログのため、入境許可が下りるまで2~5時間かかります。レストランや自販機など飲食に関するものは何もなく、簡易的な椅子がいくつか置かれているだけですので、飲食物、本などを持って行かれると良いと思います。

許可がおりると、パスポートと入境許可証を返却してもらえます。

アブハジア側ボーダー・コントロールから首都スフミへ

狭い通路を渡ってアブハジア側へ抜けると、ちょっとした広場になっていますので、乗合バンのマルシュートカ(バス)かタクシーを探します。マルシュートカは安い(日本円で300円程度)ですが、スフミまで直行するものはなかなかありません。近くの街へ行き、さらに乗り換えが必要ですので、タクシーで直行された方が早いです。タクシーは交渉次第で、2,000~3,000ルーブル(日本円で3,000円~4,000円)です。

尚、アブハジアはジョージアの通貨「ラリ」ではなく「ロシア・ルーブル」を使います。州境には両替所はございませんので、事前に両替して行くことをお勧めします。

マルシュートカでの余談

タクシーが居なかったため、筆者はスフミまでの移動にマルシュートカ(左のバン)を使いました。

  • 写真:toshel

その際に、隣に座った男性がアブハジア難民で、ヒソヒソと話をしました。一般的にジョージア人はアブハジアへ入境できませんが、戦争時に足が悪くジョージアへ逃げられなかった母親が特別措置でアブハジアに住んでおり、息子であるその男性は1か月に一度、様子を見に行く許可をもらえているとのことでした。彼曰く、「アブハジア人というよりも、ロシア人がヒドイ。」ということを話しており、上述した中の人と同じく、未だに悔恨残るアブハジア難民の感情を知ることができました。

スフミへ着いたらまずは外務省

こちらが、首都スフミにある外務省の建物です。なかなか美しいですね。首都のスフミへ着いたら、何は置いてもまずはここでアブハジアのVISAを取得します。中へ入り、VISAを取得しに来たことを告げると執務室に案内されます。

  • 写真:toshel

最長10日間滞在できるVISA(上記申請の際に指定)を即日発行してもらえます。ここで300ルーブル(およそ450円)か10US$(およそ1,040円)を支払います。このVISAがないと、アブハジアから出境できませんので、まずはVISAをGETしましょう。また、週末土日と祭日は外務省がお休みですので、超短期滞在の場合は日程調整が必要です。

  • 写真:toshel
※ジョージア政府のHPに記載の住所は古く、外務省は移転していますので、下記の住所で調べてください。
33 Sakharov Street
アブハジア外務省領事館
アブハジア / その他スポット
住所:33 Sakharov Street, スフミ地図で見る

次のページを読む

アブハジアの旅行予約はこちら


アブハジアのホテルを探す

アブハジアの航空券を探す

この記事で紹介されたスポットの地図

関連するキーワード

※記事内容については、ご自身の責任のもと安全性・有用性を考慮してご利用いただくようお願い致します。

あなたにオススメの記事

この記事を書いたトラベルライター

地球旅~現在186ヵ国~
行ったことのない国を中心にひとり旅しています。他国の歴史、文化、宗教、遺跡、そしてそこに住む人々の考え方に興味があります。

車の運転が好きなので、海外ではドライブ旅を楽しんでます。普段は会社員です。

【ホンジュラス】世界屈指の犯罪都市テグシガルパ

世界の治安が悪い国ランキングなどを見ると、毎年必ず上位になってしまうホンジュラス。しかし、手つかずの美しい自然が多く、世界遺産に登録されたマヤ文明のコパン遺跡を...


【レバノン】ベイルート・ビブロス・バールベックの見どころ

遠い昔、世界の中心が地中海にあった時代、レバノンは東西貿易の交差点となる重要な位置にあり、繁栄の極みにありました。古くから数多くの王様や将軍が、この土地を挙って...


カリブの島はどこがいい?陽気レゲエでちょっぴり危険な「バルバドス」どこまでも静かな「アンティグア」

カリブ海には、大小様々な島がおよそ700あります。そのほとんどは欧米各国の領土で、独立国はわずか13カ国のみ。今回は、その中より対極にある2つの小さな島国をご紹...

【サウジアラビア】ついに観光ビザ解禁!閉ざされていた王国の珍しい文化と各都市の見どころ

観光での入国が困難だったサウジアラビアが、2019年9月27日に突然、ツーリストビザの発給開始を発表しました。今回は、サウジアラビアに古くからある慣習と文化、そ...

【ベネズエラ】世界の危険都市上位?首都カラカス

世界屈指の産油国にしてハイパーインフレーションに陥った南米の国ベネズエラ。かつて、スペイン植民地から独立へと導いた英雄「シモン・ボリバル」の生まれ育った街でもあ...

トラベルライターインタビュー Vol.3 Emmyさん

【トラベルライターインタビューVol.3】一人旅を応援する記事を多数執筆!Emmyさんならではの人気記事執筆のコツやその原動力に迫ります